コロナ禍が長期化しており、2021年1月は2度目の緊急事態宣言で始まりました。
7割の企業のテレワーク移行が推奨されていることや、一度なにかの便利さに慣れたユーザーがわざわざ不便なものに戻る場面は限定的と考えられるため、これまで様子を見ていた地方・中小企業もテレワークの導入を検討する段階に来ていると言えます。
そこで、今回は「事例に見るテレワーク導入までの7ステップ!すぐわかる導入のポイントを解説」と題し、詳しく解説します。
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テレワーク導入の成功事例
まず、既にテレワークを導入している成功事例として、代表的な3社を紹介します。
サイボウズの事例
サイボウズ株式会社では、快適で安全なテレワークが継続されています。
同社は、2010年に全社員を対象に「月4回までの在宅勤務」というルールで試験的にテレワークを導入し、2ヶ月足らずで中間評価をおこなったところ、成果の判断や勤怠管理、情報漏えいのリスクやモラルの低下などの課題が明らかになりました。
そこで、働く場所や時間を自由化し、働き方を9つの分類から選べる「ウルトラワーク制度」を導入しました。さらに、同制度に対する不安な声を吸収し、2013年に当日でも働く場所や時間の変更を可能とし、2018年には100人が100通りの働き方をする「働き方宣言制度」が導入されました。
カルビーの事例
カルビー株式会社では、テレワークを利用することで無理なく営業を継続でき、業務効率が上がったという従業員の声が多く寄せられています。
同社は、2007年に本社の一部門にフリーアドレス制を導入してIT環境を整備、2010年に本社全部門に対象を広げ、翌年に営業職の直行直帰を定着させました。2013年にテレワークが本社・東京支店にテスト導入され、翌年、正式に全社に導入されました。
ワーク・ライフ・バランスの重視も視野に入れたことにより、育児休業を取得していた女性従業員の復帰時期も早まり、営業職も直行直帰型スタイルでテレワークを全面的に活用しています。
日本マイクロソフトの事例
日本マイクロソフト株式会社では、2015年より全社員がテレワークの対象となりました。
2011年の東日本大震災を契機に「全社一斉テレワーク」に関する取り組みが実施され、全社員のテレワークを目指してシステム全体の設計・構築・運用がおこなわれました。
その結果、ワーク・ライフ・バランスの満足度は全社スコアで40ポイント上昇し、社員の94パーセントがテレワークを「必要である」と回答しています。
テレワーク導入までのステップ
3社の事例からもわかるように、テレワークを最初から全社に導入して完璧にうまく運用しきることは難しいでしょう。段階的にステップを踏み、リスクを減らすことが大切です。
現在のコロナ禍でもスムーズに移行できるよう、テレワーク導入までのステップについて説明します。
試験導入する部署を決める
まず、試験導入する部署を決めるとよいでしょう。テレワークでも作業しやすく、成果物の品質が低下しない部署が理想的です。
試験段階では必要最低限の環境を整え、作業開始や終了の報告を徹底させたり、テレワーク勤務のスケジュールを把握したり、残業を禁止して様子を見たりする必要があります。
ある程度の負荷をかけても従来と同じように作業ができ、中間評価しやすい部署を候補として検討しましょう。
勤怠管理の方法を決める
次に、勤怠管理方法を決めましょう。
テレワークでは、オフィスで働く時と違って、従業員の勤怠管理を直接おこなうことができませんので、体調管理を含めたフォローが必要になります。業務開始・終了時間、休憩時間の報告方法などを検討するとよいでしょう。
テレワーク時の就業ルールを定める
テレワーク導入時には、就業ルールを定めることも大切です。
コロナ禍でテレワークの導入を考えている企業では、テレワークに関する就業ルールが定められていないことが多いでしょう。出社時のルールやフレックスタイム制などについて検討する必要があります。
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評価基準・方法を定める
テレワーク導入時には、評価基準・方法を定めることも重要です。
オフィスでの作業は、従業員が属する部署の管理職や上司・先輩が、その勤務態度や作業状況を目視できていました。ところが、テレワークでは、直接把握できないため、これまでとは異なる評価基準や方法を新たに定めなければなりません。
同じ作業をしてもテレワークとオフィス勤務とで評価に差があるようでは、従業員の働くモチベーションは下がってしまいます。自社の従業員が気持ちよく働けるよう、テレワークでの評価基準や方法をしっかり検討しましょう。
便利なツールを導入する
テレワークに、便利なツールを導入することも忘れてはなりません。
これまでも、一部の従業員が自宅に仕事を持ち帰ることはあったかもしれませんが、本格的にテレワークを導入する際には、すべての社員がなるべくオフィスと同じように作業できる環境を整える必要があります。
そのために、意思の疎通ができたり、情報を共有したりするためのツールが必要になります。機密情報を自宅で取り扱う可能性もあるため、情報漏えいなどのリスクを回避するためのツールの導入も重要です。
どの部署に、どんなツールを導入すべきかを事前に検討しましょう。オススメの便利ツールは後ほど詳しくご紹介します。
試験導入を振り返って改善点を見つける
試験導入後は、その結果を振り返って改善点を見つけましょう。
最初からすべてがうまくいく可能性は高くありません。後で大きなトラブルにならないようにするためにもPDCAを回し、改善を継続していくことが大切です。
他の部署に広げる
課題を改善し、テレワークがスムーズに運用できる段階になったら、ほかの部署に導入を広げていきましょう。なかには導入しづらい部署もありますが、そもそもテレワークは多様性を認め合い協働するためのワークスタイルですから、部署ごとに適した形で導入すればいいのです。
ただし、スケジュールや顧客情報など、部署を横断して共有した方がよいものもありますので、部署ごとに分けることと共有すべきことを整理し、ほかの部署に広げていきましょう。
テレワークに便利なツール
テレワークを導入する際に、便利なツールを紹介します。
自宅などでオフィスと同じように作業するには環境を整える必要があります。ただ、全従業員が共有できるツールもある一方で、部署ごとに便利なツールが異なる場合もあります。
業種や職種に限らず便利なツール
業種や職種に限らず便利に使えるツールは、主に4つあります。
勤怠管理ツール
1つ目は、ジョブカンやKING OF TIMEなどの勤怠管理ツールです。
企業は、従業員が労働基準法で定められている労働時間を超過しないよう、時間を管理しなければなりません。しかし、テレワークでは、タイムカードや出勤簿で勤怠を管理することができなくなります。
そこで、従業員の勤怠状況を把握し、労務などの管理部門が管理しやすくする勤怠管理ツールを活用しましょう。
このツールは、チャットツールなどと連動しているものや、ICカードをかざす際やLINEが既読になる際に打刻されるものなど、いくつかタイプがあります。時間の管理だけでなく、給与支給に関する管理と連動できるものもありますので、自社に合うツールを検討するとよいでしょう。
社内チャットツール
2つ目は、slackやチャットワークなどの社内チャットツールです。
テレワーク導入時の懸念として、従業員同士のコミュニケーションに関する問題があります。
オフィスでは、聞きたいことがあればすぐに周囲の人に確認することができますが、遠隔で作業するテレワークでは、コミュニケーションを円滑に図るためのツールが必要です。話しかけるタイミングが図りずらいため、お互いの作業状況を把握しておいた方がよいこともあるでしょう。
社内チャットツールがあれば、1対1でのコミュニケーションに加えて、部署やチームごとのグループ作成によって複数の従業員とリアルタイムでやり取りできます。また、従業員の在席状況やステータスなども確認できます。
プロジェクト管理ツール
3つ目は、backlogなどのプロジェクト管理ツールです。
管理職やプロジェクトリーダーが、部署やチーム内の作業状況を管理する際に非常に便利です。プロジェクトの期限や納期を確認して誰にどの作業を割り振り、どの時点で完了とするかを管理でき、ほかの従業員も情報を共有できるため、作業全体をスムーズに進められます。
また、部署やチーム全体が、プロジェクト完了までの各作業の進捗状況を確認できるため、事前に起こりそうなリスクを予測して回避できるメリットもあります。
ファイル共有ツール
4つ目は、Dropboxなどのファイル共有ツールです。これは「情報共有ツール」とも呼ばれ、容量の大きいファイルや部署やチームごとに共有したいファイルを管理できます。
ファイル共有ツールがあれば、セキュリティも強化されます。従業員の誰かが情報を得られていない、ということにもなりません。ツールによって、自動的にバックアップできるものやユーザー数が無制限のもの、セキュリティに特化しているものなどがありますので、自社に合ったものを選びましょう。
営業で便利なツール
営業活動に特化した便利なツールもあります。営業職は外回りの多い業種ですが、必要なツールさえ揃っていれば、テレワークに移行しても結果を出しやすい職種です。
オンライン会議ツール
1つ目は、bellFaceなどのオンライン営業ツールです。
オンライン会議ツールは、離れている場所から音声やビデオなどの通信によってコミュニケーションを図る「オンライン会議」に使用するものです。音声やビデオで通信しながらチャットしたり、参加者がパソコン画面を共有したり、ファイルの送受信ができるものもあり、無料のものと有料のものがあります。
非対面での商談を進める際、営業にとっては必要不可欠なツールと言えるでしょう。
しかし、使用前にツールのインストールが必要となることが多く、経験の少ないクライアントの場合は、商談前にツールをインストールし、操作方法の説明に時間を要することもあります。そこで、接続の仕方がシンプルで、ネットの通信環境が不調でも会話が途切れることのない、bellFaceなどのオンライン会議用ツールの導入を検討しましょう。
SFA(営業支援システム)
2つ目は、Salesforceなどの「SFA(営業支援システム)」です。
このツールは、商談事例などから営業の関連情報を科学的・自動的にデータ化し、営業の生産性や業務の効率化を図るものです。
顧客データを管理して売上などを可視化させたり、日報の作成・管理や見積書・請求書等の帳簿類の作成など、営業に特化したシステムが搭載されているため、商談ごとに次にどうアクションすべきか、セールスのタイミングはいつか、などを把握できます。
また、これまでの営業活動の情報を管理・共有できるため、情報を分析して営業ノウハウを生み出せば、自社の営業スキル向上にもつながるでしょう。
電子契約ツール
3つ目は、クラウドサインなどの電子契約ツールです。
オンライン上で押印して契約を取り交わすためのツールで、コロナ禍によって政府が「脱判子」を宣言したため、今後さらに必要性が高まると予想されます。
従来の紙ベースの契約書では、日付や押印で契約日や契約者を明示して本人・原本であることを証明していましたが、電子契約は、押印や署名に匹敵する電子署名と消印の役割をするタイムスタンプを組み合わせて、契約書の本人性や原本性を証明します。
なお、ツールによって、ファイル形式やアカウント数、送信料などに特徴がありますので、自社に適したツールを選びましょう。
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テレワークをスムーズに導入するためのポイント
ここで、テレワークをスムーズに導入するためのポイントを説明します。
就業規則や福利厚生にテレワークに関する条項を盛り込み、必要なツールを整えるだけでは十分ではありません。テレワークに移行した後も従業員の作業効率を高め、組織全体の生産性を上げるために、企業が率先してすべきことが3つあります。
ルールや評価基準を社内に周知させること
1つ目は、ルールや評価基準を社内に周知させることです。
全従業員が均等にルールや評価基準を認識していなければ、働くモチベーションは低下し、会社に不信感を抱くことになりかねません。試験導入の結果をふまえたうえでテレワークのルールや評価基準を決定したら、社内での周知を徹底しましょう。
上司が積極的にテレワークを活用すること
2つ目は、上司が積極的にテレワークを活用することです。
フレックスタイム制度やリフレッシュ休暇など、組織が何か新しい試みを始めようとする際は、上司や管理職が積極的に活用し、従業員が利用しやすくする必要があります。テレワークはオフィスから離れて作業することもあり、入社して間もない社員は、上長と離れて作業することに不安を感じているかもしれませんし、自分の業務にどう影響するかをイメージ出来ずに踏み出せない、という従業員もいるでしょう。
そんな不安を払拭するためにも、上司や管理職が積極的に活用し、業務を問題なく進められることを自ら示す姿勢が大切です。
積極的にツールを活用すること
3つ目は、各部署やチームに合ったツールを積極的に活用することです。
部署やチームを特定せずに従業員全員が共有した方がよいものもあれば、オンライン営業ツールのように、特定の部署でより効果を発揮するものもあります。どの部署にどのツールを導入するのかをよく吟味して環境を整え、それらを駆使して社内の労働生産性を高めていきましょう。
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Q&A
最後に、本記事の内容をおさらいしましょう。
Q.テレワークを導入する手順はどのような流れか?
テレワークの手順としては、おもに4つの流れがあります。
- 部署やチームを決定して試験導入する。
- 中間評価をおこなって課題点を明確にする。
- 改善策をふまえて導入を再開する。
- 導入部署を広げる。
Q.テレワークで便利なツールには何があるか?
テレワークで便利なツールには、部署やチームを特定しないものと、営業などの職種に特化したものの2種類あります。
部署やチームを選ばず使えるツールは、おもに下記の4つです。
- 勤怠管理ツール
- 社内チャットツール
- プロジェクト管理ツール
- ファイル共有ツール
また、営業に便利なツールには、下記の3つがあります。
- オンライン会議ツール
- SFA(営業支援システム)
- 電子契約ツール
Q.テレワーク導入の際のポイントは?
テレワーク導入の際のポイントは、下記の3つです。
- ルールや評価基準を従業員に徹底して周知する。
- 上司や管理職が率先してテレワークを利用する。
- 自社にあったツールを選んで積極的に活用する。
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