AIの波がビジネスシーンに押し寄せ、あらゆる業界で変革が求められる時代。しかし、具体的な活用方法や成功事例はいまだ少なく、特に営業現場においては、「どのように活用すれば効果的なのか」「本当に効果があるのか」といった疑問を持たれる方も多いのではないでしょうか。
ベルフェイスもこの課題に真正面から向き合い、2024年11月12~14日に開催された、国内最高峰のグローバルスタートアップカンファレンス「GRIC2024」にて、AI活用に焦点を当てたオンラインセッションに参加いたしました。
セッションでは、弊社代表取締役 中島一明に加え、株式会社スタディスト代表取締役CEO 鈴木悟史氏をゲストスピーカーとしてお招きし、モデレーターとともにAI活用を取り巻く現状と未来、そして営業におけるAI活用の成功の鍵を探る活発な議論が展開されました。
本記事では、営業現場でのAI活用を検討しているマネジメント層の皆様に対し、特に参考になるポイントを抜粋してご紹介します!
スピーカー
鈴木 悟史(株式会社スタディスト 代表取締役CEO)
明治大学大学院卒。株式会社インクスにて、3DCADの機能仕様検討業務や設計システムの開発に従事し、製品開発プロセス改革のプロジェクトリーダーを歴任。その後、同社パートナー職を経て、2010年2月インクスを退社。同年3月に株式会社スタディストを設立。
中島 一明(ベルフェイス株式会社 代表取締役 )
1985年生。福岡県出身。起業を志し、高校を3か月で中退。15歳で土木会社に就職し、貯めた資金で世界一周の旅をしながら200枚のビジネスプランを作成。 2007年、21歳で一社目を起業し、各県の中小企業経営者を動画で紹介する広告メディア「社長 .tv」を全国展開。紆余曲折を経て同社を退任したのち、2015年4月27日にベルフェイスを設立。
現状:日本企業のAI活用度は?
モデレーター:生成AIが急速に発展し、ビジネス活用への期待が高まっている2024年現在、AIは日本の企業の業務効率化にどの程度貢献しているのでしょうか?
ベルフェイス 中島:率直に言って、まだあまり効果が出ていない印象です。ベンチャー企業など新しい会社でも、生成AIで具体的な成果を上げている事例は少ないように感じます。
スタディスト 鈴木氏:私も同感です。当社の顧客はノンデスクワーカーが中心という背景もありますが、本格的な普及には10年単位の時間を要するのかな、という印象です。また、AIは発展途上の技術です。一方で、日本企業は完璧を求める傾向があり「まずは試してみる」という姿勢が不足しがちです。これがAI導入の遅れの大きな要因となっていると言えるでしょう。
成功の鍵1:現場主導の小さな一歩から
モデレーター:発展途上の技術に100点を求めると、導入は難しいですよね。とはいえ、世界のAI潮流に乗り遅れないためには、日本企業はAIをどこから活用するのが良いのでしょうか?
ベルフェイス 中島:AI導入というと大規模なシステム構築や全社的な変革をイメージしがちなのですが、効果的なAI活用は現場の小さな課題解決から始まる、と考えています。たとえば、現場の営業担当者が日常業務にAIを活用し、30分かかっていた作業を5分に短縮するなど、現場の効率化を積み重ねることで、徐々に浸透が進むと思います。
スタディスト 鈴木氏:小さい取り組みから始めるのは大賛成です。例えば、当社の「Teachme AI」では、動画で撮影したOJTをAIが分析し、ステップごとに分割・字幕付加を行います。現場からは、さらに「こんなこともできるのでは?」というアイデアが次々と出てきて、AI活用以前は諦めていたことが実現する喜びがありますし、実際開発スピードも上がっています。
モデレーター:確かに、「業務効率化」という言葉だけではワクワクしませんが、日々の小さな効率化の積み重ねが、最終的には大きな生産性向上に繋がるのですね。現場主導でAI活用が広がっていくことで、大きな変化が生まれる可能性を感じます。
成功の鍵2:目的志向のAI活用 – 顧客課題の解決
モデレーター:現場主導でAI活用を広めていくというお話を伺いましたが、AIを活用していくうえで、気をつけていることはありますか?
スタディスト 鈴木氏:AI導入は目的ではなく手段であるべきだと強く考えています。「AI」という言葉だけが先行し、導入自体が目的化しているケースも少なくありません。しかし、真に重要なのは、AIを活用して顧客のどのような課題を解決するかです。
私は、毎月10社のお客様を訪問しているのですが、現場の声に耳を傾け、課題を肌で感じることを意識しています。これが真のイノベーションに繋がると信じています。
例えば、「Teachme AI」では、当社スタッフがお客様と共にOJT動画を撮影する際に、工場内の騒音で音声収録に苦労することがありました。そこで、ノイズキャンセルマイクとAIによる音声解析を組み合わせ、騒音下でもクリアな動画教材の作成を可能にしました。お客様の現場に足を運ぶことで、初めて認識できる課題は数多くあります。
ベルフェイス 中島:目的を失わないことが非常に大切です。企業の最終目標は売上と利益の向上であり、それを達成するには営業担当者が顧客と接する時間を増やすことが不可欠です。私たちはそのために、AIを活用して手作業を自動化し、営業担当者の負担を軽減することで、顧客接点の創出を支援しています。
当社が提供している「bellSalesAI」は、営業活動後のCRM入力作業を自動化し、Salesforceへのデータ入力を効率化するサービスです。これにより、アフターセールスワークの時間を3分の1以下に削減し、営業担当者一人あたり1日1件以上の商談機会を創出することが可能になります。この「bellSalesAI」を、数千人規模の営業組織を抱える大企業の経営層に提案しています。
活用事例:若手育成と成約率向上への期待
モデレーター:営業現場におけるAI活用は、企業の売上向上に寄与するというデータがありますが、具体的にどの営業プロセスでAIを活用するのが効果的でしょうか?
スタディスト 鈴木氏:AIは、特に若手営業担当者の成約率向上に大きく貢献すると考えています。最適な提案には顧客ニーズの的確な把握と適切な仮説立案が不可欠ですが、従来は長年の経験が必要でした。AIを活用すれば、顧客属性や過去の商談データの分析に基づき、若手でも効率的に情報を収集し、ベテランのように的確な仮説を立てることが可能になります。これにより、組織全体の顧客理解が深まり、成約率の大幅な向上に繋がると期待しています。
ベルフェイス 中島:若手の仮説立案能力向上にはロールプレイングが有効ですが、ここにAIを活用できます。例えば、「bellSalesAI」で録音・テキスト化した顧客(例:〇〇部長)の商談データをAIに学習させ、「バーチャル〇〇部長」を作成し、ロールプレイングを実施します。精度はまだ発展途上ですが、近い将来、高度なロールプレイングが可能になるでしょう。AI活用による若手育成が加速する未来にワクワクしています。
さいごに:AI導入は幻想ではない。未来を勝ち抜くための現実的な一手
モデレーター:今まで蓄積することしかできていなかったデータが、AIによって営業現場で役立つ活用ができるようになってきています。
本日は、日本におけるAI活用において、トップダウンでのビジョン設定と、ボトムアップでの課題特定の両面が重要で、技術だけでなく顧客の声を反映したり、売上目標を明確化することで、AI導入の成功確率を高められたりする、というお話を伺っていきました。最後に、AI活用の先駆者として、これから営業現場でAIを活用していくスタートアップへのメッセージをお願いします。
スタディスト 鈴木氏:AI活用はまだ黎明期であり、大きな可能性を秘めています。特に少子高齢化による人材不足が深刻な日本では、AIは様々な社会課題の解決に貢献するツールとなるでしょう。重要なのは技術の活用それ自体ではなく、課題解決という視点です。ポジティブに、楽しみながら、AIと共に未来を創造していきましょう。
ベルフェイス 中島:AI活用を成功させるには、経営層をはじめとするトップの理解と推進が不可欠です。現場の意識が高くても、トップの支援なくして組織全体への普及は困難です。AIは生産性向上や売上増加に大きく貢献する強力な武器です。ぜひ、本日の内容を参考に、ご自身が組織変革の原動力になってください。