在宅勤務・テレワークを実施するために企業側が行うべき準備とは

大規模地震や大型台風などの自然災害に加え、新型コロナウイルス感染症の企業対策として、「在宅勤務・テレワーク」に注目が集まっています。

テレワークは、さまざまな状況下における事業の継続と、従業員の安全確保に有効な働き方でしょう。ただし、初めて在宅勤務・テレワークを導入する場合は、あらかじめ必要なルールや環境を整備する必要があります。今回は、在宅勤務・テレワークの導入・実施で、企業側が行うべき準備について解説します。

テレワークの導入意義

「テレワーク」は、「tele(離れたところ)」と「work(働く)」を合わせた造語で、場所や時間にとらわれない働き方を表します。特徴は、ICT(情報通信技術)を活用して行うことにあります。自宅で業務を進める「在宅勤務」や、サテライトオフィスで作業する「サテライト勤務」、そして移動中にモバイル機器を活用して働く「モバイル勤務」がテレワークに含まれます。

はじめにテレワークの導入意義を、今回の新型コロナウイルス対策と、平常時とに分けて解説します。

新型コロナウイルス感染拡大防止

新型コロナウイルスの感染拡大防止に対する、テレワーク導入の意義を考えてみましょう。企業は、従業員が新型コロナウイルスに感染しないように、以下のような感染拡大防止対策を講じる必要があります。

・手洗い・マスク着用を徹底
・アルコール消毒の励行
・消毒用アルコールなど備蓄品を確保
・不要な外出を避ける
・感染防止策の徹底を来訪者にも適用
・感染した場合の連絡体制を構築

また「3密」を回避して、複数名の同時感染を防止するのも大切です。そのため、通勤時間帯を変更したり、チームごとに交代で勤務したりといった工夫以外にも、対面のミーティングを避ける、場所によっては立ち入り制限を設けるといったルール作りも必要となります。

ここで重要なのは、大規模自然災害が発生したケースとは取るべき対応が異なることです。自然災害の多くは事前に予測できませんが、被害は瞬間的・局所的であり、被災していない拠点からの応援や、代替施設の補完が可能です。

一方で新型コロナウイルスのような感染症の場合、ある程度は被害の発生予測ができます。しかし、時差出勤や出社制限による出社率の低下、直接感染、死亡など人的被害の側面が大きくなります。被害の範囲も広く、他拠点からの応援や補完は見込めません。このため、新型ウイルスのパンデミックを防止するには、1人の従業員が複数業務をこなせる教育を施すほか、オフィス外でも業務を継続し得るテレワークの導入が有効でしょう。

従業員を危険にさらすことなく事業を継続するためにも、在宅勤務・テレワーク導入は意義あるものなのです。

平常時におけるテレワークのメリット

テレワークを導入することで得られる、平常時のメリットもご紹介します。

・通勤負担の削減

職場までの通勤が必要なくなるため、これまでの通勤時間を仕事やプライベートに充てることができます。通勤ストレスから解放されたフレッシュな状態で、仕事に臨むことができるでしょう。

・労働生産性の向上

通勤時間が省略されるとともに、労働生産性の向上が期待できます。オフィスでのストレス、例えば周囲の雑音やデスク環境から解放された状態で働くことで、より業務に集中できると考えられます。集中力の高まりは、生産性の向上につながるはずです。

・非常時の事業継続

台風や降雪などの悪天候、地震や洪水といった自然災害などの非常事態時に、事業を中断せずに済みます。同時に、従業員の安全を優先できます。

・育児・介護との両立

在宅でも業務が可能になり、育児や介護の合間に業務を行えるようになります。企業にとっては、従業員が蓄積してきたスキル・ノウハウを手放さずに済みます。従業員にとっても、「仕事を失ってしまうのではないか」、「プライベートと両立しながら業務についていけるだろうか」という不安を和らげることができます。

・短時間私用への配慮

一般的に、オフィス勤務において役所の手続きや子どもの授業参観、予約受診など1時間程の私用があると、通勤時間を考慮して半日休暇を取得することになります。しかしテレワークなら、私用を済ませた後からすぐに業務に復帰できます。時間を効率的に使い、業務への影響を最小限に抑えることもできるでしょう。

・コスト削減

職場への出勤がなくなる分、企業は従業員が働くためのスペースを縮小することができます。オフィスにかかる家賃や光熱費、通勤手当を削減できますし、書類のやり取りを減らせれば、オフィス用品の節約にもなります。

・人材獲得

勤務地や通勤圏の制約を受けないので、全国から人材を募ることができます。就労意欲やスキルがあっても、育児や介護で仕事が難しかった人材を採用できるようになり、求職者にとっても就業の可能性が広がります。

テレワークの実施、必要な準備とは?

テレワークを実施するには、整えておくべきことがあります。必要な準備を7つまとめます。

テレワーク可能な業務の見極め・対象者の決定

テレワークの導入前に、想定している業務がテレワーク可能かどうか、およびテレワークの対象者を見極めましょう。

テレワーク中のコミュニケーションは、パソコンやモバイル機器を通じて行います。間接部門やシステム開発など、デスクワーク中心の業務は比較的テレワークを導入しやすいでしょう。一方で、客先に訪問する、プレゼンが求められる、オフィス機材が必要な業務は、導入のハードルが高いといえます。

また、対象者に相応しいのは自己管理できる、十分な情報リテラシーを持っている、テレワークに関するルールを守ることができる従業員です。テレワークを望む従業員がいる場合は、パソコンだけで完結する業務に就いているか、特定の家庭の事情があるなどテレワークを希望する理由を確認したうえで判断しましょう。

労務管理

オフィスと異なり、テレワークで働く従業員の勤務状態を上司が確認できなくなります。勤務時間が見えづらく、サボってしまう従業員も出てくるでしょう。また、自宅で業務を行うため、勤務時間とプライベートの時間が混在することも予想されます。

そのため、テレワークを導入する前に、従業員の勤怠状況をしっかり把握できるシステムを準備しておく必要があります。

勤怠状況の管理には、勤怠管理システムの導入が効果的でしょう。

テレワークに関するルール

労務管理に関連し、テレワークのルールも事前に決めておきます。

まず、テレワーク実施のための申請についてのルールを定めましょう。テレワークの申請者(テレワークを行う従業員本人・上司)は、いつ(週単位・一か月単位など)までに、誰(上司・部署・人事)に、どうやって(口頭・紙面・社内メール)伝えるのか、また、テレワークの条件(上司・人事との面談を経て)などを事前に取りまとめておきます。

次に、承認のルールについてです。テレワークの条件を満たしていれば自動承認する、もしくは面談で協議するなど、承認の条件を定めておきます。なお、申請者がテレワークを行う従業員本人であれば、上司・人事の承認が必要です。申請者が上司・人事であれば、テレワークを行う従業員本人の承認も求められます。

さらに、テレワーク時の勤務開始・終了や、在席の管理方法をあらかじめルール化しましょう。始業・終業時刻の記録は必要かどうか、勤怠は誰(上司・人事)に、どのような手段(電話・勤怠管理ツール・メール)で伝えるのか、などです。

在席管理や業務管理も、必要であればどのような手段で行うかを明確にします。

成果を重視する評価制度

一般的に、オフィス勤めの評価基準は成果と労働時間とに準拠します。現行の評価制度、賃金体系で、テレワークを行う従業員に不利益が生じる可能性はないでしょうか。

テレワークを導入すると、従業員は自分の仕事がきちんと評価されているのか、不安に感じるものです。また、オフィスで仕事をしている人とテレワークを行う人との評価が公正に行われなければ、従業員全体のモチベーションが下がってしまうでしょう。

職種によっても、評価のしやすさが異なります。営業であれば、売上金額や目標の商談件数を達成したかなど、数字で明確に目標を設定できます。一方で間接部門の場合、勤務時間、勤務態度によらない成果ベースの目標設定にしなければ、正しい人事評価ができなくなってしまいます。

プロセスではなく結果や成果で評価する以上、オフィス勤務者とは異なる評価方法を設定しておきましょう。

セキュリティ・情報漏えい対策

テレワークでは、社外秘の情報を持ち出すことになります。会社外で機密情報を扱うことを念頭に、テレワーク実施を加味したセキュリティールールを策定しましょう。

・端末の管理

テレワークで用いるデバイスを会社が貸与する場合は、貸与する端末、および利用者の管理台帳を整備しましょう。常に端末の状況を把握することをおすすめします。

・フリーWi-Fi利用について

カフェや公共スペースなど、外部のWiFiを利用した際に、情報が漏洩する可能性があります。会社の利益を守るために、フリーWi-Fiを用いる際は暗号化されたもののみにする、HTTPS化されたURLかを確認するなど、セキュリティ対策を万全に行いましょう。

・端末のアクセス制御

情報資産を自社サーバー内で管理する場合、情報のレベル分けを行いましょう。レベルごとに、アクセス制御や印刷の可否など、取り扱い方法を設定していきます。

コミュニケーション手段

テレワークになると上司と部下、チーム内の接点が減ります。オフィスでのちょっとしたやり取りがない分、意思の疎通が図りにくくなり、業務に支障をきたす可能性があります。

上司に業務の状況を伝えるだけではなく、一人ひとりの孤独感を解消したり、オフィスに出勤していない疎外感を取り除いたりすることも大切です。情報格差をなくし、業務を円滑に進められる体制を整える必要があります。具体的には、連絡のつく時間を定める、報・連・相のルールを設ける、Web会議システムやビジネスチャットツールを導入するなど、コミュニケーション環境を整えるといいでしょう。

社員が使用するデバイス・通信環境

テレワークでパソコン、および周辺機器など情報通信機器を用いる際、会社の備品を貸与するのか、私物を使ってもらうのかを決めておきます。使用が考えられるデバイスは、パソコン・スマートフォン・携帯電話・周辺機器などです。

また、通信料について、会社と個人のどちらが費用を負担するのかも決めておきましょう。会社のWi-Fiに接続しない場合は、個人の通信端末、もしくは自宅Wi-Fiへの接続が増えるため、業務分の通信料金が発生してしまうことがあります。明確に、負担の割合を決めておく必要があるでしょう。

テレワーク導入成功のポイントは

新型コロナウイルス感染拡大防止のような不測の事態はもちろん、平常時にも導入したいテレワークですが、導入を成功させるポイントがあります。

デメリット面への対策を準備しておく

テレワークには多くの導入メリットがありますが、実際に始めればデメリットも出てくるでしょう。あらかじめ、デメリット面への対策を準備しておくことが大切です。

・マネジメントしづらくなる

前述した通り、テレワークを実施すると、労働時間や業務の進捗状況を管理しづらくなります。出退勤をチャットで報告する連絡体制を構築しながら、実態を把握できるシステム導入を検討してみましょう。

・情報漏洩のリスクが高まる

通常のオフィス環境と比べ、テレワークでは情報漏洩のリスクが高まります。機密事項を社外で扱う、ネットへのアクセス環境に差がある、など各自の端末が管理しづらい中でセキュリティ対策は不可欠です。

・上司やチームとのコミュニケーションがとりにくい

お互いに顔を合わせられない離れた場所で仕事をしているため、説明が不足して指示内容に齟齬が生じたり、作業にミスが生じたりする可能性があります。また、対面のコミュニケーションがなくなる分、業務上の疑問や不安を伝えられなくなるかもしれません。気軽にフォローできるツールを用いてみましょう。

ITツールの活用を進める

テレワークで生じる課題を解決するなら、ITツールの活用が効果的です。まず、全社的にはビジネスチャットや、社内会議システムなどの導入を検討してみましょう。

また、職種ごとに必要なツールが異なります。営業であれば、SFAやオンライン商談ツールの導入を検討しましょう。

まとめ

今回は、在宅勤務・テレワークを実施するために企業側が行うべき準備をご紹介しました。

テレワークは平常時に限らず、新型コロナウイルス感染症の拡大や自然災害など、不測の事態でも業務を進められる働き方です。

企業・従業員双方にメリットがありますが、デメリットを理解し事前に対処しておくことで、より働きやすい環境をつくり出せるはずです。

そして、テレワークで抱えがちな悩みを解決するのがITツールです。テレワークのルールや制度を整備しながら、ITツールの導入も検討してはいかがでしょうか。

 

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