近年インサイドセールスという営業手法が日本でも急速に拡大しています。
元々インサイドセールスとは、見込み顧客の獲得から受注までを社内にいながら完結させる内勤型営業という意味で、国土の広いアメリカやヨーロッパで広まってきた営業手法です。近年は、日本でも働き方改革や営業生産性向上を背景に徐々に徐々に浸透してきており、インサイドセールスに取り組む企業もどんどん増えてきています。
営業に特化したWeb会議システム「ベルフェイス」を提供する弊社ベルフェイス株式会社では、3,000社(2021/1/1時点)のインサイドセールスを支援しており、そのノウハウを発信しています。
今回は、インサイドセールスの中でも商談獲得までを担い、アポ数やそこからの受注金額の最大化を目指す分業型インサイドセールスの全てを、弊社インサイドセールスチーム マネージャーの横山にインタビューしました。
全3回の連載企画として、ベルフェイス株式会社がおこなっているインサイドセールス(SDR)の取り組みの全てを公開していきたいと思います。
- The Modelのような分業体制をこれから構築される企業の方
- もしくは、構築し始めていて最適解を模索中の企業の方
- リード獲得以降の商談数の最大化に悩みを抱えている方
- 質の高い商談の設定に悩みを抱えている方
などにとって最適なコンテンツです。ぜひご一読ください。
そもそもインサイドセールスとは何か?詳しく確認したい方はこちら
この連載企画は、
- 第1弾:体制・オペレーション編
- 第2弾:KPI・目標管理編(本記事)
- 第3弾:人材育成編
の3部構成の記事をお送りします。今回はその第2弾「KPI・目標管理編」です。
【インタビュイーご紹介】
ベルフェイス株式会社 マーケティング事業部 インサイドセールスグループ マネージャー
横山豊
2012年に(株)オプトに入社。その後グループ会社のソウルドアウト(株)へ転籍し、延べ500社の中小・ベンチャー企業のWebマーケティング支援を担当。2017年2月、当時従業員数5名のベルフェイス(株)にジョインし、0からセールス・マーケティング事業の立ち上げを経験。入社当時の導入社数200社を2年間で900社まで増加させる。現在はマーケティングからセールスの連携強化を担う、インサイドセールスチームの立ち上げ・体制構築に従事。
KPIは商談の量と質を最大化できる作りに
――まず最初に結論から聞こうと思うのですが、ベルフェイスのインサイドセールスチームのKPIを教えてください。
横山:はい。KPIは3つあります。
- 商談数
- 有効商談率
- 商談経由の売上金額
の3つです。
――「商談数」はよくあるインサイドセールスチームの指標ですよね。
横山:そうですね。ただ、少し違うのは「アポ設定数」ではなく当月に実施した「商談数」であることです。つまり、8月31日にコールし9月1日のアポを獲得した場合は8月の数字ではなく9月の数字になります。何が違うの?と思うかもしれませんが、結構な差でして、この形になっていることでインサイドセールスチームにはなるべく直近の日にアポを設定しようとする動きが働きます。アポ日時が来月に流れてしまうと今月の成果にならないからです。
横山:リスケを防ぐためにも、そしてユーザーのモチベーションが高い時に商談を行うためにも、この動きは重要なことです。加えて、商談が実施されないとカウントされないため、リスケもノーカウントです。アポを設定してリスケ対応をセールスにまかせるのではなく、商談を実施するその瞬間まではインサイドセールスが責任を持とうという設計になっています。
――なるほど。では下2つ「有効商談率」と「商談経由の売上金額」について詳しく教えてください。
横山:こちらは商談の質を高めるためのKPIです。こういった指標を導入されているインサイドセールスチームも最近多くなってきている印象がありますね。要は、商談数という指標1つだけを追っていると、全く見込みがないお客様でも「とりあえず話だけ聞いてください」と強引にアポを取ってしまっても成果になるわけです。ただ、無効商談が増えると、見込みや受注は増えないのにセールスの工数が逼迫してしまって組織としては健全ではありません。これを防ぐために有効商談率と商談経由の売上金額を追っています。
横山:有効商談率というのは、商談後セールスが「ヨミ」としてカウントした商談の率を表す指標です。全く見込みのない即失注のお客様を除いた商談の率とも言えます。何らか検討していただけるお客様との商談を増やすために、この有効商談率という指標をKPIとして追うことで、1人1人が商談の質に責任を持っています。
横山:商談経由の売上金額も同じです。有効商談率よりもさらに奥の指標についてもインサイドセールスチームが意識し、すぐに受注につながる可能性の高いお客様をセールスにパスするためにKPIとして設けています。
――有効商談率や売上はセールスのパフォーマンスも関わると思うのですが、インサイドセールスの正当な評価になるのでしょうか。
横山:確かにその要素も大きいですよね。なので、3つのKPIを追いながらも、評価上は重み付けを行っています。具体的な数字は商談数:有効商談率:売上金額=6:3:1です。つまり、あくまで最重要指標は商談数であり、まずは数を担保することを最優先しようというKPIでありながらも、ただ闇雲に質の低い商談を増やすわけにもいかないKPIになるように設計をしました。
横山:このあたりは、弊社もPDCAの最中ではあります。当初は商談数のみをKPIとして追っていたのですが、それだとどうしても見込みにつながらない商談が増えてしまったので、ガラッと有効商談数のみに舵を切った時期もあります。顧客セグメント毎にKPIを変えたりしたこともあったのですが、色々試した中で今はこの形に落ち着いています。要は商談の質と数の最大化がミッションなので、バランスよくその両方に意識を向けられるKPIにすべきであって、最適解は企業によって異なると思います。重要なのは、KPIもPDCAの要素の1つと考え、試行錯誤していくことだと考えています。
KPIはリアルタイムに全員が確認できる環境を作る
――KPIの進捗を見る上で、どのような仕組みを作っていますか?
横山:よくある管理方法ですが、Salesforceのダッシュボードを確認しています。リアルタイムに誰でも確認できる環境を作ることが重要です。大抵インサイドセールスチームの目標は1日でも休むと厳しい値に設定されていることがほとんどですよね。1分1秒の行動が重要で、たった今目標達成が厳しいペースになったのなら、5秒後にはその対策に動きたいわけです。そのためにはリアルタイムでKPIを確認するダッシュボードは不可欠なのです。
横山:例えばこのようなダッシュボードを見ています。全体の商談数が今何件で、有効商談率が何%で、チャネル別に見るとそれぞれ何件で、という具合です。私は常にこのダッシュボードを見て、チャネル別にパフォーマンスが落ちているところがあれば、その原因を深堀りして早急にアクションを打ちます。
横山:また、各メンバーにも毎日メールで送信するようにしていて、1人1人が常に目標を意識できるようにしています。
横山:他にもこのようなダッシュボードがあります。これはKPIをもっと因数分解して、アクションレベルに落とした指標です。
- リードへのコール数
- 担当者との接触数
- アポ獲得数
というように、実際に商談が実施される前段の指標も全てリアルタイムで計測しています。商談数の伸びがイマイチな時に、何がボトルネックなのを把握するために管理しているものです。それぞれコールから何%接触できたかという率や、接触からのアポ獲得率、そしてコールからのアポ獲得率などの数字も見ています。
横山:また、それらをコール担当者別にも見ています。前回の記事でインサイドセールスは人材の育成チームとしての役割もあると少し述べましたが、人材の異動が非常に激しい部署なので、常に新人がいて、彼らにレクチャーするメンター的な役割の人もいます。そのため、人別のパフォーマンスも常に把握し、まだパフォーマンスが一定以上のレベルに至っていない人には丁寧に毎日ロープレを実施したりと、担当者のスキルに差が生じないよう人材育成にはかなり力をいれています。このあたりは第3回でも詳しくお話しします。
横山:他にもセールスの担当者によって商談数に差が生じないようにセールス担当者別の商談数を見るダッシュボードを作っていたり、コールリストとなるリード数を追うダッシュボードを用意していたりします。それらは全て同様に1日1回~複数回メンバー全員にメールで送るようにしていて、とにかく全員がリアルタイムで数字を把握することにこだわっています。
横山:また、これらのダッシュボードを運用する上で重要なのが、とにかくSalesforce上にしっかりステータスを入力するという文化を形成するということですよね。入力漏れが発生しているとこのダッシュボードが機能しなくなります。このあたりは企業によってインセンティブやペナルティを用意して入力を促すこともあると思いますが、弊社では文化形成で乗り切っています。各個人が常にダッシュボードを見る習慣を作り、その必要性を浸透させることもそうですし、私が常にダッシュボードを確認し入力漏れの可能性がある人にはすぐにslackで指摘を入れています。
インサイドセールスの始め方。組織・ツールの導入方法を徹底解説
まとめ
いかがだったでしょうか。今回は、ベルフェイスのインサイドセールスチームのKPI設定や目標管理についてインタビューしました。KPIは量だけでなく質を求める要素を盛り込むこと、そして目標管理はリアルタイムに誰でも確認できる環境を作ることが重要とのことでした。
これらの設計・運用に課題を感じている企業の方は、ぜひ参考にしてみてください。
さて、最終回となる次回は、人材育成をテーマに話を聞いていきます。
- インサイドセールスを極めるには何をすればいいのか
- アポ獲得率を高めるためにはどうすればいいのか
- スキルを均質化し、チーム全体でパフォーマンスを上げるにはどうすればいいのか
などについて聞いていきたいと思います。次回もぜひご覧ください!
《月間300商談を生み出すインサイドセールスチームの全て【人材育成編】はこちら》
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