『THE MODEL(ザ・モデル)』という言葉を耳にしたことはありますか。
新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、これまでの営業のやり方が通用しなくなり、オンライン上でのやりとりが主流になりつつあります。そこで今改めて注目されている営業手法が、見込み顧客にオンラインで営業を行えるインサイドセールス、そして『THE MODEL』です。
より成果のあがるインサイドセールス方法や営業手法として注目されている『THE MODEL』について詳しくご紹介します。
インサイドセールスとは
インサイドセールスとは、メールや電話、チャット、Web会議ツールなどを用いて見込み顧客に対する営業をオンラインで完結させることを指します。
元々はインサイド(内なる)+セールス(営業)という成り立ちの通り、内勤の人が行う営業を意味する言葉でしたが、最近では外勤の人がリモートで営業を行うことも含めてインサイドセールスと呼びます。
場所を選ばずにリモートで働くこともできるため、以前までは介護や育児などで離職を余儀なくされていた人も勤務が可能です。
また、地方在住の人でも勤務しやすいため、採用母集団を拡大して優秀な人材を採用しやすくなるといったメリットがあります。インサイドセールスであれば、ターゲットを近隣にしぼる必要がなく、全国各地を営業対象とすることができるのも大きなメリットでしょう。
インサイドセールスについてもっと詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。
インサイドセールスとは?基礎知識や導入メリット、組織化のポイントまとめ
THE MODELとは
ではマーケティングや営業の場で聞くことも多い『THE MODEL』とはどのようなものなのでしょうか。
インサイドセールスにおける必読本
『THE MODEL』とは、現代ビジネスの教科書とも呼ばれる本で、インサイドセールスの必読本です。元々はSalesforceが提唱したビジネススタイルだったのですが、さらに福田康隆氏が出版した『THE MODEL』(2019年1月刊行)でその内容が紹介され、日本中で話題になりました。現在では多くの企業が『THE MODEL』で紹介されたビジネススタイルを現場で取り入れています。
THE MODEL型組織とは
THE MODEL型組織とは、営業のプロセスを「マーケティング」、「インサイドセールス」、「フィールドセールス」、「カスタマーサクセス」の4つのプロセスにわけて考える営業手法を取り入れている組織を指します。
THE MODEL型組織で特に重視されているのは下記の2点です。
- 営業のプロセスを細分化し、各プロセスの状況をスコアにすることで、状況を可視化する
- 各プロセスを担当する部門間でしっかりと連携することで、カスタマーサクセスを目指す
『THE MODEL』で特に重要とされるのがカスタマーサクセスです。カスタマーサクセスを重視して追求していくと、顧客が離れてしまうことを防ぎ、顧客に対して別の商品やセット購入を促すこと(クロスセル)ができ、購入を検討している商品よりも高い価格帯のものをすすめるアップセルの機会が増えます。
アップセル・クロスセルについてもっと詳しく知りたい方はこちら
また、たいていは営業の業務をスコア化する際に、売上以外にも受注数や単価などのスコアは追えていることが多いと思われます。しかし一方で、案件数をしっかりと確保するための準備段階で、必要なリード数やそこからの案件数については追えていない場合もあります。
『THE MODEL』においては、4つに分けた営業プロセスのスコアを明らかにし、それぞれのスコアが良くなれば最終的に売り上げが向上すると考えられています。そのため、『THE MODEL』では各プロセスの中の「母数」「成功率」「ゴール」の3つをスコア化することで、課題や目標を明確にします。
では各プロセスの「母数」や「成功率」、「ゴール」とはどのようなものなのでしょうか。以下、詳しくご紹介していきます。
◆第一段階 マーケティング:潜在顧客の獲得
母数 | サイトやイベントへの訪問者数 |
成功率 | 獲得率 |
ゴール | リード数 |
マーケティングの母数は、Webサイトへの問い合わせから電話での問い合わせ、イベントの訪問者など、製品やサービスによって最初の入口もさまざまでしょう。
その入口によって、感度やその後のスコアが違ってくることもあるかもしれません。部門それぞれがスコアを管理し、どの問い合わせが一番感度が高いのか、しっかりと把握することが大切です。
◆第二段階 インサイドセールス:リードの育成や案件発掘
母数 | リード数 |
成功率 | 案件化した割合 |
ゴール | 案件数 |
マーケティングで獲得した連絡先に電話営業やWeb会議システム、チャット等を用いて商談につなげるのがインサイドセールスの役割です。インサイドセールスでアタックする顧客には、製品やサービスに興味があり、すぐにでも契約したい顧客もいれば、今すぐ契約することは考えていない顧客もいます。
インサイドセールスには、そのような今すぐには興味がない顧客に対して、自社製品やサービスのメリットを顧客のニーズに応じて提案し続けていくことによって商談化できるところまで育てる、大切な役割があります。
インサイドセールスが顧客の確度を見極めてからフィールドセールスに渡すことによって、フィールドセールスは効率的に仕事を行うことができます。その結果、受注率や受注数の向上につながっていきます。『THE MODEL』の中でもインサイドセールスはとても重要な役割を担っているといえるのです。
◆第三段階 フィールドセールス:商談管理や受注
母数 | 案件数 |
成功率 | 受注した割合 |
ゴール | 受注した数 |
このプロセスでは、営業が扱う中心となるスコアを見ていきます。実際に受注までもっていくのはフィールドセールスの営業担当ですから、フィールドセールスは非常に責任の大きい部門といえるでしょう。
◆第四段階 カスタマーサクセス:成約後に活用するための支援や契約継続
母数 | 受注した数 |
成功率 | 契約更新をした率 |
ゴール | 契約更新をした数 |
このプロセスでは成約後の顧客の顧客満足度を重視します。『THE MODEL』ではこのカスタマーサクセスがとても重要であると考えられており、成約後の顧客がいかに離れずに、定着しているかを追っていきます。
成約をして終わりではなく、その後も継続して、コストパフォーマンスに優れた新しい製品の案内や、顧客のニーズをしっかりと把握したきめ細やかなサービスを提供し続けるのがとても重要です。
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THE MODEL型組織のメリット
では「THE MODEL型組織」のメリットとしてどのようなものがあるのでしょうか。
- 営業プロセスの弱点克服
- 各部署のスキルアップ
- 社内連携の強化
ここではこの3つの具体的なメリットについて、説明していきます。
営業プロセスの弱点克服
THE MODEL型組織のメリットの1つめは、各プロセスをスコア化して明確にすることで、各営業プロセスの弱点が明らかになることです。その明確になった弱点を克服することで、より収益をあげることが可能です。
たとえばインサイドセールスの母数であるリードが足らず、その後のスコアに影響があるのであれば、イベントの頻度を増やしたり、告知の仕方を工夫してみたりといった対応が必要でしょう。
各部署のスキルアップ
THE MODEL型組織2つめのメリットは、4つのプロセスを別の人や別の部署が担当することによって、各部署のスキルアップが見込めることです。
1人で多くのプロセスや業務を請け負うと効率が落ちます。一方、業務の幅を狭めると、より専門性の高い仕事ができます。また、1つのプロセスの中でもさらに細分化し、メンバーのバックグラウンドやスキルを考えた上で担当を振り分けるのも良いでしょう。
たとえば、インサイドセールスの中でもインバウンドの問い合わせを対応しているチームを例にご紹介します。このチームには8名が在籍しており、うち2名がリーダーです。
インサイドセールスではマーケティングが獲得したリードに対し、そのソースによってアポ率、有効となる商談率、受注率がかわってきます。その中でも最も確度が高い「資料請求」は、一番商談につなげられるエースが担当します。
またアポ獲得自体は難しいけれども有効商談率の高い優良な見込み客であるMQL(Marketing Qualified Lead)は、営業経験がある人の担当です。
MQLは潜在的ニーズを持っていることが多いのですが、一度商談して失敗しているため、前回の流れやお客様のニーズを汲んで会話をする必要があります。これに対応できる人を担当とします。
このように業務をさらに細分化し、適切な人材を配置することで、より専門性を高めることができ、各プロセスのスコアを向上させることができるでしょう。
社内連携の強化
THE MODEL型組織3つめのメリットは社内連携の強化です。
THE MODEL型組織では、1つの部署では完結せず4つのプロセスが首尾一貫することが求められます。そのため、THE MODEL型組織を取り入れることで、自然と社内連携が強化されるでしょう。皆で一丸となってカスタマーサクセスのために動くことによって、自然と絆が生まれて連携しながら効率よく仕事をすることができるのです。
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THE MODEL型組織導入における課題
ではTHE MODEL型組織を導入する際に考えられる課題として、どのようなものがあるのでしょうか。
目標の設定
まずTHE MODEL型組織を導入する際には必ず目標を設定しましょう。顧客情報を取得し、インサイドセールスがその顧客を育てることで商談化し、商談を進めてクローズに至る、このプロセスごとにスコアを管理する必要があります。
多くの企業では入口の集客数と最終的な売り上げ目標は設定しています。しかし、その間のプロセスをスコアにしていない企業も少なくありません。そのプロセスにもしっかりと目標を設定しなければ、目標未達成の場合にどの部分に原因があるのかわからなくなってしまいます。
プロセスを細分化し、スコア化して、しっかりと振り返りをすることが定着すれば、どの部分で顧客の低減が起こっているのか明確になり、その後の対応も容易になるでしょう。
ルールの明確化
THE MODEL型組織を成功させるためにはルールも明確にしておきましょう。たとえばインサイドセールスが担当しているリードをいつフィールドセールスにパスするのか、その基準を明確にしておくことが重要です。どのような状況でどう対処するかを事前に決めてルール化することは、無駄を省いて利益を最大化することにつながります。
また、運用しながら修正や調整をしておくことで、最適なルールを作り上げることができます。この最適なルールによって、自社にあった営業スタイルが確立していくのです。
部署間の連携体制の構築
THE MODEL型組織の場合にはプロセスごとに担当者が異なります。そのため、部署間での連携体制の構築をしっかりしなければ、THE MODEL型組織は成功しません。
CRM・MAなどのツールを活用し、リアルタイムで顧客情報を一本に繋げるような仕組みを構築しましょう。また、条件に応じて通知をする機能があるツールを導入すると、フォロー漏れを防ぐことができて安心です。
デジタルツールの活用
インサイドセールスを利用する場合には、デジタルツールを活用するのもおすすめです。例えば、SalesforceとbellFaceを連携させて使い、さらにクラウドサインなどの電子契約サービスを使えば、(もちろん業界や商材にもよりますが)アポ獲得~契約書締結までを完結させることができます。
商談記録から顧客管理まで一元管理できるため、営業進捗の数値管理も簡単に行うことができます。THE MODEL型組織における課題の目標設定や、部署間の連携体制の構築についてもツール内で解決することができるのです。
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Q&A
より成果のあがるインサイドセールス方法や営業手法として注目されている『THE MODEL』型の組織についてご紹介しました。最後に、Q&A形式でポイントを振り返ります。
Q.『THE MODEL』とは?
元々はSalesforceが提唱したビジネススタイルで、福田康隆氏が出版した同名のインサイドセールスの必読本です。
Q.『THE MODEL型組織』とは?
営業のプロセスを「マーケティング」、「インサイドセールス」、「フィールドセールス」、「カスタマーサクセス」の4つに段階を分けて考える営業手法を取り入れた組織のことです。
『THE MODEL型組織』についてもっと詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。
『THE MODEL』のマルケト福田氏が語るビジネスのベストプラクティス
Q.THE MODEL型組織のメリットは?
- 営業プロセスの弱点克服
- 各部署のスキルアップ
- 社内連携の強化
Q.THE MODEL型組織を導入する際のポイントは?
- 目標の設定
- ルールの明確化
- 部署間の連携体制の構築
- デジタルツールの活用
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