サステナブル営業~ベルフェイスが考える新しい営業組織の世界観~

「企業の唯一の社会的責任は利益の増大にある」。

1970年にアメリカの経済学者が言ったこの言葉に象徴されるように、産業革命が起こって以来ながらく利益こそ資本主義の原理原則として信じられ、そして世界は利益のためだけにひた走ってきました。

しかし、2016年のパリ協定発効以来、世界は大きな変化の節目にあります。世界の価値観は弱肉強食から徐々に「共生」へと移行しつつあり、「SDGs」や「サステナブル」といった言葉を目にしない日は一日もないほどでしょう。すでに世界はステークホルダー資本主義(サステナブル資本主義)ともいうべき新しい経済原則へと再定義されつつあり、自社/株主の利益だけを追求するような企業は市場から淘汰されていっています

では、これからの企業は何を考え、取り入れ、そして実際に取り組めばよいのでしょうか?多くの企業で最大組織である営業部門の取り組みを中心に、サステナブル営業®(営業のサステナビリティ)とはなにかについてご紹介します。

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いま、産業構造が変化している

産業構造の変化を表した図解

産業構造の変化

従来の資本主義は、つまり「株主資本主義」でした。言うまでもなくそれは、企業が経済活動を通じて株主の利益の最大化を追求する仕組みを指します。そのためには給与カットやリストラ等も含めた”適正化”が当然の論理として行われ、また社会や環境といった外部の不経済があっても多くは無視されてきました。

しかし今、その普遍的とも思われた構造は世界中で見直され、変わろうとしています。2015年9月に国連サミットで”持続可能な開発目標”SDGsが発表されたのを皮切りに、世界各国で社会や環境、人権に配慮した経済活動をこそ最も重視する見直しが急速に進みました。

2019年には米国の主要企業が名を連ねる経済団体ビジネスラウンドテーブルで約180社のCEOが「株主利益至上主義から決別する」と宣言、2021年のダボス会議は「Great Reset(資本主義を含む、社会全体を構成するさまざまなシステムを、いったんすべてリセットして再定義する)」がテーマとして掲げられていました(※新型コロナウイルスによる渡航規制で延期の末に中止が決定)。

日本においても、2020年10月に首相就任した菅総理大臣が所信表明演説で「2050年に温室効果ガス排出ゼロ」を宣言し、政府や自治体と共同して企業や社会全体のESG/SDGs促進のためにどのような役割を果たせるのか、と3メガバンクなど金融業界を中心に大きく動いたニュースが目立ちました。

もはや物事をサステナビリティの観点で問うこと(世界の持続性という観点で正しいことか)は、世界のどこかでおえらいさんが決めたことでも、一過性の流行でもなく、世界の仕組みそのものの変化を表した言葉と言えます。

営業現場/組織がステークホルダーに配慮できないとどうなってしまうのか?

営業現場がステークホルダーに不配慮だった場合に予想される悪影響の解説

しかし、いくら世の中の大きな変化の中にあるとはいっても、投資にしてもコストにしても、システムやツールを含め費用がかかるのに間違いはありません。コロナ禍を経て売上を落としてしまった今、できることなら何かを変えるようなことはやりたくないと考える企業も少なくないでしょう。

では、もし取り組まなければ、どんな悪影響がもたらされるのでしょうか?実際に起こりうる(すでに世の中の企業では実際に発生している)デメリットをステークホルダー別に見てみましょう。

顧客に対して

顧客が求めるスピード・機能・コスト・サポートなどの用件を満たせないといった営業の基本的な価値の部分はもちろん、情緒的価値や背景も現代では非常に重要視されています。

口先だけの「顧客第一主義」は簡単に見透かされ、ネット上であっという間に拡散される世の中です。モノが売れれば何でも良いわけではなく、担当者の態度やサポートの誠実さなどが厳しい目で見られています。

商品そのものに関しても、通販サイトやインフルエンサーのPR(企業案件)を含む発信などを見れば「SDGs」や「エシカル(倫理的な)」といったカテゴリが当たり前のように存在しており、すでに消費者の購買行動の価値判断基準には、サステナブルの視点が入ってくるのが一般的です。

これらのことに対応しなければ他社に劣ることとなり、顧客を失うことになるでしょう。

従業員に対して

不適切な人事評価や過度な残業、ひとが次々と辞めていってキャリアの先が見えない……といった、程度の差はあれいわゆる「ブラック企業」と言われるような従業員への接し方は、たとえいっときは利益を生み出せたとしても、良い結果を生みません。

従業員も会社を一歩出れば一人の消費者ですから、アンチと化したその社員が社外では一切自社商品を支持しないだけでなく、評判は家族や友人へも伝わっていくことでしょう。

それに、従業員満足度が低ければ退職する社員が後を絶ちません。そうなればノウハウが流出してしまうのはもちろん、いつまでたっても組織として強くなることは不可能でしょう。士気だって上がりようがありません。

また言うまでもないことですが、過労死などもってのほかの大惨事にも繋がりかねません。

仕入先に対して

たとえわざとでなくても、不当な買い叩きや代金の支払い遅延、注文品の不当な返品など、発注側の立場を利用した一方的な要求(下請けいじめ)は、下請法違反の疑いが出てくるだけでなく、世論の反感を招き、訴訟にまで発展するケースもあります。

社会・環境に対して

社会・環境に対しての姿勢は、今日おそらく最も厳しい目で見られている事柄の1つでしょう。

  • 人種差別がされている地域から仕入れを行った疑いで、海外で輸入禁止措置
  • 自社事業のために山や森を切り開いた結果として地盤がゆるくなり、土砂崩れなどの災害を誘発
  • 安価な海外工場に発注していたが、過酷で劣悪な労働環境で、たくさんの労働者が低賃金で働かされており、事故が起きて死者まで出た

これらは、世界でも実際にあった(疑いのあった)出来事のごく一部です。経済がグローバル化していくなかで、遠く日本にあっても「知らなかった」では済まされません。サプライチェーンの末端にまで広く神経を行き渡らせることを怠れば、社会的信用を失い、炎上や不買運動を生むだけでなく、結果としてBCP不全を引き起こすことにもなりかねません。

株主・投資家に対して

ここまでのことを踏まえ、非財務情報を軽視してESGスコアを重視しない経営体制は、株主や投資家たちにとってネガティブな評価にしかなりません。

投資が集まらない、資金が集まらないといった所にまで至ってしまった企業は、もはや市場から魅力ある、未来のある企業だとはみなされないでしょう。

あらたな産業構造下での「勝ち方」

では、どのようにすれば回避して、なおかつ企業としての成長と勝ちにつなげていけるのでしょうか。永続的に成長し続けるために、企業がいま着手するべきことは一体何でしょうか?

新たな産業構造下で企業が勝つために取り組むべきことの図解

CXの改善やパートナーシップの強化は欠かせませんし、従業員エンゲージメントの向上や地域社会への貢献にも取り組んでいかなくてはならないでしょう。コーポレート・ガバナンスコードを遵守した上で、ESG経営も推進していかなくてはいけません。

しかしこれらは、長らく昭和の雰囲気を残してここまで来てしまった企業の方にとってはハードルが高く感じられるかもしれませんが、一方で倫理的な事柄も多く含まれており、「(SDGs)どれに取り組んでいる」ではなく本来全部取り組んでいるべきことです。

とはいえ、いま目の前で変革が迫られている企業が具体的に取り組むべきことは、やはり「現場」の改革でしょう。なかでも、営業組織の改革は欠かせません。最も多くの顧客と関わり、かつ多くの企業において営業部門こそ最大の組織だからです。

次章では、サステナブルの視点から現代の営業組織が抱える課題を明らかにします。

日本の営業現場の課題

変革は急務!日本の営業現場はこんなに非効率

サステナブルと言うといわゆる「環境問題」と捉えられがちですが、効率を上げて生産性を高めることは、企業の持続性という観点で重要な目標です。

例えば、顧客とのコミュニケーションは何においても「メールより電話、電話より直接」のほうが良いとされてきました。謝罪や役員プレゼンといった重要な局面でそれが真実であることはオンラインがかなり一般的になった現代でもまったく否定されるものではありませんが、特にコロナ禍を経験した今、日本人の意識は大きく変わりつつあります。

下のグラフは、営業側と顧客(買い手)の意識の乖離がよく現れたデータです。

オンラインを求める買い手と対面こそ誠意の表し方と思う売り手の意識の違い

直接対面での営業スタイルを望む消費者はわずか23.9%で、好ましい営業スタイルは「訪問(対面)」だと考える営業48.0%という数字とは大きな開きがあります。

もちろん約4人に1人という割合は決して無視できるものではなく、対面での営業を否定するわけではありません。ここでわかることは2つです。

  • ただ闇雲に直接対面を選べばよいわけではない
  • 自社の論理とお客様の論理は違う可能性がある

つまり、オンラインをうまく使ってスピードや効率を上げることと、直接でなければならないことのバランスが求められています。

このことは、CX(顧客体験)や顧客満足度に繋がり、ひいては売上や他社との競争力、企業としての持続性の遠因になります。効率が全てではありませんが、企業にとっての「サステナブル」は、実は生産性や効率性と密接に関わっていると言えます。

テレワークならCO2排出量削減!でも実施率は…

政府が東京オリンピックを期に浸透させるつもりでいたテレワークは、外出自粛や緊急事態宣言を経て一気に企業での導入が進みました。おそらく日本人がコロナ禍で最も影響を強く受けたことの1つでしょう。

2020年11月時点での全国のテレワーク平均実施率は24.7%、また東京都の最新の調査によれば2021年8月の都内企業のテレワーク実施率は65.0%で、いまいち浸透しきっていないことが伺えます。

また、導入済みの企業でも緊急事態宣言が解除された途端に全社員一律に出社という経営判断がされるなど、あくまで一時的な措置として認識されているケースも少なくありません。

しかし、テレワークは上述のオンライン営業とともに、環境対策としても注目されています。

テレワークの実施率と二酸化炭素削減効果(環境省試算)

環境省の試算によれば、出社からテレワーク体制に切り替えることによる電力削減率は14パーセント。しかも、社員のワークライフバランスの向上や交通費の削減も見込まれます。価値観やライフスタイル多様化の時代のため、採用にも大きなアドバンテージが期待できます。

もちろん対面でなければ成立し得ないサービス/商品もありますが、コロナ禍以降、多くの消費者も可能な限りオンラインでの対応を求める時代となりました。新規の通販サイト開設はもちろん、証券やアパレル、電化製品までオンライン接客対応をする企業が続々と現れ、逆にこのような動きに対応しなかった、対応しても動きの鈍かった企業はさらなる苦戦を強いられることとなりました。

もちろんテレワークを取り入れない=悪なわけではなく1つの選択肢ですが、単に感染症対策ではない、企業の生産性を高める動きとして注目されるのには、それなりの背景があります。

いま日本企業は、大きな変革を果たすことがいま求められています。
その1つが、「サステナブル営業」です。

高効率な営業組織のキーワード「サステナブル営業」

サステナブル営業とは

サステナブル営業(Sustainable Sales)とは、近年表面化した社会課題への企業が取るべき対策の1つを表した新語で、読んで字のごとく、営業組織が今後の継続的・持続的な発展、売上のために取り組むべき事柄の総称です。

では、共に生きる価値観に立ち、自社/株主の利益だけではない関係するすべてのステイクホルダー(社会、環境、従業員やその家族など)すべての満足度を上げるには、具体的にどのようなことに取り組めばよいでしょうか。

最後に、サステナブル営業の重要な5つのキーワードをご紹介します。

①ビジネスの持続性

効率性を上げるなど生産性向上に取り組み、持続可能な営業組織を構築。

営業生産性は以下の公式で表すため、各要素を効率よく増加させていくことが生産性向上につながります。

営業生産性の公式=(商談数×受注単価×受注率)÷営業コスト

②キャリアの持続性

誰でもどこでも活躍できる環境の構築。

これからの時代、キャリアを持続できる(社員がこの会社で成長し続けたいと思える)環境でなければ企業が持続的に成長していくことは難しいでしょう。

キャリア支援制度やテレワーク制度の有無(居住地を問わずに働ける)などは、企業の雇用を安定させるだけでなく、離職率の改善や従業員満足度にも繋がります。

③CXの最大化

誰でもどこでも公平にサービスを提供してもらえる仕組みの構築。

多様性の時代により多くの顧客に選ばれ、その顧客の購買体験をより良いものにするためには、まず可能な限りどのお客様にも公平に同じサービスを提供できることが求められます。

例えば、足を運べる/運んでいただける範囲の特定のお客様だけを対象とする企業と、オンラインも有効活用して遠隔地や高齢者などにも丁寧にアプローチできる企業とでは、市場での競争力に大きな差がつく可能性があります。

④ガバナンスへの配慮

管理体制を整え、ステークホルダーとの信頼関係を構築。

ESG経営」といった言葉をよく聞くようになったように、各企業はコーポレート・ガバナンス(企業内統治)を進めていかなくてはなりません。あらゆる管理体制を整えて情報漏洩防止や不正抑止に努め、健全な企業であると認められなければ資金を集めることさえ難しい時代に突入しています。

営業活動に置き換えれば、たとえばすべての営業活動をデータ化して「言った・言わない」を排除し信頼関係につなげる、といったことが考えられます。また、決して嘘がないという証明は、誰より顧客に営業職社員のプライド(=ブランディング)にもつながります。

⑤環境への配慮

環境保全とコスト削減の両立。

多くの企業が発表しているCSR報告書やサステナビリティレポートからもわかるように、環境保全活動などをどのように行っているかは多くの投資家が注目するところであり、また一般消費者もわざわざ探してエコ商品を購入する時代です。

そのような商品/サービスを開発している企業を除いて、どの企業もが植林や再生可能エネルギー利用(太陽光発電など)に取り組めるわけではありません。しかし、営業資料や請求書といった紙の削減や、リサイクルにどのように取り組んでいるのか、といった事柄はどの企業でも可能で、また社会のステークホルダーにも大きなアピールになりえます。

「日本の営業職848万人が1年間の営業活動で排出する二酸化炭素の量は東京都の約1.86倍の面積の森が吸収できる二酸化炭素量に匹敵する」という試算もあり、営業活動がオンライン化することのインパクトは環境面にも及ぶことがわかります。

まとめ

この記事では、「株主資本主義」から「ステークホルダー資本主義(サステナブル資本主義)」へと産業構造が世界的に変化してきていることに合わせて、企業が社会から求められること、取り組んでいかなくてはならないことも変わってきていることをご紹介しました。

これからの時代は株主だけではない、あらゆるステークホルダーの満足度を追求することが必要で、そのためには営業部門を中心とした現場の改革が欠かせません。この現場の改革で目指すべき姿を「サステナブル営業」と呼びます。

重要なキーワードは下記の5つです。

  • ビジネスの持続性(生産性向上への取り組み)
  • キャリアの持続性(場所やライフステージ等を選ばず誰もが長く活躍できる環境構築)
  • CXの最大化(人を選ばず公平なサービス提供とより良い購買体験のための仕組み構築)
  • ガバナンスへの配慮(あらゆるステークホルダーに信頼される管理体制の構築)
  • 環境への配慮(環境保全とコスト削減の両立)

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依田写真《 著者紹介 》依田昂騎(よだ・こうき)
ベルフェイス株式会社 サステナブル推進プロジェクトリーダー
2007年明治大学卒。コミュニケーション領域のクリエイティブディレクター、マーケターとしてキャリアを重ねた後、2020年よりベルフェイスに参画。現在は、同社・マーケティング部門に所属しながら、企業でのコンサルタント・アドバイザーとしても活躍中。マーケティング・クリエイティブ・サステナビリティ・ブランディング分野において豊富な経験を持ち、理論や実践手法のわかりやすい解説に定評がある。

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