【Kaizen Platform須藤氏に聞く①】BtoB企業のDXはどう進む? エンタープライズ営業はどう「THE MODEL」化すべき?セールスの新常識への疑問をぶつけてみた

2020年12月、これからのDXについてまとめた160ページ超に及ぶホワイトペーパー『DX白書』が公開されました。このホワイトペーパーは公開とともに、SNSを中心に大きな話題に。

その公開記念noteとして「BtoBビジネスのDXの勘所」という投稿があります。

この投稿で須藤さんは「『全員インサイドセールスになったら顧客に対して満足な価値提供が出来ているか?』と問われると、必ずしもそうではない」と書いています。ではBtoB企業はどのようにDXを推進すればいいのでしょうか。須藤さんに、BtoB企業が行うべきDXについてお話を伺いました。

そもそもインサイドセールスとはなにか確認したい方はこちら

株式会社KaizenPlatform
代表取締役 須藤 憲司さん

2003年株式会社リクルートホールディングス⼊社後、マーケティング部⾨、新規事業開発部⾨を経て、リクルートマーケティングパートナーズ最年少執⾏役員(当時)として活躍。2013年にKaizen Platformを⽶国で創業。著書に『90日で成果をだす DX(デジタルトランスフォーメーション)入門』(日本経済新聞出版)、『ハック思考〜最短最速で世界が変わる方法論〜』(NewsPicks Book)

「THE MODEL」に向いていない商材とはなにか

――BtoB企業のDXには、どのような課題があるとお考えですか。

須藤:昨今、BtoB企業の多くが「THE MODEL」型のセールス方法を取り入れています。しかし業態によっては非対面、オンラインで展開するインサイドセールスに向いていない企業もあることを念頭に置いておいたほうが良いでしょう。

「THE MODEL」に向いているのは、コロナ禍で大きく伸びたベルフェイスをはじめとしたSaaS系商材を扱う企業です。こうした企業はソフトウェアというパッケージ型の有形商材を販売しているため、機能を説明しやすく、予算の確保や導入イメージも伝えやすい。「THE MODEL」のような分業型の組織体制を取り入れやすく、インサイドセールスをしやすいのが特徴です。

一方、同じBtoB企業でもSI(システムインテグレーター)や広告会社、金型の製造といったカスタマイズ型の無形商材を扱う企業は「THE MODEL」に向いていません。商材がパッケージ化されておらず、顧客の要望を細かくヒアリングしてコンサルテーションしなければなりません。個社ごとに必要なサービスを仕立てあげなければならないすり合わせ型商材なので、「THE MODEL」を取り入れるには向いていないでしょう。

――なぜすり合わせ型商材は、「THE MODEL」に向いていないのですか?

須藤:商流が複雑だったり、意思決定権者がわかりにくかったりするからです。

広告制作を例に考えてみましょう。夏のテレビCMの出稿戦略について、宣伝部長は実施したいと言っているのに、社長は実施しないと言っている。あるいは商品企画の現場担当者としては、CMを実施しなければ販売目標が達成できないと思っている。

そんな風にクライアントの様々な関係者から情報を集め、空気を読みながら意思決定権者の意向を探るということを、インサイドセールスが非対面で行うのは非常に難易度が高い。これはフィールドセールスが行っても同じことで、すり合わせ型商材は、非常にオンラインセールスのしにくい領域です。

売り物か売り方を分解して、一部分だけDXする

――こうしたすりあわせ型の商材を営業している企業は、どのように営業のDXを行えばいいでしょうか?

須藤:「売り物」か「売り方」のどちらかをDXする必要があるでしょう。

まず、「売り物」をDXするためには、すり合わせ型商材の中にSaaS的な商品を盛り込んでみたり、パッケージ型のメニューをつくってみたりするといいでしょう。

もう一つは、営業プロセスの一部分にオンライン営業を取り入れること。例えば人材派遣会社の場合、派遣して欲しい人材の要件を細かくすり合わせる必要があるため、実はすり合わせ型商材なんです。

DXについて講演する須藤氏の写真

須藤:これまで人材派遣のファーストアプローチは、飛び込み営業が主流でした。しかしいまは飛び込み営業はほとんどできません。そこでインターネット上でリードを獲得し、インバウンドまたはアウトバウンドで架電して人材要件を引き出して「では担当営業をつけますね」と言って、フィールドセールスにトスアップする。

リード獲得というのは型化しやすい部分ですから、このプロセスのみパッケージ化し、DXしてしまう。このように、「売り物」か「売り方」のどちらかをパッケージ化する必要があるでしょう。

――エンタープライズ向けの商材も営業のDXはできますか?

須藤:できると思います。エンタープライズ企業にセールスするときのポイントは、「大企業のなかに、たくさんの中小企業がある」と考えること。

大企業の中には本当に多くの部署があって、部署ごとに必要な商材や決裁プロセスも異なります。一見これは複雑に見えますが、一つひとつの部署を、支社や企業だと捉えればいいのです。

エンタープライズ営業について話す須藤氏

撮影/森川亮太 (箕輪編集室)

それにエンタープライズ向け商材のなかでも、小さくはじめられる(少額の商談からはじめられる)商材って意外とあるんですよ。そういう少額の商材で営業一部と商談をし、それを成立させたら次は営業二部、営業三部と少しずつ勢力を広げていけばいい。隣の会社に商談するかのように、隣の部署に営業すればいいんです。

その一方で、組織横断型で全社的に導入しなければならないセキュリティソフトや人事ソフトなどのソリューションを扱っている場合は、担当部署に営業を仕掛けながらその会社全体に自社の商材の良さを伝える取り組みが必要になります。

啓蒙活動と諜報活動でエンタープライズ営業をDXせよ

――――当該部署に営業しながら、全社に商材の良さを波及させるためには、何から取り組めばいいですか?

須藤:啓蒙活動と諜報活動です。

営業活動って、大きく分けると2つのファンクションからできているんですよ。一つは啓蒙活動。つまりエンタープライズ企業の社内に対して、社内セミナーをしたり、お試しで使ってもらったりするなどして、「これからは新しいことを始めないといけませんよ」と、自社商材の必要性を啓蒙し、布教する。こうしたセミナーを非対面・非接触のオンライン会議ツールで開催すればいいんです。

すると、これまでとは比べ物にならない多くの人数を集めることができるので、影響範囲を大きくできます。エンタープライズ営業について、DXするならまずここの部分です。

もう一つ重要なファンクションは、諜報活動です。いわゆるスパイ活動ですね。エンタープライズ営業では顧客組織にある課題や、何を求めているかを明らかにし、適切な提案をすることが重要になってきます。「須藤さん、うちの会社のことをうちの社員よりもよく知っていますね」と言われたら勝ち(笑)。つまり顧客の中に入り込んで、社内の情報をつかみにいかなければなりません。

コロナ禍では、こうした諜報活動が非常にやりにくくなりました。顧客とオンライン飲み会を開催したところで、なかなか顧客との距離が縮まるものではありません。

営業パーソン自らコンテンツを発信しよう

――すると、withコロナ時代はエンタープライズ企業の担当者と距離を縮め、真の課題を探り当てるのは難しいのでしょうか。

須藤:そうですね……いや、でも方法はあります。一つは、営業パーソン自身がひたすらコンテンツを世の中に発信していくこと。例えば僕の場合、SNSや自社コンテンツを活用してひたすら世の中にDXについて発信しています。

顧客がDXについて知りたいと思ったとき、僕にたどりついて問い合わせをしてくれる仕組みができあがっています。営業パーソン個人がコンテンツを発信し、問い合わせを受けられる状態をつくっておくことが重要です。

すると、旧知の仲でなくても見込み顧客からDMで問い合わせが来るようになる。つまりこれまで以上に、営業パーソン個人のセルフブランディングが非常に重要になってくるのです。そして顧客にとって気軽に相談できる存在になっておく必要がある。営業担当個人の「個の力」をどう高めるかがwithコロナ時代の営業のポイントだと思います。

営業パーソン自らのコンテンツ発信の重要性について話す須藤氏

撮影/森川亮太 (箕輪編集室)

――これからも、事態が収束するまで緊急事態宣言が出されたり、感染者数が少し減って出歩けるようになったりを繰り返すのではないかと思います。そのとき、営業の方法をどのように変えていけばいいと思いますか。

須藤:ステイホームを続けるしかない緊急事態宣言下では、まず布教活動に力を入れること。つまりコンテンツマーケティングを推進すべきです。外に出かけられないのは営業側だけでなく、顧客も同様。顧客自身も情報が入ってこなくなり困っているはずです。そのとき、情報を探している顧客の受け皿となるべきコンテンツを用意しておくこと。

ツイッターで発信してもいいですし、noteのようなブログツールで記事を書いてもいい。そこで発信したことが注目されて、業界のWebメディアに取材されることがあるかも知れない。あるいは読んだ顧客からDMが来ることだってあるかも知れません。とにかくコンテンツをつくりまくって巣ごもりし、顧客や見込み顧客との信頼関係を強化しておくべきです。

一方で、外に出歩けるようになったら今度は諜報活動に力を入れる番です。顧客のもとに出向いて情報収集し、信頼を構築するのです。そしてまたリモート環境になったら、いつでも気軽に相談に乗れる体制をつくっておく。

そんな風に、潜伏期と活動期を分け、戦略的に動けばいいのではないかと思います。

――最後に、2021年のBtoB営業におけるDXについて、どのように予測されているかお聞かせ願えますか。

須藤:引き続き、イベントや展示会をリアルで行うのは難しい状況が続くと思います。いまのステイホームな状況が、想定より長引くかも知れないと捉え直し、イベントや展示会に依存した営業活動から転換すべきではないかと思います。

いまの状態が長く続いても、売上に支障をきたさない状況をいかにつくるのか。それを考えはじめるときが来ています。

企業も営業パーソン個人も、社会に通用しなくなったアセットに見切りをつけ、これまで挑戦したことのなかった新しいアセットを手に入れるために試行錯誤しなければならないのではないでしょうか。

2021年2月9日公開
【Kaizen Platform須藤氏に聞く②】緊急事態に中小企業が取るべきビジネスモデルの大転換 はこちら

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