近年BtoBのSaaS業界を中心に、BDR(Business Development Representative)という言葉が少しずつ浸透してきています。
BDRはアウトバウンドコールを中心として、新規開拓型の営業を担う役割を指します。インサイドセールスの一種で、インバウンドリードに対して架電するSDRと対を成す概念です。
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様々なマーケティング手法が確立し、Web上から入った資料請求やお問い合わせに対して営業を行うインバウンド営業をメインで行う企業が増えていく中で、「今アウトバウンド?」と思う方もいらっしゃるかもしれませんが、アウトバウンドコールから始まるBDRは組織として成長していく中で必要になる役割です。
今回は、BDRとはどのような取り組みで、本メディア運営企業のベルフェイスでは具体的にどういう組織・フローでBDRをおこなっているのかをご紹介します。
ベルフェイス株式会社 マーケティング事業部 セールスグループ
淀丈洋
新卒で株式会社ぱどに入社。フリーペーパーの広告営業として、新人賞受賞など多数の実績出すも、かねてからの夢だったスポーツ業界へ転身しフットサル施設の立ち上げや運営を経験。その後OA商社を経て2017年11月にベルフェイスへジョイン。入社後はCSオンボーディングチームを立ち上げた後セールスへ異動。現在は大手企業へのアプローチから成約までを担うEnterpriseチームの立ち上げ・構築を担っている。
BDRとは
――まず基本的なところですが、BDRとはどういう取り組みなのでしょうか。
淀:社内で持っているリストをもとにアウトバウンドコールを行い、新規開拓型の営業を担う役割を指します。弊社でもそうなのですが、主に大手企業の新規開拓を担う営業組織を指すことが多いですね。Web上やオフラインイベントでお客様が興味を持ったところから始まる反響型のインバウンド営業とは逆で、こちらからアプローチしたい会社を見つけて、コンタクトを取るタイプの営業ですね。
――ベルフェイスではかつて「アウトバウンドチーム」があったり、インバウンドと統合したりを経て、今年の4月から淀さんがBDR専任として担当していますが、このタイミングでBDRを強化していこうとなった理由は何ですか?
淀:BDRのメリットはこちらからアプローチしたい企業にアプローチできる点にあります。インバウンド営業だと、マーケ施策としてなるべく狙いたい属性の企業をある程度狙うことはできたとしても、具体的に名指しして獲得していくのは限界があるため、そこが1番の違いです。
淀:弊社では、今年の4月頃に会社の事業フェーズ上受注単価を大きく取る施策をより一層強化していく方針になりました。従量課金制のサブスクリプションモデルのサービスを扱っているため、受注単価を上げるためには大企業に多く導入していただく必要があります。
しかし、これまでのインバウンドメインのマーケティング/営業では、どうしてもターゲティングしたい大企業のリードが多く取れなかったり、取れたとしても一部門のご担当者様からご連絡をいただくケースが多いため局所的な利用にとどまってしまうという課題感がありました。
そこで、4月から改めてBDRに力を入れることで、普段はアプローチできていない大企業で複数部門を統括されている執行役員の方などにコンタクトを取っていこうと考えました。
BDRの営業フロー
――BDRでの営業フローを教えてください
淀:弊社では、リスト作成→手紙送付→コール→商談→契約という流れでおこなっています。
――ではまずリスト作成からお伺いします。どのようにリストを作成されているのでしょうか。
淀:ツールでいうとFORCASを使っていますね。弊社の製品は営業パーソンが使うツールなので、なるべく営業職の方がたくさんいる会社にアプローチをすることが重要で、当初は単純な話で従業員数が一定以上の会社のリストを作成してアプローチしていました。
淀:ただ、いくつか実際に商談をしていく中で、業界の特性もわかるようになってきて、「この業界はうちのシステムがマッチしやすい」「この業界はたくさん営業パーソンを抱えている」といったこともわかってきたので、そういう絞り込み方もするようになりました。
昔ながらのやり方ではありますが、ネットサーフィンして特定業種の企業を見つけてリスト作成する、というやり方もやっています。
――リスト作成後は手紙送付とのことですが、このステップは必要なんでしょうか。
淀:もちろん製品や対象となる企業によって必要かどうかは異なりますが、弊社の場合この手紙施策は結構上手くいっています。大企業の役職者の方にいきなり電話でアプローチするのはかなりハードルが高く、営業電話の段階で取り次いでもらえないことが大半です。
淀:ただ、事前に手紙をお送りしていれば、「事前にこういう内容をお送りしておりまして」と話すこともできますし、手紙を開封して興味を持っていただいていることもあるため、アプローチしたい方に電話がつながる確率が高くなりました。
――デジタル化の波が来ているとはいえ、それだけで全ての方にアプローチできるわけではないですもんね。手紙でこだわっているポイントはありますか?
淀:やはり最初のコンタクトなので、IR情報などを見ながら1社1社内容をカスタマイズして提案書を作っています。ただの営業用のチラシだけだと「営業か…」と中身を見ずに捨ててしまう方もいらっしゃると思います。
その会社のビジョンや事業内容にも触れた上で、今回このようなご提案をしたいと考えています、といった内容を伝える手紙にしています。
淀:加えてどなたに送るかという点についてもかなり吟味をしています。その会社の事業と組織を調べた上で、
- 「この事業部であれば弊社製品を存分に活用していただけそう」
- 「この事業部にはおそらく多くの営業パーソンが必要なはず」
- 「この方はそれらの事業部を統括されている」
といった具合に、弊社製品へのニーズの大きさと抱えている営業パーソンの多さという軸で手紙をお送りする方を選定しています。
淀:後はちょっとしたTips(コツ)的なものなんですが、一時期は分厚いサービス紹介資料を入れていたりもしました。薄い封筒よりも分厚い封筒の方がただの営業チラシには見えないと思ったからです。
ただこれは今はやめています。というのも、詳細のサービス内容が書かれた資料をお送りすると、その資料で理解が完結してしまい、「このサービスは別に必要ではないな」と判断され商談につながらないケースが結構あったみたいなんです。
逆に簡単なサービス紹介用の1枚2枚程度の資料の方が、少し興味を持っていただいた段階でコールにつながり、商談まで至るケースが増えた、という発見がありましたね。
私1人でBDRを担っていた時は気づかなかったのですが、現在は専任のアポインターと2人チームなので、こういった手紙→コールというフローの最適化に関しても彼が色々気づき、改善していける組織になってきました。
――コールについては何か特別なことをされているのでしょうか。
淀:コールについてはインサイドセールス/SDRで心がけるべき様々なTipsはもちろんあるのですが、大企業向けのBDRという観点では、誰にアプローチするのかという点は一考の余地があります。
「誰が」というのはターゲットとしている執行役員の方などに直接コンタクトを取るのか、その秘書の方にコンタクトを取るのかです。
淀:私たちが現状持っている答えとしては、コールにかけられるリソースによるというものでして、私1人でアポイント獲得も商談も実施していた時は、コールにかけられる時間がかなり限られていたため、少ない時間で多くコンタクトを取れる秘書の方に電話をつないでもらっていました。
秘書の方であれば、その方から本人に伝言を依頼する形になるため、そこでうまく伝わらなかったり内容に齟齬が生まれてしまったりという課題もありはするのですが、秘書の方につながる可能性は高いため、何かしら接点を持つことは簡単になります。
一方で現在はアポ獲得の専任を設けており、コールリソースを確保できるようになったため、コンタクト率は下がるものの本人に直接つなげてもらうようにしているようです。
つながりさえすれば、何かしらヒアリングして魅力を伝えることでアポにつながるケースが増えていきます。このように自社のリソースやフェーズにあわせてコンタクト対象を変えると良いかもしれません。
――商談については通常と比べてリードタイムがかなり長くなると思うのですが、商談後どのように流れで受注に至るか教えてください。
淀:やはりリードタイムは通常の商談よりもかなり長くなりますね。2~3ヶ月は見ています。
最初に執行役員の方などにアプローチして商談を実施した場合、その方から前向きな回答をいただけたら大抵次は現場のマネージャーやメンバーに共有する場が設定されます。
2回目以降の商談では弊社のベルフェイスを使ってオンラインでもおこなったりしますが、そこからデモなどを繰り返し、関係者に一通り商材の魅力を伝えた上で契約につながっていくという流れですね。
KPIは3ヶ月単位の売上と当月の商談数
――今どのようなKPIでBDRに取り組んでいるのでしょうか
淀:まず最重要KPIとして3ヶ月単位での売上を追っています。通常営業は1ヶ月単位で売上を追っていきますが、私は大手企業様をターゲットとしてアウトバウンド営業を行っているので、上述の通りリードタイムが必然的に長くなります。
弊社製品はインバウンド営業であれば平均リードタイムはおそらく1ヶ月かからないくらいですが、BDRチームの平均は2~3ヶ月です。毎月の売上目標を作ってどうしようもない部分で焦ってしまうことがないように、目標自体も3ヶ月単位でいくらという形で追っています。
淀:サブKPIとして当月の商談数も目標として追っています。3ヶ月単位での売上のみだとアクションから先の長いKPIになってしまう部分があり、当月の行動に落ちづらい部分があります。
そのため、長期的にしっかり売りを立てていくためにも、毎月◯件商談数を設定しようという目標を立て、その商談を獲得できるようにリスト作成・手紙送付・コールを行っているという形になります。
――先程少し触れていましたが体制はどのようになっていますか?
淀:現状の体制は私ともう1人コール専任の担当者の2人でおこなっています。分担としては私がリストを作成した後に、手紙送付~コールをもう1人が行い、商談~契約までを引き続き私が行う流れです。
アポ獲得とクロージングを別担当者が行うのはBtoB SaaSの営業ではもはやよくある形ですよね。そこは分業しつつ、とはいえリスト作成に関しては実際の商談でどういうセグメントの反応がいいかを掴んでいる私がおこなった方がおそらく確度の高いリストを作れると考えているので、そこは私の方でおこなっています。
まとめ
いかがだったでしょうか。アウトバウンド営業はインバウンド営業に比べて難易度が高く、全然相手にされないことも多いため「大変」「辛い」などマイナスイメージを持っている方も多いとは思いますが、様々な工夫の余地があります。
今回は大企業をターゲットとしたBDRの取り組みでしたが、もし同様の組織を持っている(今後作る予定の)企業様がいらっしゃいましたら、ぜひ参考にしてみてください。
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