コロナ禍で営業戦略を見直す企業も増えてきており、戦術として「インサイドセールス」が注目されています。現在、日本はコロナ禍だけではなく人手不足などさまざまな問題を抱えています。未来の営業を見据えると、インサイドセールスは必ず必要になってくるでしょう。
今回は、インサイドセールスの導入方法や注意点などをご紹介します。インサイドセールスの始め方がわからない方は、ぜひ参考にしてみてください。
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【前提】インサイドセールスとは
インサイドセールスとは、見込み顧客に対して非対面で行う営業スタイルです。メールや電話、Web会議システムなどを使用して営業活動を行います。反対に、対面で行う従来の営業スタイルをフィールドセールスと呼びます。
インサイドセールスは営業活動のための移動時間を取らないため、見込み顧客1件1件を足で回るよりも効率的です。導入すれば1日あたりの商談件数の増加や人手不足の解消などにも繋がるでしょう。
さらに対面による接触を避けられるため、コロナ禍の営業スタイルとして導入を検討する企業が増えています。
インサイドセールスについてもっと詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。
【事例付き】基礎からわかるインサイドセールスとは?定義や社会背景、メリット・デメリットを徹底解説
インサイドセールス導入の手順
役割の明確化
インサイドセールスは企業によって役割が異なりますが、マーケティング部門とフィールドセールス部門の間を担う部門だとも言えます。それゆえによく起こる問題としては、マネージャーが双方の板挟みになってしまうこと。
特にフィールドセールス部門の「質の良いリードがほしい」という要望を聞いたことがある方は多いのではないでしょうか。企業によってはマーケティング部門がなく、インサイドセールスを行なうチームや部署が、リードの獲得と優先順位の選別を担うケースもあります。
そんなときにまず理解しておかなくてはいけないのが、チーム全体としてのやるべきこととメンバー個々の役割の明確化です。
- リード獲得のための施策・ヒアリング項目の整備
- 見込み顧客の選定、優先順位の確定
- リードの引き渡し
インサイドセールスがやるべきことを洗い出しすると、想像以上に多くの業務が出てきます。そうなると本来インサイドセールスは何をすべきなのか、見失ってしまうこともあるでしょう。だからこそ、チーム全体としての役割を明確にする必要性があります。
また各メンバーに業務を割り当てていく段階では、「なぜやるのか」の視点をセットで考えてみるといいでしょう。これらの役割を決める際には、マーケティング部門・営業部門を巻き込み、進めていきましょう。
社内体制の構築
インサイドセールスを導入している組織の形や運営方法は一様ではありません。以下は組織体制の一例です。
- マーケティング部門
- インサイドセールス部門
- フィールドセールス部門
- カスタマーフォロー部門
◆マーケティング部門
マーケティング部で見込み顧客の情報を収集します。自社に興味を持ってもらうために、広告を掲載したり、ウェビナーや展示会などを開催します。また、Web上でホワイトペーパーのダウンロードや資料請求などのアクションを取ってもらうための施策も実施します。
さらに、「オンライン接客ツール」を活用するのもよいでしょう。オンライン接客ツールは、Webサイトの訪問者に次のアクションをとってもらうための有効なツールです。
Webサイトの訪問者に適切なタイミングでチャットで話しかけたり、キャンペーンなど魅力的なポップアップを表示させることができます。このようなツールを活用しながら十分な数の見込み顧客を獲得している組織もあります。
◆インサイドセールス部門
マーケティング部門から見込み顧客の情報を引き継ぎ、非対面で営業を行います。電話やメールで一律に営業をかけるだけでなく、見込み顧客ごとに関心度合や熱量などを見極めます。
関心度合が高い見込み顧客には数回に渡り電話をし、低い場合には継続的にメールマガジンを送信するなど、相手に合わせた営業手法でアプローチをします。そして、成約に繋がりそうな見込み顧客をフィールドセールス部門に引き渡します。
◆フィールドセールス部門
インサイドセールスから引き継いだ見込み顧客の元に訪問し、受注獲得を目指します。顧客訪問、案件化、受注、納品までの一連の流れの主役になることも多いようです。
◆カスタマーフォロー部門
自社の製品を購入して顧客となった人をフォローする部門です。トラブル発生時の対応や継続的な商品購入に繋がるフォローなどを担います。
以上は一例です。マーケティング部門がインサイドセールスの役割を担ったり、専門のカスタマーフォロー部門は設置せず、訪問営業担当者がその役割を担うなど、企業によってさまざまな体制で対応しています。インサイドセールスを導入する際には、自社が扱う商品の特徴などに適した「組織体制づくり」と「業務フローの設計」が重要です。
ルールづくり
インサイドセールスを導入する場合、前項のように1つの顧客に対して複数の部署が関わることが多くなります。そのため、情報が重複したり漏れたりしないためのルールづくりが必要です。
たとえば、インサイドセールスが訪問営業担当者に見込み顧客を引き継ぐ場合、引き継ぐ条件をルール化しておくと効率的です。決裁者、予算、導入時期、課題などを把握できたら引き継ぐ、といったようなルールです。この場合、もし1つでも把握できていない項目があるのならば引き継がず、インサイドセールスが再びアプローチします。
このように、インサイドセールスが担う領域を明確にし、自社に適したルールを作ることが必要です。
KPIと評価方法の設定
部署ごとにKPIを作る重要性について前述しましたが、適切なKPIを設定し評価を行うにはどのようにすれば良いのでしょうか。
一例として「企業の大目標を部署のKPIに落とし込む」という方法があります。
- 企業全体として今月の売上目標はいくらか
- 売上目標達成のためには、受注を何件獲得すれば良いのか
- 目標受注数を獲得するためには、何件の商談が必要か
- 目標商談数を獲得するためには、インサイドセールスからフィールドセールスに何件の見込み顧客を引き継ぐ必要があるのか
- そのためには、インサイドセールスは何件の見込み顧客にアプローチをする必要があるのか
上記のように大きな目標から1つずつ落とし込み、KPIを作成するのもひとつの手法です。また、不公平を生まない評価方法を導入することで、社員のモチベーションの低下を防ぐことができます。
CRM/SFAやMAの導入
インサイドセールスを導入して企業全体の生産性を上げるためには、CRMやSFA、MAツールの導入を併せて考えると良いでしょう。
CRMとは「Customer Relationship Management」の略語で、顧客関係管理を意味します。CRMツールでは、顧客との関係を構築するための情報を蓄積・管理・分析できます。
SFAとは「Sales Force Automation」の略語で、 営業活動情報を蓄積し分析するためのツールです。ある顧客に対してどのような営業活動をおこなってきたのかを蓄積することで、次回のアプローチ方法を決めたりマーケティングに活かすことができます。
MAとは「Marketing Automation」の略語で、マーケティング活動の自動化を意味します。たとえば、
- 資料請求をした人がどのWebサイトから訪問したか、訪問ルーツを分析する
- 適切な人に適切なタイミングでメールマガジンを自動送信する
などの機能を有しています。
インサイドセールスを導入し、見込み顧客を開拓したり他部門との連携を図るためには、このようなツールが不可欠でしょう。
「CRM/SFAやMAの導入」についてもっと詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。
CRM/SFAツールとは?導入の目的と活用メリットを解説
Web会議システムやマイク等備品の用意
電話を使用する際、電話回線を使用して通話する企業もいれば、インターネット回線を使用する企業もいます。インターネット回線は電話回線と比較して安価ですが、音声が不安定です。
非対面営業の場合、相手にクリアな声を届け相手の話を漏らさず聞き取ることが必須です。そのために、マイクやヘッドセットなどの機器や電話回線を使用した通話が可能なWeb会議システムを用意しましょう。
マネージャーがビジョンを明確に伝える
インサイドセールスは毎月の目標が課せられ、淡々とこなしていくことが多い職業でもあります。それゆえに目的と手段が逆になってしまうことも。特に目先の数字だけを追ってしまうことがあり、メンバークラスの社員は特に本質を見失ってしまいがちです。そうならないために、インサイドセールスのマネージャーが常に伝えるべきは、「ビジョン」です。
- インサイドセールスのあるべき姿
- なぜそれを行うのか
- 手段に寄りすぎて本質から遠ざかってないか
「数字にコミットすることが大切」なのはもちろんです。加えてなぜその数字にコミットする必要性があるのか、その数字を達成することでどうなるのかもセットで伝えていくことで、メンバーの結束力も高まっていくことでしょう。インサイドセールスは個人プレイではなく、チームプレイです。対話を重ねながらメンバーを導き結果を出していくことこそが、インサイドセールスのマネージャーの役割です。
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インサイドセールス導入における注意点
前述のように、インサイドセールスにはさまざまなメリットがあります。しかし、始めるときには準備しておくべきことをきちんと整理しておかなければ、失敗するリスクが高まります。ここでは、インサイドセールスの導入にあたり注意すべき点をお伝えします。
十分な数のリードが必要
インサイドセールスを導入する際は、十分なリード数(リスト)を保有しておきましょう。インサイドセールスは切電したらすぐに次のターゲットに電話できるため、効率的な営業活動を実現できます。メールなら一斉送信も可能です。
しかし、アプローチできる見込み顧客のすべてにアプローチを終えてしまったら、できることがなくなってしまいます。イベントへの参加、自社への問い合わせ、ホワイトペーパーのダウンロード、資料請求などで新しい顧客情報を得たら、必ずリードとして登録しておきましょう。
部署ごとに設定したKPIが必要
インサイドセールスだけで受注を目指す組織もあれば、初回の商談設定をゴールとしている組織もあります。受注がゴールの場合の目標は、受注件数や金額が設定されることが多いので明確です。
しかし、インサイドセールスが直接売上を作らない場合は、目標が曖昧となってしまいます。これでは評価がしにくいうえに、社員のモチベーションの低下を招くリスクもあります。
そこで、インサイドセールスを導入する場合は、部署ごとに目標と目標達成度合いを測る指標を設定しましょう。この目標達成度合いを測るための指標を「KPI(Key Performance Indicators:重要業績評価指標)」と呼びます。
部署ごとの役割に適したKPIを導入することで、目標が明確になります。また、目標に対して自分たちが今どの状況にあるか客観的に把握することができるようになります。
見込み顧客の引き継ぎルールが必要
従来の営業手法は、1人の営業担当者が見込み顧客の発掘から受注まで全てを担っているケースが多かったのではないでしょうか。この場合、営業担当者が受注・納品までの全てのプロセスを直接見ているため、顧客や商談情報を一元管理できていました。
一方で、インサイドセールスを導入すると営業活動を分担するケースが増えます。たとえば、インサイドセールスが初回の商談を設定し、訪問営業担当者に引き継ぐ場合です。この場合、訪問営業の担当者は初回の商談に至るまでのプロセスを実際に目にしていません。そのため、
- 相手の熱量
- 相手の人柄
- 商談に繋がった決定的な理由
などの詳細が訪問営業担当者にはわかりません。顧客情報や話した内容などをしっかり引き継がないと、商談時に同じ説明や質問をしてしまうリスクがあります。
このようなトラブルを防ぐためにも、部門を超えた情報共有が欠かせません。そのためのルール作りが必要です。
フィールドセールスと対立しない
非対面営業の導入をおすすめすると、「対面営業を批判している」と受け取る方もいるかもしれませんが、決してそうではありません。
対面営業は、商談相手の熱量を肌で感じ取ることができます。その分、相手に合わせた商談ができるでしょう。また、対面の方が関係性を構築するのも早いかもしれません。このように対面営業ならではのメリットもたくさんあります。
そして、対面営業と非対面営業は対立するものではありません。インサイドセールスとフィールドセールス両方を取り入れることで、両者のメリットを最大限に発揮し、さらに生産性を上げることが期待できます。
たとえば、インサイドセールスでは多くの見込み顧客の中から成約に繋がりそうな相手を見極めます。その見込み顧客のもとに訪問営業担当者が実際に赴いて、商談します。訪問営業担当者は受注確度が高い相手のみに訪問するので、成約率が上がるでしょう。
また、インサイドセールスは、すぐに成約の可能性がない見込み顧客にも、定期的にアプローチしやすい手法です。
メールや電話などでコミュニケーションを重ねる内に、相手の興味が喚起されるかもしれません。そのタイミングで訪問営業担当者にバトンタッチするのです。関係性を構築するために、訪問営業担当者が何度も相手先に出向かずに済むため、効率的に営業活動を行うことができます。
このように、インサイドセールスを導入することで、フィールドセールスは効率的に営業活動を行うことができます。インサイドセールスを導入するにあたり、両者が対立しない組織づくりをすることが大切です。
営業フローを体系化できているか
セールス部門は個々の能力が売上を左右しやすいがゆえ、営業手法が体系化されておらず、属人化しがちです。
セールス全体にいえることですが、営業フローを体系化し、誰もが営業で結果を出せるようになることは、組織においてとても重要なことです。ことインサイドセールスにおいては、営業プロセスを体系化し随時ブラッシュアップしていくことで、チーム全体の構築・強化に繋がっていくでしょう。
- やるべきことが可視化されたドキュメントがあるか
- 個々の営業ノウハウが全体に共有される仕組みづくりができているか
- 営業活動の進捗を確認できる仕組みづくりができているか
インサイドセールスは、目先の目標をこなすことを最優先とするあまり、体系化などは疎かにされがちです。しかし長い目で見たときに体系化ができていないと、インサイドセールス部門が大きくなるにつれて、成果のムラも大きくなっていきます。基本的なことではありますが、営業フローはまず体系化、そしてブラッシュアップです。
データを分断させないためにツールを利用できているか
インサイドセールスが機能するためには、組織内でバラバラになっている顧客データを統合し、さまざまなデータを多角的に分析する必要があります。
分析する具体的な方法として、ツールによる連携が有効です。MA、CRM、SFAツールをAPI連携で繋ぎ、顧客データを1つのツール内で確認可能な状態にしておくと良いでしょう。バラバラだった顧客の各種データが統合されることで、顧客への理解が深まり、データをスピーディーに活用することができます。
今までの営業スタイルは、1人の顧客に1人の営業担当者が付き、情報収集から意思決定まで顧客の購買プロセス全てを担っていました。そのため、情報は分断されずに営業担当者に全てが集約されることとなり、属人化が起こりやすい状態でした。
しかし、インサイドセールスの導入で営業活動を分業すると、情報がバラバラに散らばることになります。情報が散らばってしまうと顧客理解が深まらず、データの活用も進みません。
インサイドセールスに求められる役割は、リードの状態を見極め、ナーチャリングを行い、ホットリードをフィールドセールスに送ることです。分業化によって効率的になる反面、視野が狭まってしまう恐れもあります。
そのような状況に陥ると、
- 見込み客に最適化したナーチャリングが行えない
- 確度の低いリードをフィールドセールスに渡してしまう
- リードに必要のない情報を提供してしまう
といった問題が発生します。これでは、インサイドセールスを導入したとしても効果が得られず、コストばかりがかさんでしまいます。
前述のようにツールを使いデータの統合をすれば、多くの情報を把握することに繋がり、より精度の高い顧客プロファイルが分析できます。分析から「どのような顧客が受注に繋がるのか」といった傾向を見つけることが可能となります。精度を高めたリード情報をフィールドセールスに渡すことで、確度の高いリードへの販売活動に注力することができ、ここで初めて分業化のメリットが収益へと繋がっていくのです。
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インサイドセールスの外注の是非
最近はインサイドセールスを外注するケースもあるようです。アウトソーシングは便利な面もありますが、自社に営業ノウハウが蓄積されないのでおすすめはできません。それを承知の上で、足りないリソースを補うために一時的にうまく使う分には良いかもしれませんが、このようなデメリットがあることを考慮に入れた上で判断しましょう。
インサイドセールスに活用できるツールの中には、bellFaceなど、自社でノウハウを蓄積していけるようにサポート体制(カスタマーサクセス)が充実したものもあります。インサイドセールスの始め方がわからない企業様も、長期的な視点で見て、サポートを受けながら自社内で組織を作る環境を整えていくのがおすすめです。
まとめ(Q&A)
Q.インサイドセールスとは何ですか?
A.インサイドセールスとは、見込み顧客に対して非対面で行う営業スタイルです。メールや電話、Web会議システムなどを使用して営業活動を行います。
Q.インサイドセールスを導入するにあたり注意すべきことは?
A.注意すべき点は主に4つあります。
- リードと呼ばれる見込み顧客を十分に確保すること
- 部署ごとにKPIを設定すること
- 見込み顧客を他部門へ引き継ぐ際のルールを設定すること
- 対面営業と対立しない組織づくりをすること
Q.インサイドセールスは外注しても問題ないか?
A.急場をしのいだり、社内に入り込んだコンサルのような形での運用でノウハウを吸収したり、といった目的がある場合を除き、自社に営業ノウハウが蓄積されないのでおすすめできません。ツールを活用しながら社内で運用し、ノウハウを蓄積していきましょう。
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