営業マネジメントにおいて一番難しいこととは、何だと思いますか。
毎月の成績管理、モチベーション維持、それとも離職率を抑えることでしょうか。営業マネージャーを経験された方であれば、誰もが直面した課題だと思います。このような課題を解決するヒントを、過去に200名以上の営業マンをマネジメントしてきた、弊社ベルフェイス株式会社の西山直樹に聞きました。
ベルフェイスでは、円滑なマネジメントを行うため、以下の2つを導入しています。
- 個々の強みを伸ばし、適切な人材配置をおこなう「ストレングスファインダー」
- 長期的なビジョンを共有し、動機付けをおこなう「Career&Missonシート」
現在、取締役セールス事業部長として、10名のメンバーを率いる西山。営業マネジメントの大切なポイントをたっぷりと語ってもらいました。
強みを発揮させる人材配置!ストレングスファインダー
ストレングスファインダーとは:
アメリカのギャラップ社が50年以上の研究をもとに開発した、オンライン診断ツール。Web上の177の質問に答えることで、34の資質の中から自分の強み上位5つを知ることができる。
ーーーー ストレングスファインダーを使う前は、どのような営業マネジメントをしていたのですか?
西山:ベルフェイスに入社する前の会社では、約60名のマネジメントをしていました。そのときは、ストレングスファインダーを使っておらず、メンバーを「自分が思う正解の型」にガチガチにはめていた気がします。今とは正反対の、超管理型マネジメントをしていたんです。
それでも一定の成果は出ていました。しかし、なかなか個人が意見を言える環境ではなく、いま思えば誰でも扱いやすいような、いわゆる「素直でまっすぐな人」しかついてきてくれなかったように思います。
また自分では、ある程度は部下に仕事を任せているつもりでしたが、振り返ると自分がコントロールしてやらせていただけ。今のベルフェイスのように、個人の強みを活かすという発想はありませんでした。
ーーーー では、ベルフェイスではどのようにストレングスファインダーを取り入れているのですか?
ベルフェイスでは、新入社員は出社日に、ストレングスファインダーの診断を受けます。そこで分かった5つの強みを、まずは自分で調べてきちんと把握します。
次に、その強みを活かして「こんな仕事がしたい」というのを整理して、文字にアウトプットしてもらいます。最後に、マネージャーも含めたチームでミーティングをおこない、それぞれの強みや、やりたいことを共有します。
ーーーー 弱点ではなく、強みを共有しあうのはなぜですか。
西山:まず、ベルフェイスの方針が「強みを活かしたマネジメント」なんです。これは営業だけに限りません。それぞれの強み・個性をチームで把握して、適切な人材配置をしていく。
僕個人も、弱点を直すより、強みを伸ばしたほうが成長が速いと考えています。小学校では、得意・苦手に関係なくすべての教科を勉強しますよね。それが高校に入ると、文系・理系など、得意な科目が選べるようになる。大学に入るとさらに専門化されます。
なので、社会人になって再び弱みに目を向けるより、強みを活かして仕事をすればいいと思っています。
ーーーー 西山さんが以前おこなっていた「超管理型」マネジメントとは、ずいぶん違いますよね。ストレングスファインダーを使ってどんなメリットを感じますか?
西山:個人の強みを理論的に知れることが、ストレングスファインダーを使うメリットだと思います。
実際、自分が思うメンバーの印象と、診断結果が一致してないことがちょくちょくあるんですよ。一見、素直な後輩キャラのメンバーが、実は自我が強いことがわかって、接し方を変えたりもしました。あまり先輩風を吹かすと、内心「うるさい」と思われてるかもしれませんし(笑)。
あと、強みと弱みは表裏一体だと、改めて気づかされました。以前は、個人の得意・不得意がわからなかったので、仕事が遅いメンバーにはイライラしていました。
でも、「こいつの強みは慎重さだな」と把握していれば、こちらも無理にスピードを求めすぎることはしません。そうすると他にはできない正確で高クオリティな仕事が出来たりするんですよね。
弱みではなく強みだと考えることで、一人ひとりの特性を受け入れられるようになりました。
ーーーー ちなみに、営業向きの特性ってあるんでしょうか。
西山:ひとことで営業といっても、仕事内容は多岐に渡るので、必ず合う分野があると思いますよ。僕の経験で言うと、「競争性、達成欲、規律性」が強い人は新規営業向き、「親密性、収集心」が強い人は既存営業向き、「アレンジ、戦略性、原点思考」が強い人は企画系が向いている傾向がありますね。
ーーーー 実際に、ストレングスファインダーを使って成功した例はありますか?
西山:たくさんありますが、ひとつ、営業未経験の新入社員が入ったときの例をお話します。
それまで、営業未経験者には、こちらがやることを決めて指示しがちでした。でも、その社員の強みが「アレンジ」と「戦略性」だったので、既存のフローを効率化するのに向いてるんじゃないかと思ったんです。そこで「営業フローで変えたほうがいい部分を見つけてほしい」とお願いして、新人でも意見を言いやすい環境を作りました。
そうして出てきた意見を元に、営業のカレンダー機能というものを作りました。それまでは、サイトに資料請求が来たら、全部に電話アポをとっていました。それを、資料請求するときにお客さん自身で、営業の空きスケジュールにアポイントを入れられるようにしたんです。
カレンダー機能ができたことで、こちらから電話しなくても全体の商談数の20%が自動で入ってくるようになり、かなりの時間削減になりました。
ーーーー まさに、チームで個人の強みを把握しているからこそ、できたことですね。新入社員でも意見が言いやすい環境というのは、どのように作るんでしょうか?
西山:それは、ベルフェイスが人事評価に使用している、Career&Missonシートが大きく関係しています。
将来のビジョンとリンクした動機付けができる
Career&Missonシートとは:
ベルフェイスの人事評価に使われている独自のシート。「誰が見ても評価に納得できるように」と作られた。図のようなフォーマットで、3つのパートに分かれている。
- 目標達成に向け個人に設定されるMy Mission:短期的な目標を数字で明確に表したもの
- メンバーの共通の価値観であるbellFace Value:コミュニケーション・ハイスピード・オーナーシップなど、これを持っている人がベルフェイスらしいという12の価値観。どのバリューをレベルアップするか、半期ごとに上長と相談の上、レベルアップを図りたい2つをピックアップする
- 目指すキャリアを実現する為のCareer Step:履歴書が充実し、個人のブランディングになる活動(資格取得など)を設定する
ーーーー Career&Missonシートを、どう人事評価に使っているのですか?
西山:①のMy Missionは一番重要なので、達成率によって月収が最大7万円上がります(My Missionを120%以上達成し、②のbellFace Valueも達成できたら最大で月収が7万円UPします)。③のCareerStepでは達成するためにかかった費用を10万円まで会社が負担します。
ベルフェイスがやっているのはストック型ビジネスなので、お客さんにきちんとインサイドセールスを広めていけば、毎年必ず売上は上がっていきます。だから成果をあげるメンバーにはそれに応じて、惜しみなく給与も上げていきたいと考えています。なので今もスタートアップとしては高い給与水準だと思いますよ。
ーーーー シートの目標が達成できれば月収が上がるというのは、わかりやすくていいですね。
そうなんです。でも、数字だけじゃない部分も、Career&Missonシートはサポートしてくれています。
営業って、毎月の目標とか、目の前の仕事に常に追われている感があるんですよ。でも、追われてばかりいると、だんだんやってることの意味が見いだせなくなる。
「自分は40歳になっても同じことをしてるんじゃないか」と不安になったり、目の前の数字にフォーカスしすぎて、将来のビジョンが描きづらいんです。前職時代、そうやって志半ばで辞めていく人を何人も見てきました。
Career&Missonシートでビジョンを明確にしていれば、数字が達成できなくて苦しい月や、やってることが楽しめない時期でも、長期的な目線が保てます。将来に向けて「今やるべきこと」を見失わずにすむんです。
ベルフェイスでは、毎月このCareer&Missonシートを元に、メンバーとマネージャーが話し合いをします。仕事だけじゃなく、プライベートな目標を書いてもいいんですよ。大事なのは、自分がどんな人生を歩いていきたいか、そのためにすべきことは何かを考えることなんです。
ーーーー 長期的な目標を共有することで、各メンバーのモチベーション管理にもつながるわけですね。
そうです。最近、成績がよかったメンバーに部下をつけたとたん、個人の売り上げが達成できなくなったんですよ。
もしこちらが数字しか追っていなければ、「目標達成がんばれよ」って言ってしまうところです。でも、そのメンバーの長期目標が「管理職になって組織マネジメントしたい」だったんですね。それが分かっていたので、あえて数字だけを追わせるのではなく、マネージャーとしての仕事をどんどん任せていきました。
それも、ふだんから話をしているから、できたことです。例え一時的に成績が落ちても、「将来に向けて期待している」と伝え、今の課題を乗り越えてもらいたいんです。
営業マネジメントの最重要ポイントは「適切な目標が設定できるか」
ーーーー お話を伺う中で、ベルフェイスの営業マネジメントのポイントは「強みを活かした適切な人材配置」と「将来につながるビジョンを共有すること」だと分かりました。ほかに、西山さん自身が心がけていることはありますか。
西山:僕が、営業マネジメントの中で一番難しく、かつ重要だと思うのは「個人への適切な目標の設定」です。本人が達成できるかできないかという、ギリギリラインの目標を置けるかどうか。営業の責任者として、力量が問われる部分だと思っています。
それと、世の中には色々なマネジメントの方法論がありますが、僕はかなりコミュニケーションを重視する派です。なので、メンバーとは最低でも月1回、全員と必ず飲みに行きます。一度に全員じゃなく、少人数に分けて何回か行きますよ。
こういうのは賛否両論あると思いますが、仕事の中だけでは見えてこない部分って沢山ありますよね。美味しいもの食べながら腹割って話せば、その人の新しい部分が見えてきたりもします。
そういう昭和的な接点も作りつつ、一方でストレングスファインダーでの理論的な分析も取り入れる。“昭和”と”理論”、双方の良さをバランスよく取り入れながら、日々マネジメントを行っています。
ーーーー 最後に、西山さんから見て、今後どのような営業が求められると思いますか。
そうですね。少し前までは、とにかく与えられた商品を売りまくる人が評価されていました。しかし今は、売るだけの人よりも、加えて「売れるサービスを設計できる人」が強い時代だと思っています。
今って、ネットを使えば即座に便利なサービスが見つかる。それだけ、お客さんのニーズも多様化しています。昔と違って、営業に相談する時点である程度、欲しい物のイメージが固まってる人が多いんですよ。だから、営業もただ売るだけじゃなくて、「もっとこんなサービスを付加すれば売れるんじゃないか」と考えられる人でないと活躍するのは難しいと思います。
ベルフェイスの場合は、インサイドセールスという「モノ」ではない商品を扱っていますが、製品メーカーでも同じだと思います。自社製品の形は変えられなくても、お客さんが欲しがっている物やサービスを、セットにして売ろうと考えられる人とか。
実際、僕たちが提供しているインサイドセールスシステム「ベルフェイス(bellface)」も、営業メンバーの意見を取り入れてどんどん進化しています。ただ、なんでもかんでもプラスすればいいというわけではありません。
ニーズをきちんと嗅ぎ分けて、本当に求められているものを追求した結果、使いやすいサービスになっていった。使いやすい商品というのは、営業にとってすごく売りやすいんですよ。
ベルフェイスでは、メンバー全員がサービスに揺るぎない自信を持っています。自社の製品・サービスが100%良いと言い切れるようにみんなで作っているから、営業にも強さが出るんです。
まとめ
西山の話から分かった、営業マネジメントを円滑に進めるポイントは、以下の3つです。
- メンバーの強みを把握し、適切な人材配置をおこなう
- 目の前の数字だけでなく、長期的な目標を設定し行動する
- 個人がギリギリ達成可能な目標を設定する
まずはメンバーの弱点ではなく、強みにフォーカスすること。従来のマネジメントでうまくいかないと感じているなら、今までとは違った視点を持つことが大切です。
ストレングスファインダーやCareer&Missonシートといったツールは、あなたをサポートしてくれるでしょう。今回のインタビューで得られた内容を、できるところから実践してみてください。
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