営業職の業務効率化に効果的なインサイドセールスですが、どの部分で業務効率化できるのか、具体的な根拠を知りたい方も少なくないかもしれません。インサイドセールスを利用した5つの業務効率化法を、事例や注意点とともにご紹介します。
また、インサイドセールスは普及してきましたが決してゴールではなく、スタートラインです。今後も営業を取りまく環境は変化していくと予想されます。これからの営業についてまとめた資料を無料で配布していますので、今回の内容とあわせて是非参考にしてみてください。
そもそもインサイドセールスとは
インサイドセールスとは「電話・メール・Web会議ツールなどを使って行う営業方法」ですが、すでに浸透しているテレアポと混同されやすい言葉です。テレアポは、潜在顧客の掘り起こしやアポイントの取得をメインにおこないます。
一方、インサイドセールスは、顧客開拓から見込み客の育成(リードナーチャリング)、さらに契約締結(クロージング)までといった、営業が担うすべての段階を非訪問でおこないます。
現在日本では、アポイントの取得からリードナーチャリングまでをインサイドセールスで行い、受注確度が高まったところでフィールドセールスに引き渡すという、2つの営業方法を組み合わせて取り入れる会社が増えています。
インサイドセールスそのものについてもっと詳しく知りたい方はこちら
インサイドセールスの業務効率化の事例
ここでは、インサイドセールスのどの点において業務効率化ができるのかについて、試算例を交えながらご説明していきます。ぜひ現状と照らし合わせながら、どれくらいの業務効率化が見込めるか、参考にしていただければと思います。
また実際にインサイドセールスを取り入れて業務効率化につながった事例も、あわせてご紹介します。
リードタイムと工数の削減
インサイドセールスでは、スピード感のある対応と柔軟な提案をその場で行うことが可能です。それにより受注までにかかる時間(リードタイム)を短くしたり、少ない工数で受注につなげるなど、商談自体を業務効率化できます。
たとえば、顧客の要望を反映した提案を行うためにオフィスでの作業が欠かせないような従来のケースの営業で、1件の受注獲得までに最低3回、商談するとします。その商談の間隔が1週間空くと仮定した場合、受注が決まるのは約1カ月後になるでしょう。
その点、オフィスから直接商談できるインサイドセールスでは、すぐに要望を反映した提案ができるので、工数は3分の1に減らせますし、結果的に1カ月かかっていたリードタイムも、最短1日まで縮まる可能性があります。
実際に、人材サービスの「ディップ株式会社」では、顧客の求人広告を掲載するまでに何度もやりとりを重ねなくてはなりませんでした。それをインサイドセールスに切り替える事で、複数回のやりとりが1回で済み、工数を減らす事に成功しました。
また、アポイントの電話からそのまま商談につなげられる事ため、リードタイムも短縮し、売上アップに繋がっています。
移動時間の削減
従来の営業でおこなっていた商談をインサイドセールスに切り替える事で移動が不要になり、空いた時間を別の業務に使う事ができるので、スケジュール管理の面からも業務効率化を図れます。
たった10分の商談でも、移動時間を含めると数時間かかってしまう事も多い従来の営業と違い、インサイドセールスであれば、分単位で商談を組む事が可能です。
たとえば、1件当たりの商談時間が平均して30分・移動が1時間だった場合、移動が不要になるだけで、単純に3倍の商談をこなす事が可能です。10人のセールスパーソンで10件だった商談も30件に増やせます。
不動産をあつかう「ラクサスマネジメント株式会社」では、全国各地に顧客を抱えている事もあり、訪問にかかる移動時間が長く、対応件数を増やせない課題を抱えていました。
しかしインサイドセールスに切り替えたところ、月あたりの商談件数を以前の6倍にまで増やす事ができました。また商談回数が増やせるようになった事で、アフターフォローなど顧客との信頼関係構築にも力を入れています。
商談資料の作り込み時間の増加
インサイドセールスでは、商談の準備時間を十分に確保できるため、商談の質を底上げし、効率よく進めて受注につなげるといった、質の面からの業務効率化が可能です。
成約率20%のビジネスパーソンが成約率50%のビジネスパーソンと同じ受注件数を獲得するには、母数である商談件数を増やすか、商談の質を高めて成約率を上げるかのどちらかです。
月に10件の受注を獲得しようとした場合、成約率50%の人であれば20件ほどの商談をおこなえば十分です。一方、成約率20%の人は50件の商談をこなさなくてはなりません。長期的に見ると、商談の質を高めて成約率を上げるほうが効率的ではないでしょうか。
月2%だった受注率が13%に急上昇し、月間の受注件数も15倍にアップした「株式会社ベーシック」では、会社概要からクロージングまでの商談資料を徹底して作り込みました。また、合計して100ページにもなる資料ですが、担当者が都度資料のアップデートおこない、商談の質を保つ工夫をする事で業務効率化を実現しています。
残業時間の削減
従来の営業では移動時間を考慮しなくてはならなかったので、その他の業務は、商談の合間か残業時間でこなしていた方も多いのではないでしょうか。
インサイドセールスでは、10分の営業電話がそのまま受注につながる事もあります。このため、業務の合間に営業をおこなうこともできます。その日のタスクにあわせて時間を使う事ができるので、従来の営業に比べて、時間的な業務効率化を図る事ができるのです。
たとえば、毎日2時間の残業をおこなっている従業員が、それぞれ移動に40分かかる3件の商談をインサイドセールスに切り替えたとします。移動にかかっていた2時間分を他の業務に使えるようになるため、勤務時間内に業務を消化できるようになり、残業時間の削減につながります。
注文された商品を配達することが主な事業である「生活協同組合コープ自然派奈良」では、オフィススタッフだけでなく、配達スタッフも配達の終わった夕方以降に新規加入の営業をおこなっていました。
この営業活動をインサイドセールスに切り替えたことで、配達の合間の時間を使って営業をおこなう事が可能になり、残業対策につながったという結果が出ています。
さらにインサイドセールスで成約しやすくなったことで、オフィススタッフにフレックス制を取り入れることができました。どのタイミングで問い合わせが来てもすぐに対応することができるようになったことで、加入率の向上につながっています。
商談の当日キャンセルの防止
インサイドセールスでは、当日キャンセルを防止する事で業務効率化を図れるといった効果もあります。
- 電話の反応である程度相手の確度がわかる
- 顧客の確度が高い場合、そのまま商談に入れる
- 相手の都合にあわせて細かく予定変更できる
これらの理由から、確度の高い相手と優先的に商談し、急に相手の都合が悪くなったとしても、インサイドセールスは分単位での対応ができるため、「30分後なら」といったように相手が商談可能になったタイミングで確実に商談をおこなえます。
10件の商談の内、2割が確度の高い顧客、5割が確度の低い顧客、残りの3割がタイミング次第で確度の高い顧客に変化する可能性がある場合、フィールドセールスでそれを見極めるのは至難の業です。
インサイドセールスでこの3割の顧客のタイミングを適切にとらえる事で、20%の商談率を50%にまで引き上げ可能です。
またそれ以外にも、当日のキャンセルを防ぐコツは、つながりやすいWeb通話会議ツールを利用したり、オンラインへの案内や流れを工夫したりといった方法も挙げられます。
生活習慣改善のアドバイスをおこなっている「フィッツプラス株式会社」では、特定保健指導の初回面談にインサイドセールスを取り入れていますが、これらの工夫によって当日のキャンセルを減らし、面談キャンセルによる取りこぼしを最小限に抑えられるようになりました。
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業務効率化を図る際の注意点
ここまで業務効率化の具体例をご紹介しましたが、インサイドセールスでの業務効率化には、注意しなければならない点もいくつかあります。
見込み客の優先順位決め
アポイントの電話からそのまま商談に移る事ができるインサイドセールスですが、業務効率化につなげるには、見込み客の優先度に合わせてアプローチを変えていくことが重要です。
確度の高まっていない顧客に対しては、メールなどで商談機会の損失を防ぎながら、商談のタイミングを見極めます。優先順位を決める事で確度が高い顧客に対してしっかりと時間をかける事ができ、業務効率化と同時に、受注率のアップが期待できるでしょう。
顧客情報の部署間共有
顧客の購買意欲がどの段階にあるのかを社内で共有できていないと、特にインサイドセールスとフィールドセールスで顧客の引き渡しをおこなう場合には、顧客との信頼関係にも影響してしまいます。
顧客が今どの程度の確度を持っているのか、引き渡しまでにどのような流れで商談がおこなわれていたのか、といった情報を共有することで、引き渡し後も業務効率化を妨げずに、信頼関係を保ったまま商談が進められます。
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リードナーチャリングの時機
購入意欲の低い見込み客に対しメールや電話などでコミュニケーションを取り、購買意欲を高めていくわけですが、リードナーチャリングの時機を適切に判断する事も、インサイドセールスでの業務効率化には欠かせない要素です。
顧客が求める商品のビジョンや購買行動のプロセスが把握できていないうちから、リードナーチャリングをおこなっても、顧客にとっては迷惑メールがひとつ増えただけに過ぎません。
リードナーチャリングの時機を見極めるには、市場調査をおこなう必要がありますが、現在ではそのようなマーケティング業務を自動でおこなうMAツール(マーケティングオートメーションツール)を活用するケースも多いようです。
顧客のセグメント化
セグメント化とは、つまり顧客の分類化を指します。セグメント化の基準は年齢や性別、職業などを含めるとさまざまですが、インサイドセールスでの業務効率化を目指すには、顧客の興味の対象で分類し、さらに購買意欲の確度によっても分類します。
見込み客の確度を段階別に分類し確度が上がるごとに段階を上げていく事で、顧客が今どの段階にいるのかがわかりますし、セールスのタイミングが可視化されます。
顧客との接触履歴の記録・管理
顧客に関するデータがバラバラに管理されていると、業務効率化を妨げる原因になります。これまでに挙げた4つの注意点とあわせて顧客との接触履歴を記録・管理しておけば、顧客の引き渡し時にも便利ですし、顧客情報の共有もラクにおこなえます。
またデータの記録・管理を自動化できるツールを利用する事で、データの可視化をおこない、より効果的にインサイドセールスの業務効率化が進められるでしょう。
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Q&A
特に管理職のかた向けに、インサイドセールスを利用した営業職の業務効率化法をご紹介しました。最後に、ポイントをQ&A形式で振り返ります。
Q.インサイドセールスとは何ですか?
インサイドセールスとは、顧客開拓からアポイント取得、契約締結といった、営業活動におけるすべての工程を非訪問でおこなう内勤型営業を指します。もっと詳しく知りたい方は、こちらにまとめがあります。
Q.インサイドセールスでは業務のどこを削減できますか?
移動時間、営業の工数、リードタイムといった、従来の営業では削減の難しい工程のほとんどを削減できます。また、業務効率化の実現により営業担当者の働き方を改善し、残業時間の削減にも貢献できます。
Q.インサイドセールスでは何を増やす事ができますか?
商談件数の増加はもちろん、商談の準備時間が増えることにより営業スタッフの質を底上げできます。営業の質が上がれば成約率や受注件数も増加します。
Q.インサイドセールスで業務効率化を図る際に注意すべきことは?
購買プロセスや求める情報、購買確度といった顧客に関するあらゆるデータを可視化し、把握・共有しましょう。顧客が興味を持った商品を、ほしいと思ったタイミングで提供しやすくなり、受注までの業務効率化を実現できます。