皆様はMA(マーケティングオートメーション)をご存知でしょうか?MAとは、企業のマーケティング活動において、毎日やらなければならない業務や複雑な作業を効率化すること、あるいは効率化するツールのことをいいます。
今回は、企業がMA(マーケティングオートメーション)を活用するメリット、主なMAツールについてご紹介します。
MAとは
MAとは、人の手で作業を行うと途方もない時間がかかってしまう作業や、毎日行う複雑な作業を自動化することで、企業のマーケティング活動を効率化すること、ツールのことをいいます。また、営業アプローチリストの作成、見込み客をデータベース上で管理するなど、作業の自動化以外にも活用できる機能がたくさんあります。
BtoB企業でも、MAはマーケティングに活用されることが現在増えてきています。
マーケティングとは
MAについて詳しく解説する前に、まずはマーケティングについて見ていきます。
商品の販売を行い利益を増やすためには、多くの顧客に商品を知ってもらい、購買行動を起こしてもらう必要があり、そのような企業活動を総じてマーケティングといいます。マーケティングでは以下のプロセスが必要となってきます。
※ここでは「リード」あるいは「見込み客」という言葉を、企業や個人の商品に興味を示すものの、購入の決断ができていない潜在的な顧客を意味しています。
- 見込み客を集める⇒Lead Generation(リードジェネレーション)
- 見込み客を育てる⇒Lead Nurturing(リードナーチャリング)
- 見込み客を選別する⇒Lead Qualification(リードクオリフィケーション)
マーケティングでは、上記のプロセスに沿って購入してくれる見込みがある顧客に対し、正しい対応を的確に行わなければなりません。これを人が行うと、リソースが足りなかったり、工数が足りなかったりという問題が発生してしまうことが多くなっています。
マーケティングのプロセスを自動化できる
MAは、デジタルマーケティング領域で活用することのできるツールであり、マーケティングのプロセスを自動化することができます。そうすることで、マーケティング担当が構築する「顧客開拓の仕組み」を効率的に補助することができるようになります。
ある特定のターゲットに向け、事前に設定したシナリオに従って、ユーザーを分類・評価し、条件に応じた方針を自動で実行していきます。MAツールを活用することにより、相手のアクションに応じた適切な対応が、正確かつスピーディーに行うことができ、作業の自動化と顧客成約率の大幅な上昇につながります。
MAの主な機能
MAの概要がわかったところで、前述でご紹介した「マーケティングのプロセス」に沿って、実際にMAが行なうことができる一般的な機能についてご紹介します。ツールによって実装していない機能がある可能性もありますので、詳細についてはご検討されているMAツールのベンダーにお問い合わせください。
見込み客を集める (リードジェネレーション)機能
リードジェネレーションとは、見込み客の情報を集める活動です。イベントへの参加予約、資料請求などをユーザーに促し、基本情報を入力してもらえるよう誘導しなければなりません。
そのために、アンケートページなど、フォーム投稿ページを作成したり、広告をクリックしてもらった後のランディングページを作成したりします。MAツールを使えばそれらの作業を効率よく行うことができます。具体的には以下のような機能が提供されます。
フォーム投稿ページの作成
顧客がWeb上で必要事項の記入を行うページを生成します。
ライティングページの作成
ライティングページの作成や登録フォームの設定を行います。
SEO分析
ユーザーに価値のあるコンテンツを提供し、検索エンジンに内容が評価されるようWebページの分析をします。
SNSユーザー連携
SNSのユーザー連携機能をMAに取り込むことが、ユーザー管理、情報収集ができます。
見込み客を育てる (リードナーチャリング)機能
リードジェネレーションの次に、獲得した顧客に対して商品への購買意欲を高めることが必要です。収集した見込み客に対し、メルマガや広告を配信し、アプリを活用した積極的な情報発信を行います。
自動メール配信
顧客が決められた行動をとった際に、事前に設定しておいたメールを配信します。
Push通知
ユーザーがアプリを起動していなくても通知を送ることができます。
Web接客
Webサイトを訪問した顧客に対して、購買意欲を高めて貰う為に、リアルタイムコミュニケーションを行うことができます。
広告配信ツールとの連携
取得したオフラインデータやWebアクセスログにより、作成されたターゲットのCookie 情婦を広告配信ツールにエクスポートする事ができます。狙った顧客だけに見せたい広告を配信する事ができるのでコンバージョン率が上がる可能性が高くなります。
これらの機能を使い、商品に興味がある顧客など、ターゲットの行動に伴った対応を自動で行い、顧客の購買意欲を高めることができます。
見込み客を選別する(リードクオリフィケーション)機能
リードクオリフィケーションの段階では、リードナーチャリングで興味関心を上げることができた大量の見込み客の中から、優先的にアプローチする必要がある顧客を選別します。MAツールには、リードスコアリング機能があり、集めたユーザー情報や顧客の行動を分析し評価することでリードクオリフィケーションに活かしていきます。
リードスコアリング機能では、一般的に以下の3つの要素を元に評価を行います。
適合度
企業規模や、所在地などのデータに基づき、見込み客が顧客候補としてふさわしいか評価します。
関心
見込み客が、資料請求したり、セミナーに参加したりなど、活動レベルに応じて関心度の高さを評価します。
購買ステージ
見込み客が購買サイクルなどで、現在どステージに達しているか把握した上で評価します。
上記の評価を元に優先的にアプローチするべき顧客を選別し、最終的に営業をかけていくことで、従来と比較して成約に至る可能性を高めることができます。
見込み客を管理する(リード管理)機能
最後に、アプローチする予定、またはアプローチ後の見込み客を管理します。見込み客の基本情報や成約に至るまでのプロセスなどを収集・管理することができます。
主に以下の機能を使うことができます。
見込み客リスト管理
見込み客の情報を管理・保管。
Webサイトの行動解析
オンライン上での個人の行動を解析。
CRM/SFA連携
マーケティング活動と、営業活動を連携。
分析レポート
Webサイトへの流入から資料請求、成約などの一連の業務の成果をレポーティング。成約までのプロセスをデータベース化することで、成約後もそのデータを元に戦略を構築するとができます。
以上の一連の作業を自動で行い、見込み客の獲得から選別までの作業を的確に実行することが可能です。MAの機能を最大限に引き出すためには、MAの特徴や機能を理解し、適切に運用する必要があります。
MAの活用メリット
ここまで、MAの機能についてご紹介してきました。では、実際にMAツールを使うと、どのような活用メリットがあるのか、その特徴を見ていきましょう。ただし、以下を実現するためには、課題設定やオペレーションなど基本となる設計がとても重要になってきます。それを念頭に置いた上で、ご確認ください。
作業の効率化が実現
マーケティングの全体のシナリオを作成する作業は必要不可欠ですが、それを実行するためのプロセスの一部をMAツールを利用し自動で行うことが可能です。これまで人の手で行われてきた膨大かつ複雑な作業を、MAツールにまかせることで、作業の効率化、時間や手間、コストの削減が実現します。
統合管理が可能
従来は、リードジェネレーションやリードナーチャリングなどが、別々のツールに分かれており、それぞれのデータの管理すら独立してしまう場合が多くありました。MAツールは、リードジェネレーションからリード管理まで1つのツール内で実行できるため、顧客に対するアプローチを効果的かつスピーディーに実行することができます。MAツールによりマーケティング業務を最適化することが可能になりました。
1対1のマーケティングが実現
MAツールを利用することで、見込み客一人一人に、最適なマーケティング活動を実行することができます。顧客の行動に合わせた施策を行うことができるため、顧客のニーズに合わせ、情報をピンポイントに伝えることが可能です。
高い成約率を実現
顧客のニーズに合わせた情報発信や顧客の評価、営業とマーケティングの連携などにより高い成約率を実現できます。これまで、人の手で行われてきた作業をMAツールで自動化することで、時間や人件費の削減などの恩恵を受けられるほか、従来と比べ成約率が高くなることが大きな特徴です。
MA活用の注意点
MAの機能とメリットについてご紹介してきましたが、MAツールはただ導入すれば効果が出るというわけではありません。ここでは、MA活用時の注意点を6つご紹介します。
自社の課題や目的に合ったツール選び
MAツールの力を最大限発揮するためには、導入前に自社の課題や目的をしっかりと明確にしておきましょう。MAツールは、ツールによってカバーできる領域が異なります。そのため、自社の課題や目的が不明確なままMAツールを導入してしまうと、期待した効果を得られない可能性があります。
たとえば、営業リソース不足で十分な営業活動ができていない会社は、スコアリング機能が充実したMAツールを選定することで、リードに優先順位をつけて効率的な営業活動ができます。MAツールを導入する際は、機能面や他ツールとの互換性、解決したい課題なども明確にして導入しましょう。
MAを積極的に利用する体制構築が重要
MAを効果的に運用するためには、社内でMAツール運用の役割分担を明確にする必要があります。そのため、MAツールを使用できるリテラシーを持った人材を運用担当者に選定しましょう。
また、営業部門とマーケティング部門を中心に、ホットリードの定義をはじめとしたMAツール運用の認識を、全社で一致させることも重要です。部門ごとにMAツールの運用方法が異なっていると、たとえリードを獲得できても部門間の連携がうまくいかず、効果的なアプローチを行えません。
MAツール導入の初期段階はうまくいかないことも多いですが、トライアンドエラーを繰り返し、MA運用の体制を構築していくことが大切です。
実運用前の施策設計、ツール上の設定は慎重に
MAツールの運用を開始する前に、施策設計しておきましょう。施策設計では、リードの数を倍にする、売上を20%上げるなど、数値に基づいたゴールの設定や、リードとなるターゲットを設定します。
施策設計が完了したら想定できるシナリオのパターンを洗い出し、シナリオに沿った運用ができるようにMAツールの運用設計と設定を行います。
中でも、MAツールのスコアリング設計は慎重に行わなくてはなりません。スコアリングは、リードのアクション、属性、関心の高さなど多様な観点に基づいて点数をつけることです。点数が高いほど、ホットリードであると判断することができます。スコアリング設計が適切でないと、受注率は上がりません。
また、スコアリング設計ができたらすぐにMAツールの実運用を開始するのではなく、まずは試験的に運用を行ってスコアリング設計が適切かどうか確認する期間を設けましょう。
運用後も常に分析と改善が必要
MAツールを導入した当初の運用や設定を使い続けるだけでは、MAツールの効果を最大限発揮できません。市場のニーズや競合環境、製品、サービス、顧客の行動は常に変化しています。MAの運用において最も重要なことはレポーティングを基に分析を行う一連の改善プロセスの確立です。
マーケティング活動の成否はさまざまな要因によって決まるため、パフォーマンスの結果だけで具体的な要因を突き止めることはできません。たとえば、Webページからのコンバージョンが減った場合、ページの閲覧者が減ったのか、ランディングページからのアクセスが減ったのかなどあらゆる可能性があるため、レポーティングを分析して要因を探す必要があります。
特に、スコアリング設計はこまめに見直す必要があります。MAツール導入初期段階のスコアリング設計は未熟な場合が多く、より質の高いホットリードを獲得するには効果測定と定期的な見直しが必要です。PDCAサイクルを回し続けて変化に合わせた改善を目指すには、マーケティング担当者がMAツールを用いた施策設計に注力できる環境を整えることがベストです。
なんでも自動、というわけではない
「MAが全てのマーケティング業務を自動化してくれる」というわけではありません。基本的にMAツールが自動化できるのは、営業担当者の「アクション」のみです。高いスコアのリードに対するアプローチのタイミングや、コミュニケーションの手段などは人間が考える必要があります。そのため、MAツールの運用にはマーケティングや営業に関する知識を踏まえてどのタイミングでどのようなアクションを起こすかという、「良いシナリオ」を描く力が必要です。
最初から良いシナリオを描けることは少ないので、試行錯誤が必要になります。
様々なコンテンツ作成が必要になる
MAツールを使用すれば、作成したコンテンツを自動的に配信することができますが、コンテンツ自体の作成は自動化できません。リードナーチャリングを行うためには、誘導先であるオウンドメディアなどのコンテンツが大量に必要になります。
ここではMAに必要なコンテンツを3つ紹介します。
アクセスを集めるためのコンテンツ
MAツールで作成したコンテンツを自社サイトに設置したとしても、リードがホームページへ訪問しなければ行動履歴を把握することができず、スコアリングを行うことができません。アクセスを集めるためにも、業界情報やツールのノウハウ情報、実際に導入している企業の事例、FAQといった魅力的なコンテンツを配置していくことが重要です。
また、オウンドメディアで作成したコンテンツは、SNSで拡散することで多くの人の目に留めることができます。さらにより多くの集客を集めたい場合は、インターネット広告を活用してリードターゲットを絞りましょう。
リードに変えるためのコンテンツ
アクセスしてくれたユーザーをリードに変えるためには、名前とメールアドレスといった情報を取得するコンテンツが必要です。また、お問い合わせまでいかないリード向けには、中間コンバージョンのシナリオを作成し、シナリオに基づいたコンテンツを用意することでリード化できます。
具体的なコンテンツとしては、有益な情報をまとめた資料や、無料ホームページ診断、無料相談、セミナー資料のダウンロードなどのサービスがあります。
キーページとなるコンテンツ
検討段階のホットリードしか見ないコンテンツは、キーページとしての役割を果たします。たとえば、ツールの価格表や、業者比較シートは検討しているリードしか見ることはありません。
また、キーページを作成し、閲覧者のアクセス数や滞在時間をレポーティングすることはスコアリング評価の1つの軸となるので、MAツールを運用する上でも重要なコンテンツです。
MAツール5選
MAツールで実現できることがわかったところで、実際導入するとしたらどのソフトウェアを利用したら良いのか分からないですよね。MAを最大限に活用するには利用目的や、予算などに沿って適したMAツールを選択する必要があります。
ここからはMAツールを5つご紹介します。あくまで一例ですので、気になる方はより詳細に情報収集されてみてください。一見わかりにくいですが、各ツールで特徴にかなり違いがあります。
SATORI
SATORI株式会社が提供する、リードジェネレーションに強いMAツールが「SATORI」です。国内における導入実績社数は400社以上。実名リードだけでなく、匿名リードについてもデータ管理・蓄積できる点が特徴的です。匿名リードに対しても条件設定をしてコンテンツやフォームを簡単に出し分けることができます。匿名リードへのアプローチを通した実名リード獲得の強化につながります。
SHANON MARKETING PLATFORM
株式会社シャノンが提供するMAツールです。国内における導入実績社数は900以上、キャンペーン実績数220,000以上。マーケティング業務の自動化・効率化や統合的なデータ管理はもちろん、セミナーやプライベイトショウ、名刺管理やインサイドセールスに向けた活動履歴までデジタル領域であるMAだけでなくアナログ接点まで網羅的に管理できる点に強みがあります。
Pardot
世界No.1のCRMを提供している株式会社セールスフォース・ドットコムのMAツールです。同社が提供するSalesforceとの連携がスムーズに行える点・Salesforceと同様のインターフェースで操作できる点が魅力。世界的にイベントやユーザー会も多く開催されており、ユーザーコミュニティが活発な点も特徴だと言えます。
HubSpot
「HubSpot」は、HubSpot Japan株式会社が提供するツールで、インバウンドマーケティングを実現させるために開発された、マーケティングとセールスのための統合型プラットフォームです。見込み客リスト管理やSNS機能などに必要となる17個の基本機能を網羅し、統合されたマーケティング実行環境を提供します。
Marketo
株式会社マルケトの「Marketo」は、顧客の属性に加え、マーケティングチャネルにおける行動データを元に、顧客が求めていることを理解した上で一人一人と対話ができる統合プラットフォームを提供しています。BtoB、BtoC問わず、世界で6,000社以上の導入実績をもっています。
その他のオススメ営業ツール
営業では、見込み客の獲得から選別までの作業のほかにも、顧客情報や、アポイント、商談内容、進捗状況など、管理しなければならない項目が膨大にあります。
今回はMAツールをご紹介しましたが、それ以外にも上記内容を管理するためのツールも存在します。例えば、以下のようなものです。
- SFA:営業支援システム
- CRM:顧客関係管理ツール
- 名刺管理ツール
- スケジュール管理ツール
- グループウェア
- 決済代行・請求書作成ツール
- 経費精算ツール
- メモツール・資料作成ツール
MAは主にリード獲得向けの営業ツールでしたが、SFAは顧客情報や営業活動の進捗状況などを一括管理できるシステムです。SFAを導入することで、現場の状況を共有し、自動レポート化により会議資料を作成することができます。
営業についての課題や営業方法に合わせて、適した営業ツールを選択し上手く活用していくことで、会社の成長につなげることができます。ツールを活用して営業することで、いつでもどこでも資料にアクセスでき、その場で日程調整ができるようになることから、確実に商談を取りに行くことにもつながります。
また、商談のアポイントを獲得した企業へ訪問せず、社内にいながら営業活動を行うことのできるツールもあります。
まとめ
今回は、MAについてご紹介しました。見込み客の集客から選別までのマーケティング活動を手作業で行おうとすれば、膨大な時間と手間が必要です。
煩雑で膨大なマーケティング活動では、MAツールを使うことで、様々なメリットを得ることができます。自社に適したMAツールを活用することで、人件費の削減と高い成約率を同時に達成していきましょう。
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