企業の売上を一手に担う営業部。そんな営業部の責任は当然大きく、難しい仕事です。
今回は、そんな営業部のよくある課題にフォーカスし、普段どのような課題を抱え、どのように解決することができるかについてご紹介します。
営業活動でありがちな3つの課題
営業の現場は、いつでもたくさんの課題を抱えています。その中から今回は3つご紹介します。
営業パーソン同士で能力差が生まれる
2人以上の営業職社員を抱える企業ならほぼ確実にこの課題は発生しているかと思います。営業とは人対人のコミュニケーション・交渉なので、どうしても力量に個人差は出ます。その結果営業一人ひとりによって受注率に大きな差が生まれます。
あなたが社内のトップ営業ではないのなら、トップ営業から営業ノウハウを盗み(吸収し)勉強するべきです。もしあなたや他のチームメンバーがトップ営業と同じ受注率を達成することができれば、会社の売上も大きく変わってくることでしょう。
営業部内のリソース不足
営業パーソンは常に忙しく、残業も多くなってしまいがちです。営業が暇な会社はサービスが売れていないということになるため、営業が忙しいのは会社が伸びている証拠といえばそうですが、もちろん営業職社員にだって家族はいますし趣味もあるわけですから、なるべく残業はしたくありません。
当たり前のことですが、営業部のリソース不足は2つの方法で解消できます。
- 人を採用する
- 生産性を上げる
1は新たに数百万単位の大きなコストがかかるため、なかなか動けない場合もあります。そんな時に2の方向で考えることが重要です。その際まずは、社内の営業パーソン(あなた)が何にどれだけの時間をかけているかを把握することから始めましょう。
営業職の1番重要な仕事はお客様と商談し、クロージングをして契約を獲得することです。しかし、リソース不足に悩む営業パーソンほど、それ以外の業務、たとえば社内ミーティング、書類作成、などに時間を大きくとられています。
何にどれだけ時間をかけているかを把握し、無駄な業務を減らすことで生産性を上げる必要があります。
提案力が足りない
営業パーソン自身に、顧客が自社の商品やサービスを購入すればどういったメリットがあるかを分かりやすく伝える提案力が足りないこともよくあります。
提案力は単に上手に説明ができることではありません。顧客のニーズに適った提案でなければ、説明自体が巧みであっても顧客の心に響かないでしょう。
優れた提案力の持ち主は、必ず提案の前に顧客の話に耳を傾けてニーズの把握に努めています。
リードタイムが長引く
リソース不足とも関連して、工数が足りなくなると営業のリードタイムが長引きます。スケジュールがパツパツになっていると、お客様のもとに訪問するのが来週・再来週と先送りされてしまうからです。
しかし、営業のリードタイムは短いに越したことがありません。リソース不足と同時に、リードタイムに関しても削れる部分がないかの確認が常に必要です。
チームでの営業体制が築けていない
営業パーソンは、自身の担当顧客と良い関係を築く必要がありますが、属人化した状態が続くと、顧客が困っている時に担当者以外の営業メンバーがサポートしづらい、営業担当者が辞めてしまうと顧客も離れてしまうなどのデメリットがあります。
また、チームでの営業体制が整っていないと、ベテラン社員の優れた営業ノウハウが部内に継承されないために新人教育に時間がかかったり、担当の異動や退職による引き継ぎがスムーズに進まなかったりなどのトラブルも発生しやすくなります。
営業はノルマがあるため、個人プレーになりがちではありますが、チームとしての営業体制を整えて営業活動における課題と改善策の共有行うことができれば、営業部門全体で効率的に業績アップを目指すことができます。
営業メンバーのモチベーションが保てない
営業メンバーのモチベーションが保てないこともよく見られます。
属人化した営業体制だと、困ったことが起きた時にもメンバーが孤立しがちで、独りで問題を抱え込むことで疲弊し、やがてモチベーションを失います。
メンバーのモチベーションが下がった組織は居心地が悪いので人材が流出しやすく、成長が難しい企業と言わざるを得ません。
メンバーの自発性を促すことでモチベーションが上がる組織に作り変える必要があります。
働き方改革が進まない
営業活動とは少し離れますが、働き方改革が進まないことも営業活動の課題のひとつです。日本では「一億総活躍社会」の実現に向けて、働き方改革への取り組みが行われています。
一億総活躍社会とは、50年後の未来においても人口一億人を維持し、家庭や職場、地域などさまざまな環境において誰もが活躍できる社会のことです。そのためには、どのような人でも活躍の機会を設け、どのような環境においても個々の能力を発揮できるような仕組み作りが必要です。
現代では、育児や介護、地域格差などによって選択肢が狭まり、キャリアが妨げられることも少なくありません。このような格差を是正するため、働き方改革が始まりました。2019年4月には働き方改革関連法案が一部改正され、大企業だけでなく中小企業においても急務の経営課題となりました。
近年は労働環境を改善できず離職や人材確保に課題を抱えている企業も多く、働き方改革の必要性を感じている方も少なくないはずですが、なかなか改善できないケースがほとんどでしょう。では、働き方改革が進まない原因はどこにあるのでしょうか。
働き方改革が進まない理由としてさまざまな要因が考えられますが、中でも注視したいのは労働時間と業務効率の関係性でしょう。
営業職を例にとってみると、商談や打合せといった顧客との対面の業務だけに限らず、書類の作成や先方とのやり取りといった事務作業も必要となるため、業務過多に陥り残業時間が長くなる傾向があります。
そして、激務が続くとモチベーションも低下し、結果的に生産性も下がってしまいます。また、こうした悪い労働環境が慢性化すると離職率も上がり、人員減によってさらに業務量が増加する負の連鎖が生まれてしまいます。
このような客先訪問や業務・残業過多の課題をクリアできなければ、育児や介護と両立して働く環境は作れません。
そのため、従来の営業手法のままでは適切に対応できないケースが増えてきています。また、近年は災害や感染症など緊急性が高い事態も生じており、どのような環境においても事業を継続的に推し進めていく仕組み作りが必要です。
解決方法としては、業務支援ツールを活用したインサイドセールスやテレワークを導入し、在宅や遠方でも働けるように環境を整備する方法などが挙げられます。このようなツールは業務の効率化にも寄与し、働き方改革の実現にも一役買うのです。
営業での課題を解決するには?
よくある営業の課題を紹介しましたが、それらの課題はどのようにして解決されるのでしょうか。営業部として取り組めることを紹介します。
社内の情報共有時間をつくる
他の部門と同様に、社内での情報共有は営業部門にとっても重要です。情報共有をすることで、営業部門全体で必要な情報を全員で持つことができ、一人ひとりの実力差をなくすことにもつながります。
また、営業ノウハウを共有することで、業務の属人化を回避し、熟練者のノウハウを新人に引き継ぐこともできるでしょう。
たとえば、先週受注した企業について担当の営業パーソンから「会社の業種・規模」「対面の担当者の役割・役職・業務内容・追っているKPI」「担当者の課題」「商談時に刺さった内容」「導入の決め手」などを共有する会を設けることで、自分が似たような営業先にあたった時にそのノウハウを活かせるようになります。
営業プロセス・提案内容を改善する
課題を解決するためには、営業プロセスや提案内容を改善することも重要です。それぞれの改善方法について詳しくみていきましょう。
営業プロセスの改善
営業プロセスとは、営業活動における見込み顧客に対してのアプローチから商談を経て受注に至るまでの一連の工程のことを言います。
昨今の人手不足や働き方改革による営業活動の効率化の要請は、旧来の担当者の経験とスキルに頼った属人化した体制からの脱却を迫っています。
まず行うべきは、「営業プロセスの整理」による課題の洗い出しと改善策の検討です。
営業プロセスの整理によって受注までの工程が明確になり、メンバーが自らの立ち位置を把握できるだけでなく、メンバー全員の行動が把握できるようになるので、モチベーション向上と適正な人事評価が見込めます。
組織における営業活動の基準の設定により、属人化した組織をメンバーの流動に左右されない「標準化」した組織へと作り変えることも重要です。
営業プロセスの各工程における行動の規範を組織全体に周知することで、営業活動における課題がどのプロセスから生じたものなのかが明らかになり、すばやく改善策を打てるようになります。
また、誰がどのプロセスでつまずいているのか発見し改善が容易になることや、新人を育成する際の模範にできること、さらに優秀なメンバーが持つノウハウの共有による組織全体の成長が期待できます。
整理が完了したら、次は「営業プロセスの見える化」によりメンバー自身が客観的な数値を伴った形での課題の把握ができるようにします。見える化することで課題特定の精度とスピードが上がり、より効果的な対応策を打つことができます。
また、営業プロセスやフェーズごとに具体的な目標設定を行いやすくなるので、目の前の目標を1つ1つクリアしていくことで、モチベーションを失うことなく営業活動を続けられます。
提案内容の改善
顧客のニーズを正しく把握してニーズにふさわしい提案ができなければ、いくら高性能で価格が安くても、買ってもらうことは難しいでしょう。
提案する前に顧客の話をよく聴いて何を求めているのかを知ることが大切です。商談においてこちらの提案が相手に響いていないと感じたら、提案内容の改善を考えましょう。
また、提案している最中に顧客の反応に合わせて提案方法を軌道修正する柔軟さも必要です。
見込み顧客を整理する
営業の効率化の重要性が高まる昨今、リードジェネレーションというマーケティング・プロセスが重視されてきています。リードジェネレーションとは、自社の商品・サービスに関心がある「リード」=「見込み顧客」を獲得する活動を指します。
リードジェネレーションは営業の取っ掛かりとしてとても重要なプロセスですが、費用対効果の観点からは、リードジェネレーションで獲得した見込み顧客を整理することも重要です。
これを「リードクオリフィケーション(見込み顧客の絞り込み)」と言います。
見込み顧客の中でも関心の度合いにより購買意欲に差があります。成約の見込みが薄い見込み顧客に営業を掛けるのは非効率ですし、逆に購買意欲の高い見込み顧客を放置してしまえば契約のチャンスをみすみす逃すことになるでしょう。
リードクオリフィケーションでは、見込み顧客の行動のスコアリングやアプローチに対する反応から、見込み顧客の状況を的確に判断します。
全顧客に全力で当たることは難しいのですから、リードクオリフィケーションによって既存の見込み顧客を整理し、より見込みの高い顧客、つまり「質の高い顧客」に優先的に予算・人員の配分・注力を行うべきなのです。
見込み顧客の育成も重要
見込み顧客を「育成」する段階であるリードナーチャリングも重要です。
リードジェネレーションによって獲得した見込み顧客をリードクオリフィケーションでふるいにかけて購買の可能性が高い顧客を選別しますが、同時にふるいにかからなかった見込み顧客への目配りを忘れてはいけません。
見込み顧客になったということは、資料請求やサイトへの訪問などにより自社に何らかの関心を持っている訳ですから、心が離れる前に再び何らかのアプローチを行い、購入意欲を高めてもらうことが大事です。
リードナーチャリングを効果的なものにするためには、見込み顧客のニーズを的確に把握して、顧客ごとに個別にメールや電話でアプローチしていくといったきめの細やかな対応が求められます。
リードナーチャリングによって見込み顧客の購入へのモチベーションを高め、「質の高い顧客」に育て上げることができれば、成約率が向上し、費用対効果の高い営業活動が実現します。
マーケティングノウハウを身につける
最近はWeb上から資料請求やお問い合わせのあったお客様に対してアクションしてアポを行うインバウンド営業という形の営業が増えてきました。
特にそのインバウンド営業を行っている営業パーソンに必要なことですが、マーケティングノウハウを身につける必要があります。
お客様も営業と商談する前に、様々な情報をWebから収集している時代です。そうすると、お客様がサービスの契約を検討するための材料は、営業側から得た情報だけではなく、Web上から得た情報も当然加わってきます。
その時に営業パーソン(あなた)がマーケティングに詳しいかどうかによって、お客様がこれまでどういう情報収集を行い、誰が提供しているどの情報と接した可能性があるか、ということの理解が変わってきます。
また、自社のマーケティング活動に対しても詳しく知っておく必要があります。
資料請求してすぐ商談になったケース以外にも、すぐには商談化しなかったが、何度かセミナーに足を運んだり、事例をメールで見たり、などマーケティングの様々な活動によりお客様が見込み客として育成されたケースがあります。
そういった時にどのような経緯でどの情報に触れたのかはマーケティングに関するある程度の理解がないとわかりません。
営業支援ツールなどを活用する
営業リソースの問題や、情報共有の課題を解決する決め手となるのが、営業支援ツールです。
営業支援ツールは、使うだけで情報が共有や業務管理を適切に行うことができるため、営業活動全般の効率化を図ることができます。情報を一元的に管理できるようになるので、転記などに無駄に時間を取られることもなくなります。
自社の状況や目的に適した営業支援ツールを選択することと、営業支援ツールを使いこなせる社内体制を整えることが重要となります。
インサイドセールスの導入も効果的
インサイドセールスとはいわゆる「内勤営業」のことで、電話やメールを介して顧客にアプローチをする手法です。インサイドセールスと対になるフィールドセールスはこれまで通りの「外勤営業」ですが、先ほどご紹介した理由などからインサイドセールスに比重を置く企業が増えてきています。
インサイドセールス自体についてもっと詳しく知りたい方はこちら
導入のメリット
ここからは、インサイドセールス導入のメリットをご紹介します。
生産性を上げられる
飛び込みで行う営業は、現時点から見れば古くて非効率なものです。インサイドセールスにおいて、相手企業がどれくらい自社製品に興味を持っているのかという情報を可視化してくれるマーケティングソフトウェアや顧客管理ソフト、営業支援ツールを駆使することで、商談そのものの件数はもちろん、成約率を高められます。
またこれは、リードタイムの短縮にもつながります。なぜなら、オンラインで商談ができるため、移動時間がない分スケジュール調整が簡単だからです。
お客様のもとに訪問した場合、移動時間で往復2時間、商談で1時間の計3時間の空き枠が必要となります。しかし、商談自体もせっかく訪問したので1時間はしゃべらないとという気持ちがあり、実際のところは30分~40分で済む場合もあるのではないでしょうか。
オンライン商談なら、1商談40分の空き枠があればすぐに商談ができますし、訪問先の企業の会議室の空き具合を気にする必要もありません。来週になっていた予定調整が明日にでも可能になります。
社内共有が可能になる
インサイドセールスは、各営業がオフィス内でウェブ会議などを通じて顧客と商談します。その様子を横で見る方法もありますが、録画・録音機能を使えば営業の商談模様を繰り返し確認することが可能です。
つまり、トップセールスの得意な営業の仕方を学び、ノウハウを共有できるのです。新人の営業担当者でも、毎日営業同行しているかのように先輩の営業からノウハウを学べます。
移動に使っていた時間を有効に使うことができる
インサイドセールスはオフィスで行う営業手法です。つまり、訪問する必要がなく、移動時間を削減できます。訪問先までの移動方法を調べたり、出張経費の清算をしたりする時間も省略できます。
営業パーソンが移動にどれだけ時間を使っているか知っていますか?仮に毎日3回の商談があり、1商談に往復80分かけているとすると、1日4時間、1ヶ月80時間を移動に使っていることになります。その移動時間も完全に無駄かというと必ずしもそうではないと思いますが、あまり生産性が高いとはいえない時間であることは確かです。
顧客に集中できる
従来の外勤型の業務体系では、見込み客や取引先から問い合わせがあっても商談や打合せなどで対応できないケースも多くありました。しかし、内勤型のインサイドセールスでは顧客からの電話にも出やすく、迅速な対応もしやすくなります。顧客の課題に対して専念しやすいため、満足度の向上も期待できます。
人材/リソース不足に対応できる
インサイドセールスを行うことで、訪問数を軸に営業をひたすら行っていた時代に比べて、少ない人員でリードを育成し、確度の高いリードに絞った営業活動ができるようになりました。つまり、リソースが少ない企業でも、より効率的に営業活動を行うことが可能なのです。
また、幅広い働き方の選択が可能になったり残業対策に劇的な効果が見込めるため、近年難易度が上がっている営業職社員の採用にも良い影響をもたらします。
テレワーク・在宅勤務にも対応できる
インサイドセールスとは、元々米国で考案され、徐々に広まってきた営業手法です。米国はいわずもがな広大な国土を有しており、営業社員の移動コストの低減に効果があったため注目されました。
また、日本でも上述したメリットが注目され、人材不足が深刻になってきたことからインサイドセールスの必要性が高まっています。
インサイドセールスは在宅勤務やテレワークと組み合わせ、時間や場所に縛られない営業活動ができるという利点があります。育児中や介護者でも営業活動ができることは個人だけでなく、企業にとっても大きいメリットです。
多種多様な働き方に対応できることで、人材の獲得や維持に有効に機能します。大きな災害があった場合などの非常時にも、インターネット環境とパソコンさえあれば企業とやり取りができ、仕事を遂行できるという点も見逃せません。
インサイドセールスはこの機能性が着目されており、今後企業で大きなウエイトを占める働き方になる可能性を秘めているのです。
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まとめ
以上、営業のよくある課題と、その解決方法をご紹介しました。
属人化しがちな営業をチームとして管理し、改善するためには、日々の営業を詳細に記録すし、社内での情報共有の場をつくることが重要といえます。インサイドセールスを導入し、営業改革の第一歩を踏み出しましょう。
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