営業の属人化は何故起きるのか?課題点と解消法を事例から解説

企業の営業部門には、常に高成績をあげる人となかなか成績をあげられない人がいますが、組織にとっては皆が一定の基準以上の成績をあげることが最良でしょう。

営業のテクニックは人によってさまざまで、顧客へのアプローチ方法も各担当者に任せられてきました。そのため、一人の優秀な営業職に頼りきりになってしまう事態が起こります。

この記事では、そんな「営業の属人化」が持つ課題とその解消方法についてご説明します。

営業の属人化が招くリスク

営業の属人化が招くリスク
営業の属人化には、どのようなリスクがあるのでしょうか。ここでは、起こり得る問題点についてご紹介します。

営業ノウハウが残らない

営業担当者は顧客に対して、個々にさまざまな働きかけを行います。

しかし、チーム内で属人化が起こっていると、打ち合わせやメールでのやりとりなどといった優秀な担当者の営業ノウハウが、ほかの担当者に伝わりません。「成果の出る営業活動」を分析して課題を洗い出し、チーム全体の成果につなげることも不可能です。また、新人や若手に引き継ぎたい営業ノウハウも共有できません。

担当者の退職や社内異動に伴うトラブル発生

営業の属人化が起こっている組織では、特定の担当者に大口の顧客が集中していたり、その担当者でなければ連絡のとれない顧客があったりすることがあるでしょう。

担当者が異動・退職した場合、ほかの担当者には顧客情報やこれまでのやりとりがわからず、トラブルが発生してしまうこともあります。対応によっては大事な顧客を失いかねず、大きな損失となってしまいます。

新人教育に時間が掛かる

営業職における新人教育では、商品知識や基本的な営業手法を学ぶことはもちろん、顧客の悩みや抱えている課題を聞き出すヒアリング能力や、そのニーズに合った自社の製品を適切なタイミングで提案し契約に結びつけるスキルを伸ばすトレーニングも必要です。そのためには、ベテラン社員がロールプレイなどを通じてノウハウを伝えていくことが大切でしょう。

しかし、属人化している組織ではチームでそもそもノウハウが共有されておらず、伝えることが困難です。その結果、新人に対して適切な教育が行えず、支障が出る可能性があります。

チームとしての営業力が向上しない

営業部では、一人の優秀な担当者がチーム全体の成績を左右しているケースがよく聞かれます。その担当者の営業力が属人化している場合、たった一人が抜けるだけでチーム全体の成績が落ちかねません。優秀な担当者にばかり業務が集中し、ほかのメンバーの能力を向上させる機会が減ってしまうのは、大きなリスクをはらみます。

「絶大な営業力をもった営業部長と愉快な仲間たち」のような状態では、チームとしての力が高いとは言えません。営業部長が昇進昇格して現場を外れた瞬間売り上げが激減するようでは、とても安心して後を任せることはできないはずです。

営業の属人化が起こる理由

営業の属人化が起こる理由
ここまで営業の属人化によって起こる問題点についてご紹介しましたが、そもそも属人化はどうして起こるのでしょうか。以下ではその理由を解説します。

部署内での立場を守りたい

組織の中では、成果をあげた人が評価されるのが一般的です。営業職は特に成果が数字となって表れるため、ほかのメンバーと比べられやすく、営業成績の良い担当者は、チームのなかでも優位な立場にいることが多いでしょう。

裏を返せば、自分の営業ノウハウを公開することによってほかのメンバーの成績があがり、現在の立場が危うくなるかもしれません。

そのため、人によっては自分のノウハウを明らかにしたくない、という気持ちが働きます。特に、給与や賞与を相対的な評価で定めている職場ではそう考える人が多いでしょう。

ミスを隠したい

チーム全体の営業力を向上させたい場合、それぞれの営業プロセスを共有し、課題を見つけ出して改善していくことが有効です。

しかし、共有するということは、成功例だけではなく失敗例もチーム全体に公開されてしまうということになります。失敗例も課題と解決法の検討には必要なことですが、ミスを知られたくない、という思いは誰もが抱くことでしょう。このような思いも、情報の共有が進まない一因です。

目の前の業務で手一杯

営業担当者は、一つの顧客に対して顧客情報の収集や提案のための資料作り、打ち合わせ、メールなどでの連絡など、さまざまな業務をおこなっています。一続きの業務であるため、一部の仕事を切り取ってほかの人に担当してもらうことは難しく、担当する顧客が多いほど業務が増えていきます。

そのため、目の前の業務で手一杯となり、情報の共有をする作業まで手が回らない、ということも考えられます。

仕組み化ができていない

企業によっては、営業の属人化を問題視せず、むしろ営業担当者が個々に活動することを推進している場合もあります。個人能力や働きも重要ですが、個人プレイヤーの集合体のような環境の組織では、属人化を防ぐことはできません。

営業の属人化を解消するための方法

営業の属人化を解消するための方法
これまで説明してきたように、営業の属人化を防ぐには営業活動における情報の共有がポイントとなります。なかなか成果のあがらない担当者の営業力を引き上げ、チーム全体の営業力向上につなげるには、成果を出している担当者のノウハウを知り、まねをすることが一番の近道です。

では、そのためにはどのような取り組みが必要なのでしょうか。

デジタル化を含めた営業フローの見直し

営業活動の方法は人それぞれでも、営業の業務にはそれぞれの企業で培われた基本の流れがあるでしょう。その業務の流れを細分化して、情報として記録し共有することで、効率的かつ効果的な方法が見えてきます。

しかし、業務の情報は膨大であり、すべての業務について記録することは不可能です。そのため、まずは共有すべき情報について検討し、決定することが必要です。共有すべき情報の例としては、以下が挙げられます。

  • 顧客管理:取引先企業と担当者の情報、商談の履歴、進捗状況など
  • 目標管理:チームの目標、個人の目標、それぞれの進捗や達成度合いなど
  • 案件管理:取引先、商談日、営業担当者、商材、商談に至った経緯、商談内容、受注の見込度、受注予定日、売上見込額、営業の行動履歴など
  • 行動管理:営業担当者の行動内容、行動の段階、改善の施策と結果、使用した資料など

これらの情報を収集・管理するには、忙しい営業担当者が手間をかけずに記録できる方法が必要です。そうでなければ記録することが負担になってしまい、せっかくの対策が長続きしない可能性があります。

そうした経緯から、顧客関係情報をデジタル化し一元管理できるツール(CRM)を取り入れる企業が増えています。

たとえば、総合的な顧客管理のツールとして、セールスフォース・ドットコムが提供する「Salesforce」があります。それぞれの顧客に合わせたマーケティングから営業、取引、購入後のサービスまでの一連の業務を管理でき、さまざまな端末から利用できるため、営業担当者の負担を減らすことができます。また、情報管理の自動化と得られたデータの分析によって、見込み客の獲得数や成約率が上がります。

また、ベルフェイス株式会社が提供する「bellFace」では、オンライン営業ツールとして、インターネットに詳しくない人でも使用しやすいオンライン通話機能と商談の記録が行える機能などがあり、Salesforceとの連携機能も備えています。

これらのツールの導入は、顧客関係情報の一元管理を通して、その先の大目標である営業の「脱属人化」を実現します。チーム内でのスムーズな情報共有を達成すれば、属人化した営業組織を改革することができるでしょう

マネジメントの見直し

近年では、営業のマネジメントとして、KPI(重要業績評価指標)が有効であるとする考え方が広がっています。KPIによるマネジメントとは、業務を数値化して、設定した目標を達成するにはどの業務の数値をどのくらい上げれば良いかを指標で管理する方法です。

たとえば、「1ヶ月に5件の新規受注をするために1日に20件の見込み客に連絡する」など、具体的な数値目標を立てます。このように、ただ営業担当者に発破をかけるのではなく、数値によって目標を見える化したほうが、担当者には営業活動のどこに力を入れたら良いのか把握できます。そして、管理者はこの数値を根拠に指導や指示を行うことができるのです。

とはいえ、商品の利益率など、営業部門では動かすことのできない数値は、設定しても意味がありません。KPIを設定する業務については、下記のような例があります。

  • 成約が見込める営業機会(訪問や連絡)数
  • 見込み客の成約率
  • 営業担当者それぞれが持っている案件数
  • 顧客単価
  • 営業機会から受注に至るまでの期間

また、成果の出る営業活動を型化して示すことも有効です。業務をできるだけ細かく具体的に決まった型として指示することで、営業活動の方法に悩んでいる新人や経験の浅い若手が、最低限やるべきことを逃さず行うことができます。
ここで注意が必要なのは、KPIも「型」の設定も、それぞれの企業によって異なるものだということです。自社が扱う商品や顧客の層などに合わせて、臨機応変に変えていく必要があります。

組織体制の見直し

さて、属人化をなくして情報を共有し、チームの営業力を底上げする方法として、CRMの導入やKPI管理などをご紹介しました。これによって、より効率的な営業職の働き方として、雇用にも変化が起こるでしょう。

これまで日本では、「メンバーシップ型雇用」と呼ばれる終身雇用制度が主体となっていました。一人の社員を新人から教育し、さまざまな業務を経験させて、多くの業務ができ組織の中で会社を支える人材を育てる方針です。

一方、一部の業種では、人材を募集する段階で仕事内容や必要なスキル、達成すべき目標や労働条件などを具体的に「ジョブディスクリプション(以降、職務記述書)」という書類にして、それに合った人材を採用する「ジョブ型雇用」という形がとられています。

この「ジョブ型雇用」は、技術者やクリエイターなどに限ったことではなく、営業部門にも応用可能です。担当者によって、それぞれの業務の得手不得手があるでしょう。すべての流れを一人で担当すると、負担が大きく業務の効率が落ちる可能性もあります。

この点、「ジョブ型雇用」であれば、CRMの導入時に細分化した業務をそれぞれ専門に行う人材を採用し、任せることができます。また、職務記述書に記載する内容も、KPI管理ならば数値で具体的に示すことができるのです。

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何よりも重要なのは「経営者の覚悟」

何よりも重要なのは「経営者の覚悟」
営業の属人化を解消するには、成果の出せる営業担当者のノウハウをチームで共有することが大切です。そのためには、担当者の意識改革だけではなく、営業関係情報を一元的に管理できるツールの導入やマネジメントの方針変更など、管理者側の意識改革も必要です

前述したような「ジョブ型雇用」を取り入れるなど、会社全体の人材育成、人材確保の方針変更も自然と視野に入ってくるでしょう。会社にとっては大きな指針変更になり得ますが、まずはトップである経営者が、風通しの良い社風と合理的判断を行える組織を目指して、「変わる覚悟」を持って取り組むことが重要です。

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Q&A

営業の属人化について、そのデメリットや原因、対応策について解説しました。最後に記事の内容をQ&A形式でおさらいしてみましょう。

Q.営業の属人化は企業にとってどのようなリスクがあるか?

営業が属人化していると、一人の優秀な営業担当者に業務が集中し、その仕事内容がほかの人には見えない状況になります。そのため、「その人がいなければできないこと」が多くなり、異動や退職などによってその人がいなくなったときに、顧客とのコミュニケーションがうまくいかず、トラブルに発展してしまう場合があります。

また、その人がおこなっている営業活動がチームに共有されることがないため、新人や若手、成果のあげられない担当者などにとって参考となる「効果的な営業ノウハウ」が残りません。

Q.営業の属人化が起こる理由は?

A.成果をあげている営業担当者は、チームのなかでも高く評価されています。しかし、自分の営業ノウハウを公開してしまうとほかのメンバーも成果をあげるようになり、優位だった自分の立場が下がってしまうため、ノウハウを秘密にしようとします。

また、営業関係情報をチームで共有する、ということはミスも共有されてしまうということですから、隠したい、という気持ちも働きがちです。

ほかにも、仕事が集中しすぎて忙しく、単に情報公開をするための時間がない、という場合もあります。

Q.営業の属人化を解消させるために何をすべきか?

A.まず、属人化している業務の内容をチーム内で共有しましょう。そのためには、業務を細分化し、いつ、なにを、どのように行ったのか、を具体的な情報として記録することが有効です。記録する際には、共有する必要のある情報、かつ管理方法をよく検討することが大切です。

営業関係情報の管理には、専用ツール(CRM)の導入がおすすめです。CRMでは、業務の記録をデジタル化し、一元管理することができます。

また、マネジメントにKPI管理を取り入れることも有効です。業務を数値化し目標を設定することで、それぞれの営業担当者の業務の進捗などが把握しやすくなります。

Q.営業の属人化を防ぐのにもっとも重要なことは何か?

A.改革を現場の営業担当者に任せるのではなく、経営者が覚悟を持って判断し、営業担当者が情報共有しやすい環境づくりに取り組むことが重要です。

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