営業をする際、どんなふうにお客様と話せばいいのか分からない。そんな悩みを抱えている方はいらっしゃいませんか?
営業といえば「口が達者で、お客様を笑わせながら自然に本題に入ることができる」ようなイメージがありますが、誰もが上手な営業トークや雑談ができるわけではありませんよね。
「ベテランとなってもいまだに営業トークが苦手で……」
「本当はシャイでなかなかうまく話せなくて……」
と思っている方は意外と多く、雑談ができないことが悩みの種になっている営業パーソンも多いことがわかっています。
今回は、営業における雑談の重要性や、雑談に使えるコツをご紹介するとともに、緊張せずに雑談しながら営業ができる便利なツールをご紹介していきます。
営業で問われる雑談力とは
例えば、「エレベーターに乗ったら顔見知り程度のマンションの住人がいた」、「飲み会の後あんまり話したことがない人と同じ行き先になった」などのシチュエーションの時に、何を話したらいいか分からない、会話が続かなくて沈黙してしまう……と困ったことがある人は結構多いのではないかと思います。
こういう時に役に立つのが「雑談力」です。「いや、これはプライベートの場面であって営業とは関係ないだろう」と思う人もいるかもしれませんが、この雑談力こそが「出来る営業パーソン」への大きな一歩と言っても過言ではありません。
ではそもそも、この「雑談力」とは一体どういうものなのでしょうか。
雑談力とは「ヒアリング力」
雑談上手とは話題が豊富で、話術が巧みな人、と思っている人も多いかもしれませんが、それは違います。これらが上手な人はあくまで「話し上手」であり、トーク力がある人の事を言います。トーク力は雑談力とはまた違う技術です。
雑談力に必要なのはむしろ「聞く力(ヒアリング)」なのです。会話の主導権はあくまで相手に握ってもらい、自分が話したいことを話すより、相手から話を聞きだすことに意識を向けます。
会話の中で情報を集めて相手との距離を縮め、信頼関係を築いていく力こそが「雑談力」なのです。
相手に気持ちよく話してもらえさえすれば自分から話す必要がないため、話すのが苦手な人でも実は雑談力を身に着けることができるのです。
雑談にも練習が必要?
雑談上手になるためにはいくつかコツがあり、それを掴むために練習する事も必要になってきます。
まず、自分の雑談力のどこに弱点があるのかを分析してみましょう。自分で録音してみて分析してもいいですし、家族や友人、同僚などに協力してもらって意見を聞かせてもらうのも有効です。そして、どんな練習が必要なのか考えてみましょう。
例えば、下記のような対策が考えられます。
お悩み | 対策 |
自分ばかりが話してしまう | 相槌を打ち、相手に質問を投げかけるようにして「聞く」事を意識してみる |
話が続かない | 必ず質問で返すようにしてみる、ニュースなどで色々な話題を取り入れる |
そもそも人と話すのが怖い | 近所のおばさん、よく行く定食屋の店員、タクシーの運転手など、まずは身近な「雑談が得意な人」に話しかけてみる |
営業における雑談の重要性
営業において、「アイスブレイク」が重要だと言われています。アイスブレイクとは、初対面の人や商談相手と接する際に、緊張感をほぐしてスムーズに会話できる状態にするための手法のことです。
緊張した状態を「氷(アイス)」に例え、それを「打ち砕く(ブレイク)」といった意味から「アイスブレイク」と呼ばれています。
お客様との距離を縮める
例えば、家にいきなり営業が押しかけてきて、数分から数十分に渡って一方的に商品の話を次々にされて、それで「商品を買おう!」と思う人はいないでしょう。とはいえ、1から懇切丁寧に自己紹介されたとしても、それはそれで胡散臭くて信用する事も出来ないですよね。
そこで「雑談」が役に立ってきます。ビジネスの場面に関わらず、初対面の人やあまり面識がない人に、会話なしで警戒心を解かせて信頼を得るのはほぼ不可能です。逆に、会話の中で共感できる話や共通項があれば盛り上がって打ち解けることが出来ますよね。営業もそれと同じなのです。
本題へ繋げやすくなる
普段の営業では、どうしても不自然な形で商談に入ってしまうという方がいらっしゃるでしょう。雑談から自然に本題に入ることができれば、お客さんにも不信感を与えずに営業トークを進めることができます。自分自身も本題を切り出すハードルが下がり、心理的な負担や緊張感が減るはずです。
営業時の雑談で使える話題
ここからは、実際の商談時に使える営業の雑談トピックをご紹介していきます。
仕事
個人相手の営業であればどのような仕事をしているのか、法人相手であれば会社自体がどのような事している会社なのか、担当者の業務は何であるかというのが話題になります。そこからニーズを聞くことができる可能性が比較的高く、雑談から本題につなげやすい話題とも言えます。
ただし、いきなり業務の内容を聞いたりするのは失礼にあたる可能性もあるので、「月末はお忙しいのですか?」といった話題から入っていくと話しやすいかもしれません。
ニュース
ニュースや時事ネタなどは、相手の興味や関心、価値観などを知るチャンスです。そのとき話題になっている芸能やスポーツなどチェックしておきましょう。また、経済の話はビジネスの場では話題に上りやすいので押さえておきましょう。
逆に、政治、宗教などセンシティブな話題はアイデンティティに関わる部分でもあるため、避けた方が良いでしょう。
天気
「今日は天気が良くて気持ちが良いですね」、「雨が続いて嫌ですね」といった天気の話は非常に気軽に出せる話題です。
その日着る服装や傘を持っていくかなど、天気はみんなが気にするものなので、困ったときは天気の話をしている人も多いのではないでしょうか。
季節
「まだ5月なのに夏みたいに暑いですね」、「さっき桜が咲いているのを見ました」など季節・気候についても話しやすい話題です。
暑い日・寒い日が続いたり、花粉症が辛い季節だったりした時に、相手を労わる声掛けも出来ると良いかと思います。
趣味
趣味は自分が無条件で没頭することが出来るものです。共通の趣味があると分かると盛り上がりますし、趣味を理解してくれると嬉しいものです。
雑談の中での気になるワードや、相手の身の回りのものやファッションなどで気になるものがあれば「〇〇がお好きなんですか?」と声をかけてみましょう。
娯楽
空いた時間に映画を観たり仕事帰りにカフェに行ったりなど、娯楽は趣味に比べ暇つぶしやリフレッシュのニュアンスが強いです。最近話題のものや、相手のおすすめを聞くなどすると良いでしょう。
生活
住んでいる場所や食べ物についてなど、生活に関わる話題は無難で盛り上がりやすい話題です。食べ物は、おすすめのお店を聞く、最近話題のグルメについて話すなど明るい話題になりやすく、特に慎重になる必要もないので、簡単に話題にしやすいです。
健康
健康や美容の話は、年齢を重ねた人は誰しも気になる話題です。健康や美容に気を使っている人には、コツを聞いてみると喜んで教えてくれるかもしれません。
また、年配の方は怪我や病気の話をしたがったり、話したりしてすっきりしたい場合も多いので、しっかりと聞いて話を広げていくのがおすすめです。
注意すべき「悪い印象を与える」雑談とは?
商談時に使える雑談トピックを述べてきましたが、ここからは注意すべき悪い印象を与える雑談をご紹介します。その中でも代表的なパターンを4つご説明します。
営業側が話してばかり
悪い印象を与える雑談としてよくあるのは、営業側が自分の話を喋り過ぎてしまい、相手の話すら途中で自分の話に持っていってしまうようなパターンです。このような場合、言いたいことを言えなかったと相手が辟易してしまいます。
話をするときは、己があまり前に出ないように心掛ける必要があります。割合としては、相手6:自分4、あるいは相手7:自分3くらいが良いとされます。どちらかといえば聞き手にまわり、相手よりも自分の話は少ないかなと思うくらいが丁度良いでしょう。
相槌や質問が悪く、気持ちよく話せない
相手が熱心に話をしているときは適度に相槌をして、聴いている姿勢を示すことが大切です。
たとえ自分の全く興味のない話題を相手が振ってきたとしても、話がわからないといって無表情で聞いてしまったり、興味のない素振りを見せてしまっては、話をしている相手を嫌な気持ちにさせてしまいます。
また、相手の話に否定的になるのは悪い印象を与えます。否定的な返答をしてしますと、相手は話を続けにくくなります。相手の楽しく話したい気持ちは挫かれてしまい、雑談の雰囲気が悪くなってしまいます。
他にも、雑談の内容を既に知っていると口にしてしまって相手の話したい気持ちを削いでしまう、というパターンもありえます。知っている話だとしても、知っていると正直に伝えてしまうのではなく、「そうですよね」と共感しているような相槌をしたほうが良い場合もあるでしょう。
雑談をダラダラと続けてしまう
たとえ上手く雑談を進めていたとしても、ダラダラと長く続けていては、相手は内心この後も仕事があるのだから早くして欲しい、とイライラが募っているかもしれません。
自分が相手より目上だったり、ビジネスパートナーであったりする場合には、相手は自分から話を切り上げることはしにくいものです。しかし、相手は雑談を締めるタイミングを待っているかもしれません。
打ち合わせの本題から外れ、雑談に入った時には、自分から適度な長さで締めましょう。
締める際には、ふと時計を気にして、あれもうこんな時間なのですね、お時間大丈夫でしたか?と相手に配慮している、尊重しているという体裁を取るなど、良い印象を与えるような締め方になるよう心がけましょう。
会話が続かない
会話が続かない人は総じて悪い印象を与えがちです。会話が続かない人の特徴は幾つかあります。代表的な特徴について見ていきましょう。
内気で雑談が苦手
話しかけられても会話が続かない内気な人は印象を悪く見られるでしょう。内気な人には話しかけようと思う人も次第に減っていってしまいます。
営業においては、内気であるとしても最低限話を合わせる程度のことが出来ると、相手からの印象も良くなります。
話がかみ合わない
会話を進める中で、聞いたことに答えてくれない、関連しない話題について聞いてくるなど、話がかみ合わない営業パーソンは少なからずいます。こういった人は話が弾まず、相手をイライラさせてしまいがちです。
内容がチグハグでも、相手がそれに対処している場合もありますが、まずは自分の話が的を射ているかどうか、話す内容を熟考してから話し始めると良いでしょう。
話す内容や機嫌によって会話しにくくなる
相手は気分屋の人には話しかけづらいかもしれません。自分の気分が悪い時に話しかけられて、悪い気分をそのままぶちまけてしまう人がいます。しかし、気分が良い時は良い対応をする。そういう気分屋は、総じて扱いにくい印象を持たれがちです。
もちろん顧客を相手にそこまで露骨なことはしないと思いますが、機嫌が悪い時は声色がいつもと違う、反応がそっけないなど、ちょっとしたことでも対応が悪く相手を不安にさせてしまう可能性があります。
自分の気分が悪い時にも、それを表に出さない配慮が、相手に対して必要だと言えます。
攻撃的で話しにくい
雑談の中で自分の自慢話をはじめたり、相手の間違いをあげつらうなど、攻撃的な態度を取る人は悪い印象を与えるでしょう。自分が他人のアラ探しをしていないか考えてみてください。自分は相手を対等であるという目線で接しましょう。
攻撃的な人に相手は心よく思っていないでしょう。雑談を避けたいと思っているかもしれません。
雑談が無駄だと思っている
自分は雑談が無駄だと思っていませんか?自分が雑談を無意味だと思っていても、相手はそう思っていないかもしれません。多くの人は、雑談は相手とのコミュニケーションの一つであり、関係構築のための手段だと考えています。
話しかけられて素っ気ない態度を取ってしまったり、早々に話を切り上げたりする行為は、悪い印象を与えることになるでしょう。
雑談に効く3つのコツ
雑談のトピックが分かっても、自然に繰り出せなければ意味がありません。雑談を円滑にするコツはどこにあるのでしょうか。
相槌を使い傾聴する
会話の中で、相槌を打ちながら傾聴することは、雑談におけるもっとも基本的なコツと言えます。雑談力に必要なのは「聞く力」だというのは上で紹介しましたが、相手に「あなたの話を聞いていますよ」と示すのに最も簡単な方法が「相槌を打つこと」なのです。
もちろん、ただ相槌を打てばいいのではなく、話に合わせてゆっくりうなずく、小刻みにうなずく、深くうなずくなどの変化をつけることも大切です。「なるほど」「そうですね」だけに留めず、話をしっかり聞いた上で自分が感じたことが伝わる言葉を選ぶようにしましょう。
また、例えば相手の話に対して「そうですね」だけ返してしまうと会話が終わってしまう場合が多いです。プラスして一言付け加え、会話が続くように工夫しましょう。
×「今日は暑いですね」→「そうですね」
〇「今日は暑いですね」→「そうですね、こんな日はアイスが恋しくなります」
感じたことを質問する
例えば、
「昨日、映画を観てきたんだ」→「昨日映画を観たんですか?」
といったように、相手が使った言葉をそのまま質問として返す「バックトラッキング(オウム返し)」というテクニックがあります。自分から話題を振らず、相手に話したいことを話してもらって会話を盛り上げるテクニックです。
ただし、ただ質問を繰り返すだけではなく、気持ちに同調して相手が「自分の事を理解してくれている」と思わせなければなりません。
上の例だとこの後に「面白かったですか?」「何の映画を観たんですか?」など一言付け加えるのが良いでしょう。相手の話に対して質問で切り返していけば、それだけで雑談が弾むのです。
ニュースや新聞で情報収集しておく
確かに雑談力は「聞く力」ではあるのですが、決して情報収集が不要というわけではありません。質問を繰り返すことでも雑談は成り立ちますが、その質問の内容があまりにも初歩的であると相手に「無知な人」だと思われかねません。ニュースや新聞で情報を集めて話のネタは持っておきましょう。
しかし、新聞を読んでいても、あまり関係のないニュースで話のネタにならない!と思ってしまう事もあるかもしれません。そんな時はニュースと自分を関連付けて考えてみましょう。
例えば、「今年は不漁続きでサンマが高くなる」というニュースがあったとします。そこで、「自分はサンマ食べないから関係ないや」と思ってそのニュースをスルーしてしまうのではなく、「サンマが高くなったら、良く行く定食屋のメニューも変わるのかな」「取引先の人がサンマ好きだけどどう思うのかな」などと少し考えてみるだけで、興味のないニュースがたちまち話のネタとなるのです。
雑談すべきかどうか、しっかり判断しよう
雑談を長くした方が良いのか、あまりしない方がいいのか、全くしない方が良いのか、などの判断を相手に合わせてすることはとても大切です。
関係構築につながる見込みがあり、相手が熱心に聴いてくれる印象があるならば、こちらも積極的に話してみると良いでしょう。しかし、相手が乗り気で無い場合は、引き下がる必要性もあります。
雑談が嫌い・苦手な顧客もいる
雑談が嫌い、苦手な顧客も少ならずいます。商談や会議など、仕事において雑談は必須ではありません。雑談が苦手な人に雑談をさせるのは、自分にとっても相手にとっても気持ちの良いことではありません。
そういう空気を察した場合には、雑談をしない判断をすぐに行いましょう。
オンラインでカンペを用意する手もある
ここまで、雑談の上手い人とは「話し上手」ではなく「聞き上手」であることをご紹介してきました。
この方法にそって準備をしていくことがいろいろな営業の場面に対応できるようになる近道ではあるのですが、それをサポートする近道もあります。それはカンペを用意すること。
「商談相手のことを色々調べてさらに雑談ネタまで用意して……とても手がまわらない!!」……となった結果準備不足となってしまい、うまく喋れるかわからなくて緊張してしまう悪循環はやはりあります。
でもカンペを用意して資料もアップしておけば、記憶で話さないといけないことがかなり減って、雑談で何を話せばいいのかわからなくなってもすぐに確認することができます。
直接対面(オフライン)の営業画面だとなかなか難しいですが、コロナ禍以降、すっかりWEB商談(オンライン商談)も世の中に定着しました。「うちの会社で使ってるツールにそんなのあったっけ…?」と思われる方は、おそらく「WEB会議システム」を想像されていることと思います。
いまでは色々なシステムがあり、オンライン商談に特化したベルフェイスのようなサービスもあります。セールスのお悩みを解決してくれる機能が多数備わっていますので、参考にしてみてください。
Q&A
Q.雑談の内容はどんな事がいいですか?
A.特にこだわる必要はありません。今日の天気についてや仕事について、趣味についてなど、その時に自分が気になったことを話してみると、意外と共感を呼び、話が広がります。
Q.営業で問われる雑談力とはどんな力ですか?
A.会話の中で情報を集めて相手との距離を縮め、信頼関係を築いていく力のことです。特に初対面の人や商談相手と接する際には、緊張感をほぐしてスムーズに会話できる状態にするためにアイスブレイクを有効活用しましょう。
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