営業活動をおこなうセールス職にとって最も重要な局面、クロージング。商談の最終段階にあたる契約、または終わりを意味する言葉として、営業に携わる人なら誰もが知っている用語です。
しかし、他の商談プロセスと比べると難易度が高く、多くの営業職の方が悩まれていることでもあります。
晴れて成約に至るためには、顧客ニーズの解決を提案できていることは勿論、顧客の購買心理を誘導するテクニックを身につけることが重要です。クロージングスキルを上達させ、成約率を上げるための15の方法(コツ)を中心に解説します。
次々に契約をとるトップ営業が実践しているクロージングのコツを身に着け、売上アップに繋げていきましょう。
そもそも「クロージング」の意味とは
ビジネス用語としてのクロージング(英:closing)とは、単に「終わり」や「締め」の意味ではなく、商談の最終段階で顧客と契約を締結すること、およびそこに至るまでのプロセス全体をいいます。
そんなことをして何の意味があるのか……と思われる方もいらっしゃるかもしれません。商談の場で、信頼関係構築やニーズの聞き出し、ニーズ解決のための適切な提案をすることを優先して進めるのは当然です。
しかし、最終目標である契約書サインに辿り着くためには、顧客の購買意欲を引き上げる必要があります。そのため、最後に顧客が成約に踏み切ることができるように、購入の意思を確かめながら、契約しやすい状況を作りだすことに努めなければなりません。
逆に、クロージングをかけずにそのまま放置してしまったら、その商談はどうなるでしょうか?
- 時間を置くことで契約に対するモチベーションが下がってしまう
- うやむやになってどうでも良くなってしまう(忘れられる)
- リサーチ/あいみつをとって似たような競合他社を選ばれてしまう
このように、失注・他決(他社決定)のリスクが上がってしまい、せっかく積み重ねてきた営業の成果は何も残りません。他社のセールスがクロージングにかかっているのに自分(自社)だけが自社を選んでいただける理由を適切に提示できていなかったら、他社決定に終わってしまう可能性が高いでしょう。
誠実に務めることでその時は成約に至らなくても後に思い出していただけて、あらためてお声がけいただける……ということもありますが、いつもそんな幸運は訪れません。お客様は基本的に、どの商品/サービスを選ぶのか悩んでいる状態なので、適切なクロージングを行なうことがお客様の検討状況を後押しすることにつながります。
営業は、貴重な提案機会を無駄にせず成約に繋げるために、クロージングまでゴリ押しではなく的確に誘導する意識を持つことが大切です。
成約率を上げるクロージング15のコツ
成約率を高めるためには、クロージングにまつわる顧客心理を理解することはもちろん、商談の始めから終わりまでさまざまなタイミングで心理技を含めたテクニックを活用して的確に対応することが必要です。
クロージングは、最後に契約を提案する段階だけで意識するべきものではありません。商談の終盤、確実に成約率を上げるためにも、商談の最初から最後に至るまで相手にクロージングを意識させることが必要です。
お客様との関係がどの段階にあるのかを明確に意識する
営業担当者が商談の中で意識するべきテーマは主に以下の4つといわれています。
- 信頼関係の構築
- ニーズの正確な把握
- 自社の商品やサービスを活用してニーズを解消するための提案
- クロージング
顧客1人に対し、商談開始からクロージングまで各回で重要となるテーマを意識します。商談が1回で終わる場合や数回必要な場合もあり、現状どのテーマに取り組むべきステージにあるのかを判断しつつ商談を進めます。
BANT情報を押さえる
BANT(読み:バント、「BANT条件」とも)とは、特に法人営業においては必須情報とされる以下の4つの項目の頭文字を取ったものです。
- Budget:そのプロジェクトや購入/導入のための予算
- Authority:稟議を承認する決裁者
- Needs:企業としての必要性
- Timeframe:導入時期
特に「予算」は最初に掴むべき非常に意味のある情報で、BANTをどれだけ掴めているかで商談の確度がまったく異なります。例えば決裁者が掴めていないと、最後の最後で「やっぱり上にダメって言われて…すみません…」と言われてしまうといったどんでん返しが起こりえます。
BANT情報を押さえた段階で成約のハードルが高いと感じてしまうこともあるかもしれませんが、BANTはあくまで攻略するための手がかりです。諦める理由になってはいけません。現状維持バイアス(今のままでいいや、と思う気持ち)をどうやって解放するかを基本姿勢にしましょう。
本当にお金が1円もなければそもそも商談になりませんので、今やる理由と必要性を示せれば予算は作っていただけるはずです。「目の前の担当者が決裁者じゃないから難しい」ではなく、どうやって巻き込むか、先方の担当者と一緒にパートナーとして作戦を考えるべきです。
顧客の相場観を確認する
予算に関連して、顧客の「相場観」を確認しておく必要があります。
例えば、顧客はイメージで「1個1000円くらいで買えるだろう」と思っているとします。しかし実際の相場が1個1万円だとしたら、仮にあなたが見積もりを出したとしても「桁違いに高い」と思われてしまうでしょう。
そこで、正しい相場観を伝えることで、正しい認識のもとで顧客が判断しやすいようにしなければなりません。的確に伝えることで価格面でのメリットを理解してもらうこともできるでしょう。価格が安い場合はそれ自体をアピールできますが、価格が高い場合でも、機能やサポートの充実度などを説得の材料にすることができます。
自社サービスと成功事例に誰より詳しくなる
企業に商品・サービスを売り込む際に、営業として信頼される課題もあります。「このサービスを導入すれば、20%もコスト削減ができます!」など、数字を並べただけの提案をしてしまっていないでしょうか?
この場合、具体的にサービスのどの部分がなぜコスト削減に繫がるかがわからなくては、お客様に信頼してもらうことは難しいでしょう。その商品・サービスを契約するメリットとともに、実際に既に購入した顧客がどのように成功したかの事例をセットでお伝えすると、商品・サービスそのものや担当者の信頼がUPする可能性が高まります。
- 実際に導入した企業名
- 同じ業界・業種での導入事例
- 具体的な数字
- どの様な問題が解決されたか
- 何が実現したか
つまり何より大事なのは、まず自社のサービスと導入成功事例について開発よりマーケティングより圧倒的に詳しくなることです。クロージング以前に、営業職として非常に大切なことでもあります。
自社商品・サービスを知り尽くした上で顧客の情報と合わせ、「だから弊社の商品/サービスは御社にぴったりです」とマッチングさせることができるのが基本であり、理想形です。少なくとも、サービスの詳細について確認しただけなのにその場で答えられないような営業とは、誰も契約したくないはずです。
クロージングのタイミングを見極める
顧客が買いたくなったタイミングを見極めることで成約率が高まります。自社の商品やサービスを活用することで課題解決できることを理解したときに、顧客の購買意欲は高まります。特にわかりやすいタイミングは、以下の2つです。
契約後の運用などについて質問したとき
- 「契約後のサポート体制は?」
- 「実質的なランニングコストはどのくらいなりますか?」
質問が生まれるということは、真剣に購入を検討し、購入後の活用方法をより詳しくイメージしている証拠です。的確に回答して顧客の不安を解消できたら、その時がクロージングをかけるタイミングです。
周りの関係者と相談を始めたとき
特にBtoBでは、担当者は必ずしも企業の決裁者とは限りません。そのため、現場で働く社員や担当者よりも権限のある決裁者等に相談したタイミングがチャンスでもあります。このとき、担当者が気になっている事柄をヒアリングし、その場で解決方法を提案することが重要です。
テストクロージングをする(Foot in the Door)
テストクロージングとは、相手の興味や認識を確認していく作業です。一通り商品・サービスの説明後、相手の購買意欲・意志がわからないままクロージングをおこなってしまうと失敗に繋がりやすくなります。
商品の説明後すぐに契約の話を持ち出しても、よほど商品に魅力を感じていない限り成約に至る可能性は低いでしょう。成果を上げるためには、契約に向けて顧客の気持ちを誘導していくことが求められます。
このための手段として、小さな合意を積み重ねる「テストクロージング」を行うことで、買い手の心理を確かめることができます。
商品やサービスを活用することで課題解決する方法を提案する際に、下記のように小さな「OK」を繰り返すことで契約後のイメージをお互いに認識し合い、購買意欲を確かめることができます。
- 「ここまで説明させていただきましたが、ご理解いただけましたでしょうか?」
- 「お話を伺ったところAプランをおすすめしたいですが、詳しいご説明をしてもよろしいですか?」
- 「仮にご契約いただけた場合、このように進めてよろしいでしょうか?」
- 「では、〇日に書類をお送り頂けるということでよろしいですか?」
など、契約を前提とした質問を、合意を得ながら進めることで相手の興味関心度を確認する必要があります。質問への回答で、契約の見込みがあるかどうかをある程度把握することができます。
ここで、重要なポイントは「はい/いいえ」の二択で回答できる質問を投げかけていくことです。「はい」の回答を重ねることで、その後「はい」と回答しやすい状況を作ることができます。これは『フット・イン・ザ・ドア(foot in the door)』という心理テクニックの1つで、相手が承諾しやすい要求から始め、「はい」を積み重ねることで最終的な要求を承諾するよう相手を誘導する話術です。
ここで顧客が否定的な反応を示した場合は、クロージングを切り出しても失敗するでしょう。その場合は否定的である理由を聞き出し、適切な解決方法を考える方向に話を進めます。
顧客に幅広い選択肢を与える
クロージングを行う際には、ただおすすめの商品やプランを勧めるだけではなく、幅広い選択肢を与え、顧客に細かな部分を決めてもらうことも重要です。
どんな形であれ、クロージングはお客様に決断を迫る行為です。伝え方を間違えてしまったり強引に迫ったりすると、売る側への不信感がわいてしまい成約には至りません。また、人の心理としては「自分で決めたい」と、あくまで主導権を自分のものにしたい欲求があります。
お客様の営業側に対するストレスを可能な限り低くする伝え方として、「幅広い選択肢を与える」という方法があります。実際によくあるシーンを例に、3パターンで比較してみましょう。
- 「現在Bプランをおすすめしています」
- 「低価格のCプランがありますが、より充実したBプランをおすすめしています」
- 「低価格のCプラン、高価格のAプランがありますが、中間のBプランもご用意しています。Bプランでも十分コンテンツをお楽しみいただけるかと思います」
成約になりやすい中間価格のBプランをすすめるのは営業の1つのセオリーですが、パターン1、2はいずれも主導権が営業側にあるように感じられます。しかしパターン3では、営業側はお客様に選択肢を与え、お客様は自分の意志で選択することができる状況を作ることができており、お客様に検討する時間を与えています(※広げすぎも良くないのでご注意ください)。
この方法により、柔軟な対応をしてもらっている感覚を与えることができるため、顧客は安心して契約に進むことができます。
沈黙を恐れない
顧客が沈黙した時には、むやみに商談を再開しないようにしましょう。沈黙した顧客は購入を真剣に考えていて、購入後に自社の業務がどう変化するのかなど、頭の中で情報を整理していることもあります。
自分の成功パターンのみに囚われず、相手のペースに合わせることも重要です。相手の考えの煮詰まり具合を見計らって、「いまどのあたりで悩まれていますか?」などと聞いてみましょう。
二度に分けてクロージングする(Door in the Face)
クロージングの基本は2回おこなうことです。初めに1度クロージングを行なうことで、お客様は「決断する」ことを意識するようになります。また、その1回があることで、2回目の成功率が上がります。
この時に使える心理テクニックが『ドア・イン・ザ・フェイス(door in the face)』です。前述した『フット・イン・ザ・ドア』では、少しずつYESを積み重ねていくプロセスでしたが、『ドア・イン・ザ・フェイス』は、大胆に1度目に「受け入れがたい難易度の高い要求」を提示して、一度あえて否定させます。
そこから徐々に難易度を下げていき、最終的に「難易度の低い(本来の)要求を受け入れてもらう」プロセスを踏みます。
たとえば、マーケティング支援サービスの提案として、予算感が500万円前後だったとします。そこで、1回目ではまずはあれもこれもフルセットでメニューを詰め込んだ1000万円のプランを提案します。その後、商談相手の反応に合わせてこれは抜きましょう、あれも取りましょう……と調整し、本来狙っていた500万円前後で落ち着かせたプランを2回目に再提案します。
これによって、「安くなった」「自社に最適化されたプランになった」気持ちになり、契約に至るというテクニックです。
契約後/導入後の展望を一緒に考える
商談にて商品・サービスを売り込むことは重要なプロセスですが、お客様のニーズ(購入/導入しようと思った動機)を聞き取ることも大切です。
なぜなら、そのサービスがいかにお客様の役に立つのか、そのサービスを利用して企業がどう変わっていくのかなど、お客様がサービスを導入するメリットをピンポイントで提案する必要があるからです。自社のニーズと関係ない課題解決を提案しても響きません。
そういった聞き取りと提案を繰り返す中で、お客様と将来のビジョンを一緒に考えると良いでしょう。お客様のペースに合わせて一緒に歩むことで、商品・サービスへの理解や営業への信頼が深まり成約に結びつきやすくなります。
ともに課題解決にあたるパートナーとして認識されれば、他社より一歩先に行くことができるでしょう。
お金の話は慎重に
お金の話は営業にとってもお客様に取っても重要なポイントです。はっきりと自信を持って話すべき内容ですが、お客様が迷っているタイイングは注意が必要です。焦ってお金の話をしてしまうと、余計にお客様を混乱させてしまいます。
このような場合は、冷静にお客様の立場に立って会話を進める必要があります。「ここまでは主に商品の特徴やメリットについて話しました。ご不明点はありますか?」などと、一息つくタイミングを入れて相手の歩調に合わせましょう。
話を進めても問題がなさそうであれば、「それではここからは商品の金額についてお伝えします」と、話を明確に区別します。お客様が焦ったり不安になったりするのを防げるでしょう。
YES BUT法を使う
YES BUT法(イエスバット法)は相手の意見にぶつからないようにするクッション話法の一つです。
商談相手の発言に対して、まずは「YES」で相手の話を肯定します。「そうですよね」「その気持ちすごく分かります」などと頷きましょう。そうして相手の意見をしっかりと受け止めた上で、自分の意見を述べます。「ですがこちらのプランならどうでしょう」、「ですがこの商品にはこういったメリットもあります」といった形でYESの後に「BUT」で続けます。
人は自分の意見を否定されると嫌な気持ちになります。このYES BUT法を用いるとその気持ちを薄められるので、相手からの好感を下げずに自分の意見を伝えられます。
決断できない理由をつぶしていく
営業で、お客様が成約に踏み切れない理由として主に以下が挙げられます。
- もっと安いものはないか?
- もっと良いものはないか?
- この営業を本当に信用して良いのか?
このような理由で契約するか否かを悩まれている状態でクロージングをかけても、成功する確率は低いものです。お客様の悩みや不安を解決できるように1つ1つ提案を行い、お客様が納得した状態でクロージングにかかりましょう。
ストレートに購買意欲を聞く
お客様の中には、現状維持バイアスが働いてなかなか意思決定をされない方も少なからずおり、「契約したいけれど、どうしようかな」という心境になっていることもあります。
そういった方には、契約/購入していただけるのか、まだ検討している段階なのか、率直に聞くことで1つのきっかけとなります。そして、付随して先延ばしにするデメリットと今決めることのメリットを伝えましょう。
例)
・「今月中にご契約いただければ、初回利用料が無料となります。来月以降ですと通常の利用料がかかってしまいますが、いかが致しますか?」
・「上司を説得しました!もし今月中にご成約いただけるなら、◯円で使っていただけます!」
これはもはや常套句でしょう。商談の最後に、同時にメリットとデメリットを掲げることで、メリットを受け取りやすくなります。相手の状況を観察しながら、相手が「はい/いいえ」で答えられるはっきりとした質問で確認することが必要です。
そしてこの質問に断られることを、恐れてはいけません。実際にその商品やサービスを契約後に成果をえることができるのかどうかなど、顧客としても不安要素を抱えています。そのため、明確な言葉でクロージングを切り出すことで、最終決断するために顧客を後押しすることができます。
自分にクロージングをかける
お客様の背中を押すことを考えるのも大切ですが、自分自身は果たして決断力があると言えますか?もしいざという時に決められないとしたら、それをお客様に求めるのは矛盾しています。
そんな際は自分にトレーニングとしてクロージングをかけてみましょう。具体的には何か欲しい商品があった際に、自分の言葉で背中を押します。この商品を持ち歩けば運気が上がる、このジャケットを着れば気分も良くなる、といった具合です。
これを繰り返せば自分の決断力は向上します。お客様に対してもより自信を持ってクロージングを行えるようになるはずです。
成約率を上げるには、商談までのプロセスも重要
売上を向上させる方法として、商談の質を良くすることは大事です。しかし、営業活動の後半に位置する商談にたどり着くまでにはさまざまな工程があります。成約率を上げるには見込み顧客を確保するところから工夫していく必要があります。
そこで、ここでは商談までに行える、成約率を高めるための方法をご紹介します。
効率的に見込み顧客を創出する
売上につながる商談の機会を増やすには、営業対象となる見込み顧客を充分に確保する必要があります。顧客リストから、受注見込みがある顧客を的確に抽出することで、商談前の営業に使う時間を削減できるようになります。
しかし、営業担当者のほとんどは最初から購入意欲が高い相手だけを探し出そうとします。見込み顧客の時点で購入に前向きな相手は少ないうえに、他社も目を付けている見込み顧客である確率が高いです。他の企業と競合すると時間がかかりやすく、高い確率で価格競争が起こります。自社が契約を取ったとしても、値引きをする分だけ利益は少なくなります。
目的通りに短期間で契約を取れることはまれなので、購入意欲が高そうな見込み顧客だけにターゲットを絞ることがないようにしましょう。
見込み顧客の大半は中間層であり、営業担当者が話す内容によって購入意欲が変動する状態といえます。買うことをまだ考えていない相手であれば競合他社がいる可能性は低く、価格競争が起きる心配も不要になります。そういった見込み顧客を自社で確保していくことで、良質な顧客リストを作れるようになります。
したがって、見込み顧客を数多く確保するには中間層に対して重点的に営業を行うことが重要となります。
見込み顧客を商談につなげる「ナーチャリング」
見込み顧客に対する商談効率を向上するには、ナーチャリングが重要となります。ビジネスにおいてナーチャリングとは「顧客育成」の意味で、営業を行う前の見込み顧客へ向けてメルマガ配信をしたり、ホワイトペーパーを配布したりすることで自社商品への興味を引き付け、商談へつながる可能性を向上させる施策のことを指します。
ナーチャリングは、顧客リスト作成から営業までの間に行う施策であり、適切に実施することで営業職が抱えるさまざまな課題を解決できるようになります。
受注につながりそうな案件ばかりに集中していると、他の見込み顧客への営業活動や定期的な情報発信などが後回しになりやすいです。獲得した見込み顧客を放置すると、後から連絡を取ったときに自社へ対する印象が薄れてしまっている確率が高くなります。
しかし、一斉配信が可能なメルマガであれば手軽にナーチャリングを実施することができます。
商品に関する宣伝だけでなく、イベント出展や自社セミナーといった情報も合わせて発信すると、間接営業によって自社商品に対する興味を持続、成長させることができます。継続的にナーチャリング施策を実施することで、直接連絡できる時期が遅れたとしても受注可能性を下げずに営業できます。
いかにクロージング、それ以前に商談をいいコンディションで迎えられるかを考えるのも、営業担当者の大切な仕事です。
受注可能性の高い見込み顧客の選別
営業活動を効率良く行うには、受注可能性が高そうな見込み顧客を正確に選別する必要があります。
新規開拓を実施する場合、マーケティング自動化ツール(MAツール、Marketing Automation)を利用することでメルマガや自社セミナーの情報を発信して、反応や問い合わせがあった相手から優先的に連絡を取るように分類していく方法があります。
メールを開封したかどうか以外にも、地域や業種ごとにどれぐらい反応があったかをデータとして収集することもできます。新規の商品・サービスを売り込むときに適しており、短期間で数多くの見込み顧客を選別できるメリットがあります。
すでに営業実績がある商品・サービスであれば、すでに取引関係にある顧客と見込み顧客を比較することで、受注可能性をある程度判断することができます。商談の進捗状況や担当者、決裁者の性格などから優先度を決定して、良い形で商談を進められそうな見込み顧客を選別する方法です。
セールス特化型MAツールのプロに聞く!デジタルの活用でアナログ時間を作り出す、お客様から感謝されるデジタル営業体制の姿とは?
事前情報を集めて的確な提案を
見込み顧客を自社の売上につなげるには、商談の前に必要な情報を揃えたうえで、相手の質問に対して的確に対応できる用意を整えておくことが重要です。
営業の初期段階で見込み顧客を選別できている場合、新規顧客でもクロージングに必要な情報はある程度集められています。予算やニーズ、解決したい問題といった情報が揃っていれば、あとは商談当日に上手く対応、提案できるかが焦点になってきます。
クロージングに必要な各種情報を集めるには、営業部門とマーケティング部門、事務部門などが適切に連携を取ることが求められます。クロージングは営業担当者にかかる責任が大きいですが、見込み顧客の確保から商談までには複数の部門が関わっている点を理解しておく必要があります。
営業支援・顧客管理ツールを有効活用する
営業支援・顧客管理ツールを導入することで、見込み顧客ごとに集めた情報を分かりやすい形で管理できるようになるほか、日々の営業活動を効率化できます。
商談成立までにかかる時間が長かったり、複数の商談を同時期に進めていたりすると、個人で全ての情報を正しく記録、管理することは難しくなってきます。そこで顧客管理ツールを有効活用することで、顧客別の進捗状況や細かい要望、営業に対する反応などを正しく記録、管理できるようになります。
システムに記録した情報はチーム内で共有することもできるので、チーム全体で協力しながら、相手に合わせた情報や資料を用意できます。営業支援ツールは、見積り作成やスケジュール管理、日報作成などの社内業務を効率化できるツールです。営業部門内で社員のスケジュールや進捗を共有することで、問題が起こったときには営業部門全体で問題解決にあたることができるようになります。
Webブラウザから接続が可能なので、遠隔地から営業ノルマの達成度を見ることも可能です。時と場所を問わず、営業責任者は必要に応じてノルマ見直し、営業方針の見直しなどを現場まですぐに伝えられるようになります。
現場の営業担当者にとっても、外から社内業務を行えるので交通費削減、移動時間短縮といったメリットを受けることができます。
【無料ダウンロード】営業組織の生産性向上・働き方改革につながるポイントとは?
オンライン営業におけるクロージングの違い
感染症対策やリモート体制への移行によってオンライン環境で営業活動を行うことになり、特に高単価商材や無形商材を扱う場合、従来の営業スタイルとの違いに苦戦している営業パーソンも多いことと思います。
2021年2月現在、まだ多くの企業がこれからのクロージング手法を検討しているタイミングです。いろいろなオンライン営業ツールはありますしオンラインのみで契約締結までを完結させている企業も出てきていますが、ことクロージングに関しては対面でおこなっている企業が多いのが実際です。
そこでこれから意識するべきは、「オンラインから入り、いかに少ない面談で(お客様にとっても)効率よくクロージングのフェーズまでもっていけるか」です。では、オンラインでの商談~クロージングまでは具体的にどのようなことに気をつければよいのでしょうか。
事前準備をより入念に行う
画面越しでのコミュニケーションとなり、さまざまな点で「わかりづらい/掴みにくい」と思われている営業パーソンは同じことでしょう。しかしそれは、お客様にとっても同じことです。
表情や雰囲気などがわかりづらい分、伝えられる情報量はどうしても減ってしまいます。
いかに相手の会社や業界のことを理解しているか、それに対して商品/サービスがどのように役立つのかといったことを明確に伝えられなければ、クロージングまでたどり着くことも難しくなるでしょう。
1つ1つの商談を短く、対応スピードを上げる
オンラインで対応することの最大のメリットは、小回りがきき、かつ圧倒的にスピードが早いことです。画面越しでの人の集中力は15~20分しか保たないことがわかっていますので、1回1回を長くせず、その分回数を重ねることが、クロージング段階へたどり着く近道です。
例えば決裁者プレゼン~クロージングのタイミングでも、価格やプランを調整した見積書を再提出するような場面が多々あります。訪問・対面文化だと帰社して上長に相談~作成~再提出まで下手すると翌日以降になりますが、オンラインなら10分後にクロージング用の見積書を再提出できていることすらあります。
スピードはそれだけで武器になります。クロージングでもオンラインのメリットを最大限生かしましょう。
オンラインコミュニケーションのスキルを磨く
新型コロナウイルスの感染対策が終わったとしても、オンライン営業自体がなくなることは最早ありえません。その前提で、オンライン営業のスキルを高めていくべきです。下記のようなことが求められ、また、他社との差別化要因になりえます。
- 営業パーソンの人となりを伝えるオンライン名刺の作成
- PCやモバイルでも見やすい資料
- ウェビナーで登録→アポ電話→見込み度を添えてフィールドセールスやクロージング部隊にパス→クロージング……といったストーリーの設計
- ビジネスチャットを用意して気軽かつ迅速にコミュニケーションが取れる体制作り
- WEB上に動画や資料、記事コンテンツを用意して信頼性と権威を担保する
- 電子契約サービスを用意して対応スピードアップ
Q&A
心理テクニックを合わせた営業におけるクロージングのコツと、クロージングのあるべき意味を解説してきました。最後に、ポイントを振り返りましょう。
Q.クロージングのコツは?
A.以下の15個です。
- お客様との関係がどの段階にあるのかを明確に意識する
- BANT情報を押さえる
- クロージングのタイミングを見極める
- 相手に購入意欲をはっきりと聞く
- テストクロージング(Foot in the Door)
- 顧客の相場観を確認する
- 顧客に幅広い選択肢を与える
- 沈黙を恐れない
- 提案内容とともに事例を紹介する
- 二度に分けてクロージングする(Door in the Face)
- 動機が満たされた後の展望を一緒に考える
- 自分にクロージングをかける
- お金の話は慎重に
- YES BUT法を使う
- 決断できない理由をつぶしていく
Q.クロージングをしなければいけない理由は?
A.営業活動の目的は、なにより商談で成約を獲得することにありますが、クロージングをかけないと顧客の契約に対する意欲が下がってしまったり、競合他社を調べて悩んだ挙げ句よそを選んでしまったりと、失注や他社決定のリスクが上がってしまうためです。クロージングできなければ少なくともその件は売上にならず、せっかく積み重ねてきた商談の意味がなくなってしまうでしょう。
Q.成約率を上げるためのポイントは?
A.まずはBANT情報をできるだけ早く押さえましょう。商談の確度が大きく変わります。購入しない理由を1つずつなくしながら、顧客の契約意思をはっきり確認し、クロージングのタイミングを見極めることが大切です。人間心理を意識してあらゆるテクニックを駆使していきましょう。
Q.商談までの準備はどのように進めればよいか?
A.見込み顧客を数多く確保するために、中間層に対して重点的に営業を行いましょう。自社の顧客として(購入意欲を)育てていくために、メルマガ配信やホワイトペーパーの配布なども効果的です。各種ツールを使って顧客情報を集め、精査したうえで正しいターゲットにアプローチできる準備を整えていきましょう。
この記事を読んだ方におすすめ
・商習慣の激変で営業はどうなる?未来の処方箋
・リモート商談はこうすれば売れはじめる!ニューノーマル時代、セールスの勝ちパターンはこう変わる! 営業がコンテンツ作りに精を出すべき理由
・デキるTOP営業の必須スキルを徹底解説!